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〈Bar〉 6

 ジョンは、鷹のように鋭い目と、尖った顎をしていた。

 少年の顎の線も細いが、ジョンを思い出させるものは何一つない。

 ジョンの瞳は悪戯っぽく暖かなはしばみ色だったが、少年の瞳はスモーキーブルーだ。

「血の繋がりはないから」

 少年は、再び淡々とした様子に戻った。

「それでも父親だと思っていたし、あの人も私のことを実の子のように大事にしてくれた。あの人が死ぬまでの半年が、私にとっての人生の全てだった」

 スタンリーは、残っていた酒を一息で呷ると、席を立った。少年は顔色も変えずに、

「今からつと強行軍になるが、あんたが構わないのなら、明日の朝には、地上部までは行けるだろう」と、言った。

「かなわないな。俺が行くと決めてかかっているんだな」

 スタンリーは、今の今まで少年の話を聞かなかったことにして、ねぐらに帰るつもりでいた。

 シャワーを浴びて全てを流して、夢見が悪くならないよう、とっときの砂漠物のブルーボトルを寝酒に一杯やって、泥のように眠ればいつもと変わらない朝がくる。


 そう信じていた。


「YESという答え以外、聞く気はないから」

 少年はそう言いながらも、店の扉を押して新たに入ってきた客の方を見ている。

 その二人の男は、常連だ。顔ぐらいスタンリーも見たことがあった。

 

 二人は入ってくるなり、店にいた知り合いらしい男に何か耳打ちした。

 囁かれた男が、チラリとスタンリー達の方を見たように思ったが、はっきりとはしない。

 男は、今度は何やら囁き返した。すると二人連れの方も、驚いたような顔でスタンリーを見る。

 今度は確かに、スタンリーを見たのだった。男達はスタンリーと目が合うと、すぐに逸らして、店から出て行ってしまう。

 少年は、もうそちらを見ていない。


 スタンリーは、パンツの尻ポケットからコインを取り出しカウンターの中に投げた。放ったコインを、バーテンはうまくキャッチして、軽くスタンリーに頷いて見せる。

 スタンリーはきびすを返した。

 もう何も言わなかった。少年も無言で、スタンリーの後ろからついてくる。

 

 扉を引いて店の外に出る。外には道があり、建物と建物の間には路地も走っている。それでもここは立派な地下だ。

 地下と言うより、地面が掘り下げられ、そこから超高層の建物が建っていると言った方が幾らか近い。

 勿論、地上数百メートルの上流階級の人間が住むという階層に足を踏み入れたことのないスタンリーが、はっきりとこの街の構造を把握しているかと言えば、嘘になる。

 地下に関して言えば、建物はフロアごとに十メートルほどの空間を持っていて、その中にゴチャゴチャと、建物やら建物の機関やら人間やらが組み込まれていた。

 建物の中に建物があり、また別の建物と繋がっているかと思えば、別の階には上がれない建物もある。

 

 地下は、立体迷路そのものだ。

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