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『商品No15迷いの森』   商品ランク★

掲載日:2016/07/31

 男はあてもなく森をさまよっていた。

 男の名はシャインラブ。年は30歳である。俗にいうアラサーだ。

 だが、男があてもなくさまよっていたのには訳がある。それは修行の場所を探していたからだ。

 格闘の修行を開始した幼少の頃から、鍛錬を積み重ねてきた男は今現在にいたるまで練習をサボったことがない。真面目なのだ。

 男は一人、森でまるで仙人のようにひっそりと暮らしている。

 食事を始め、炊事洗濯、家の建設にいたるまで男は全て自分自身でこなしてきた。

 だが、ずっと森で暮らしてきて自分は何でも出来ると男は僅かながらでも心のどこかで思っていたのかもしれない。

 そのほんの僅かではあるのだが、慢心が男の森に対する警戒を解いてしまったのだろう。

 男が住んでいる森は熊や、狼はもちろんのこと、象やサイ、森ワニ、森サメなどの危険な肉食動物が住んでいる。

 男はその獣や森で取れる山菜などを採って腹の肥やしにしているのだが、男は慢心の心から危険地帯へと踏み入れてみたい衝動に駆られたのだ。

 森の奥深くにある危険地帯は誰にでも分かる。なぜなら危険地帯の地面に入ると植物が姿を変えるからである。まるで境界線のように危険地帯は線引きされているのである。

 危険地帯の植物は赤々としていたり、派手な黄色をしていて毒々しい。

 危険地帯の虫も全てが毒を持っている。もちろん動物もだ。

 だが、危険地帯の動植物は、男がいるこちらの森へは入らない。

 どのような習性に従っているのかは分からないが、虫一匹境界線を越えようとはしないのだ。

 まあ、風に流されこちらに入ってきたりすることはあるが、入って来たその危険地帯の虫はすぐに自分たちの住む危険地帯へと戻るのだ。

 で、男は危険地帯へとついに入ってしまったのだ。

 男は鍛えた体で、あらゆる格闘をマスターしているが、それでも危険地帯にはまだまだ早い。と、男の元師匠が言っていた。師匠は老衰でもう死んだ。

 男が危険地帯へと入ると、森が意識を覚醒させたのか、幻覚を見せる花粉を男に飛ばしたのだ。

 それを吸い込んだ男の目にはたくさんの女の裸が見えた。

 しかし男は女に興味がなかったので、大丈夫だった。

 だが、森の植物はその様子を見て瞬時に作戦を変更した。

 危険地帯には風で飛ぶ、まるでタンポポのような植物がある。そのタンポポのような植物は変化の能力と呼ばれるような物を持っている。

 それは空中で植物同士がまるでパズルのように組み合わさり一つの姿を形作るのだ。

 それは水族館でのイワシの集合体のようでもあり、一つの巨大な躍動感のある生命体のようであった。

 植物が変身したのはマッチョの男だった。

 マッチョの男に釣られ、男は森の奥深くへと入って行った。

 そして今、男はさまよっている。

 突如目の前が輝き聖母と呼べそうな女が現れた。

「ねえ、この子をある所へと届けてくれないかししら」

「断る」

「あら残念。届けてくれたらあなたをこの森から出してあげましょう。そして一生使ってもなくらならないぐらいのお金を上げましょう」

「承った」

 男は女から男の子を預かった。

 年齢にして小学3年生ぐらいの男の子だった。

「この子はこの森をさまよっていたので私が保護したのよ。この子は凄い能力を持っているのよ。実は魔法を使えるのよ」

「なんと」

 困った時は男に魔法を頼んでみてね。

「よし。分かった」

 女から届けて欲しいと言われた場所の地図を受け取ると男は森を男の子と一緒に歩き出した。

「おい」

「なんでしょうか」

「お前はどんな魔法を使えるんだ?」

「解放の魔法です」

「解放の魔法? それはたとえばどんな魔法だ?」

「例えばですか。おしっこをしたい時に私が解放の魔法を使うと、おしっこをしたい苦しみから解放されます」

「ほう、便利だな」

「はい。まだ色々とあります」

「そうか。また何か俺が知りたくなったら教えてくれ」

「分かりました」

 男を届ける場所は危険地帯を抜けた村にあるという。

 その村は魔法使いの住む村らしい。

「でも、なんでお前を村に届けなくてはならないんだ?」

「なんか明日この星がやばいことになるらしいんです」

「それで?」

「私がいないと魔法六角陣が使えなくなるんです」

「魔法六角陣?」

「はい。私達魔法使いは魔法六角陣を使うことによって、巨大な厄災などを防いでいるのです」

「じゃあ、魔法六角陣が使えないということは……」

「はい。この星、えらいことになりますね」

「なんてことだ。でもなんでお前はあんな場所にいたんだ?」

「あー。そうですね。本当に言いにくいんですが、しばらく大きな厄災が予言に出ていなかったので、安心して私は危険地帯の森を通り、他の世界を見てみたく旅立ったのですが、私が旅立ってすぐに予言が出てきたんですよね」

「なんで分かる?」

「テレパシーで飛んできたんです。で、急いで村へと帰ろうとしたけど、森に惑わされて帰れなくなりました。エーン」

「最後の言葉全然悲しんでないだろ?」

「そんなことないですよ。いくら私が幼き頃から村にほぼ監禁状態にされていて他の世界を知らないからといって全然村の人を恨んでなんかいないですよ。別に贅沢な食べ物も食べたくないですし、遊園地なんかにも行きたくないですし、インターネットもしたくないですし、漫画も読みたくないですし、洋服も買いたくないですし、免許とかもとりたくないですし」

「いやいや、絶対恨んでいるだろうお前」

「だから、この星が危機になったので、仕方がなく村に戻らなければならないのですよ。私は」

「今、仕方がなくって言った!」

「言ってません」

「まあいいや。早く村に帰ろうや」

「そうですね。あなたは見たところ、とても格闘術に長けていそうなので頼りになりそうです」

「なんでそんなことが分かる?」

「いやあ、あなたのその筋肉を見れば分かりますよ。そうぼうきんでしたっけ?」

「ふーん。そうなのか」

 男と男の子は村に向かい、急いで歩き出す。

 だが、一向に村へは辿りつきませんでした。

「な、なんでこんなに複雑怪奇なんだ?」

「本当ですね。流石は危険地帯といった所ですね」

「そうだな」

「ああっ?」

「どうした。この星に厄災が降りかかるまであと一時間しかありません」

「なんてこったい」

 すると目の前に女の人が見えた。そこに行く。

「おい、お前は誰だ?」

「私ですか? 私は知恵の妖精です}

「知恵の妖精?」

「はい。千恵と言います」

「駄洒落かよ」

「失礼な男の人ですね。せっかく困っていそうなので助けて差し上げようと思って姿を見せたのに」

「ほ、本当? すまなかった」

「じゃあ、後でぺろぺろキャンディーをおごってくれますか?」

「ああ、用事が済んだらな」

「それで、困っていることは何ですか」

「この危険地帯の森から抜け出せないんだよ」

「そうですか。それならすぐに解決します」

「本当か?」

「はい」

「ど、どうやって」

「皆さんにも名前はありますよね?」

「ああ」

「そうですよね。人間がつける名前ですが、森にも海にも名前が付いているのはご存知ですよね」

「ああ」

「あなた達はこの森のことを何て読んでいましたか?」

「危険地帯の森と呼んでいたが」

「そうっ。それです! それでこの森は、いや林は怒ってプンプンになり、あなた達をここから抜け出させないようにしていたのです」

「どういうことだ?」

「はい。実はこの森は一般的には危険地帯の森で知られているのですが、正式名称は、『心優しい林さん』というのです」

「そうなのか、orz。知らなかったよ」

「そうです。それでこの林さんはあなた達に間違った名前を呼ばれ続けて心の中が傷つき、そしてそれが怒りへと変わったのです。さあ、この林さんに謝り許しを請うのです」

「分かった。心優しい林さん。名前を間違って呼んでしまって悪かった。どうか許して欲しい」

 男が言うと森はゴゴゴゴと大きな音を立てた。

「何だ?」

「たぶん森が、村への道を開ける為にトランスフォーマーしているのでしょう」

「そうか。林さん許してくれたのか」

 そうして男達は森を、いや林さんを抜け、魔法使いの村へと到着した。

 そして魔法六角陣を完成させ、星を厄災から守ることが出来た。

 男は約束どおり、女から大量のお金を貰いウハウハで林さんを出て、森を出て、悠々自適に老後を過ごしました。

 男を届けるように依頼をした女は宝くじを当てて、狙われるのが怖かったので危険地帯でひっそりと暮らしていた女でした。

 何で、魔法使いの村の場所を知っていたのかというと女は心優しい林さんと仲が良かったので、場所を林さんに教えてもらっていたからである。だけど、女は村には行きたくはなかった。宝くじが当たっていたので人に会うのは怖かったのである。

 まあ、そんな話であった。


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