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占いガール  作者:
タロット占い
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占いババ

紀伊side




うちの大学には占いババが居る。

ババと名がついているが、実際はうら若き女子大生。

黒髪を後ろで一つに纏めて、分厚い瓶底眼鏡をかけた、真面目に勉強してますて言うフォルムのその子は私の親友。

名前を神宮司千尋じんぐうじちひろと言う。

ちなみにまだ18歳。

彼女とは中学二年からの付き合いだ。

千尋の占いはよく当たると、昔から有名で希望者が後を断たない。

でも、残念ながらそれは自分以外に対してなのだ。

それでも彼女は占いを信じて、占いの通りに生きている。

今の彼女のフォルムも、自分の占いで出た結果だ。



今日も彼女の周囲には恋する乙女達が我先にと群がってくる。

休み時間毎に、こんな事態なので彼女が疲れてしまわないかと心配だ。

机に頬杖をついて、タロット占いをしてる彼女をぼんやり見つめる。


「彼氏さんの気持ちは離れつつあります。それを引き留めるには、貴女が変わらなければいけないですね」

千尋の声は愛らしくて心地いい。


「どんな風にしたらいいのかな?」

そう質問する女子の顔は必死だ。


「そうですね。優しさを常に心がけてください。自分の気持ちだけを押し付けるだけじゃなく、相手の気持ちも推し量ってあげてください」

タロットを捲りながら答えた千尋に、

「分かった。ありがとう」

笑みを浮かべて感謝した彼女は立ち去っていく。

千尋はその子の後ろ姿を見送りながら口元を緩める。


「次は私」

「待って、私よ」

「私だって」

醜い争いを始めた女子生徒に溜め息を漏らした時、講義開始のチャイムが鳴った。

千尋は無言でタロットカードを片付け出す。



さ、私の出番だ。

立ち上がって千尋の側に行くと、わらわらと群がる女子生徒達に声をかける。


「はい、終了。またの機会をお待ちください」

笑ってない瞳で彼女立ち去っていく一人一人を見据える。

不服そうにしながらも、彼女達は大人しく去っていく。

休み時間に二人だけ、チャイムが鳴ったら終了、それがルール。

高校の頃に際限無しにやっていて、千尋の体調が悪くなってから私が決めた。

千尋の善意で占ってもらってるんだから、ルールは守ってもらわないとね。


「紀伊ちゃん、ありがと」

「良いのよ」

申し訳なさそうに言う千尋に笑いかけた。

千尋の隣に座ったところで、教授がやって来て講義が始まる。

ノートを取りながら、ふいに千尋の横顔を見る。

ツルツルした白い肌に、眼鏡の隙間から見えるカールした長い睫毛。

ほとんどの人が彼女の本当の顔を知らないけれど、かなりの美少女なんだよね。

隠してるのが勿体ない。


千尋がこんな風になったのには理由がある。

私達が出会って一年目の中学三年の時にそれは起こった。

千尋には幼稚園からの幼馴染みの彼氏がいた。

倉木大翔くらきひろとと言う、イケメンで優しくて千尋を大切にしていた彼氏だった、あの女の子が現れるまでは。

サッカー部のキャプテンで、美少女の千尋とはみんなが羨むようなカップルで。

家も近所で、親同士も仲良くて、文句のつけようもなかった

それがある日、突然現れた一人の女の子のせいで二人の関係は崩れた。

その女の子はある占い師の占いで、大翔が自分の運命の相手なんだと言われ二人の間に割り込んでいったんだ。

優しい大翔は自分を慕ってくる女の子を無下に出来なかった。

私から言わせれば優柔不断な男だっただけなんだけど。


千尋との距離が空いていくことに気付かずに、好き好きと押しまくる女の子の策略に嵌まり気の迷いで関係を持ってしまった。

それが決定打になり、千尋は大翔と距離をおいた。

大翔は千尋に謝って、復縁を迫ったけれど千尋は首を縦に振ることはなかった。

それを良いことに大翔を体で陥落した女の子は、まんまと彼女の座に収まって、千尋にそれを見せつけた。


大翔は今でも知らないだろうけど、千尋はその女の子から随分と嫌がらせも受けていた。

嫌がらせをされ、彼氏を失い、失意の千尋は自分を苦しめることになった占いにのめり込んでいった。

あの時の、千尋は見てられないぐらいボロボロになってたよ。

側で見てるのが苦しかったもの。


大翔と会いたくないからと、家から通うことの出来ない遠い高校にわざわざと進学した。

事の顛末を私から詳しく聞いた千尋の家族も、大翔の側に居たくないと言う千尋の願い叶えたいと相談されたので、私も同じ学校に行くので同居だったらどうか? と進言したのは私。

そして、大翔の居ない他県に私達はやって来た。

大学も同じ街にしたので、大翔とはまったく関わることなく過ごせてる。

あんな男に、二度と千尋を会わせてやるもんですか。

こんな地味な学校で、占いババとか呼ばれちゃう様な女の子にしたあの男は絶対に許さない。

たとえ、千尋が許したとしてもね。





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