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City 8

 その建物の付近だけ、十数メートルに渡って奇麗に空き地になっている。電流の流れたバラ線が張ってあるだけでなく、レーザーでも守られている筈だ。物々しい私兵が、入口を固めている。

 イフは、全く足取りも変えずに入口へと向かった。私兵は、イフには見向きもしなかった。

 堂々としていることと偽造カードさえあれば、プールに潜入するには訳がないと言われる所以を、イフは見事に体現しているようにスタンリーには見えた。

 イフはポケットから出したカードを、センサーの読み取り機に滑らせる。

「おい、イフ。どうして」

 開いた扉の中に入っていくイフを追って、スタンリーは慌てて声をかけた。

「ここから出た後は、死ぬ覚悟でいけ」

 少年は、チラリと入口を振り返ったが、そのまま歩き続けた。

 砂漠に出るのだ。死の覚悟は必要だぐらいの意味にしか、スタンリーは思わなかった。

 入口を入ったすぐにエレベーターがある。乗り込んだイフは、地下二階のボタンを押した。

 プールは、賞金稼ぎ達が、高価な装備や武器などを預けておく所だ。プールへの登録料&保管料も馬鹿にはならないし、何よりも利用者は賞金稼ぎに限られていた。

 カードの偽造は、機械と技術があれば可能だが、プールに侵入するのは無意味に近い。

 カメラが仕掛けられているからイフとスタンリーの顔も、管理会社にバレただろう。こんな状態で盗みを働いて逃げても、探し出されて私兵に始末されるか、盗まれた本人に報復されるかのどちらかだ。

 エレベーターのドアが開くと、そこは駐車スペースになっている。

 地下二階には、車がズラリと並んでいた。

 イフは、車の間を縫うようにして歩いていくと、一台の前で足を止めた。車のタイヤと地面はチェーンで繋がれている。

 チェーンは、センサー付きのカードキィで開ける仕組みになっていた。イフは、そこでもまた建物に入る時に使ったカードを差し込んだ。

 スタンリーは、素早くカードに目を走らせた。カードに書かれていた名前は、イフなどではなかった。それが本名なのだろうか。

「砂上走行車じゃないか。こんな物を用意していたのか?」

 目の前に止まっている一台の車は、まだ新しかった。数回砂漠に出ただけの中古品を買ったのかもしれない。それでも、目玉が飛び出るような金額に代わりはない。

 スタンリーが賞金稼ぎとして、稼いでいた頃なら新品をも買うことはできたが、スタンリーには所詮必要ないものだった。

 砂上走行車なら、移動距離は稼げるが、危険を回避できるとは言えなかった。走行車自身の重みで、地面が崩れて、砂の穴に飲み込まれることもままある。

 スタンリーは、せいぜい安全と分かっているルートの部分だけ、別のパーティーに金を払って、同乗させてもらうぐらいだった。最終的に頼れるのは、己の体だけだ。

「これを戴くのに、危ない橋を渡ることになった。それなりの役には立ってくれたが、これからが本当の出番だ」

 砂上走行車は二人乗り用だ。座席のあるのは前部だけで後部は、荷物を積む為の空間がとってあった。  バックルームには、既に何かが入っていた。装備品ではない。いや、それもあるだろうが。

 それにしても、イフの言葉も気にかかる。正規のルートで手に入れたなら、戴くなどという表現が出てくる筈がないだろう。

 イフは、ちょっとだけ顔を歪めて笑うと、車のフレームを軽くポンと叩いた。

「死体の隠し場所としては最適だよ」

 スタンリーは、思わずギョッとなる。

「死体って、あいつの死体をそのまま積んであるのか?」

 イフはポケットから車のキィを出すと、無言でドアを開けて運転席に乗り込んだ。

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