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City 7

 砂漠に出る時は十分な備えをしているが、普段は気休めにナイフを一本持ち歩くだけで、武器らしい物は身につけない。スタンリー自身が、武器だ。

 スタンリーは、襲ってきた全員をぶち殺してやってせいせいしたが、何か後味のすっきりしないものが残ってしまう。

 一体何が起こっているのか、全く分からなかった。スタンリーを除け者にしつつ、スタンリーを巻き込んで何かが起こっていることだけは分かる。

 スタンリーに考えられたのは、そこまでだった。自分を襲おうとした奴らを始末できたのも、スタンリーのプライドの成せる技だ。しかし、それが限度だった。

 眠くて眠くてスタンリーは、考えることができなくなる。スタンリーは、久しぶりに全身血塗れになって、抗えない眠りの中に落ちた。

 

 その後、目を覚ましてみるとスタンリーは、知らない家の狭いベッドの中にいた。ベッドは、持ち主のものらしい饐えた匂いがする。

 イフが運び込んでくれたのか。そこはホテルではなく、普通の民家だった。怯えたばあさんと子供が一人。彼らとは結局、口は聞かなかった。イフが彼らにどのような説明をしたものか、それとも脅したものかスタンリーには分からない。

 聞けば教えてくれたかもしれないが、聞く必要はないとスタンリーは勝手に判断した。イフが話さないことを、自分から聞く必要はない。ただ、意固地になっていただけかもしれない。

 

 スタンリーが目覚めた時イフは、スタンリーの横になったベッドから離れた小さな窓の側で椅子に座っていた。少年は、スタンリーが目覚めたことにすぐには気付かなかったようだ。

 少年は、首から下がった鎖の先を握り締めていた。その顔があまりに暗かったので、スタンリーはかけるべき言葉を見つけられなかった。少年は、それをシャツの下に戻すと、ボタンをきっちり上まで留めた。

 その時チラッと見えた鎖の先端には、十字の飾りがついていた。どこかで、それに似た形を見たことがあったような気がしたが、スタンリーは思い出せなかった。

 

 スタンリーは一旦目を閉じると、軽くベッドの中で身動ぎしてから、もう一度目を開けた。目を覚ましたスタンリーを見ても、少年は顔色を変えなかった。少年はただ、あれが麻酔銃じゃなかったら、死んでいたなと言っただけだった。

 カッとして身体を起こしたスタンリーに少年は「強運は、相変わらずだな」と言った。

 何となくジョンが生きていて自分と出会ったら、言いそうな台詞だとスタンリーは思った。そう思うと、怒りも急速に薄れてしまう。

 賞金稼ぎの中には、砂漠に出る前悶着を起こして血を受けることを、ケチがつくと言って嫌がる者が多いが、スタンリーは違った。自分の流す血の代わりに、他人に血を流させていたようなものだ。

 スタンリー自身が、傷付くことはなかった。レッドシャツには、自分の血は一滴もついていない。それが、スタンリーの誇りだ。

 麻酔銃で狙われるなど、賞金稼ぎをやっていた頃にも、お目に掛かったことのないような事態だ。自分は、いつからそんな人間になったのか。

 理由は――やはり、この少年にあるのだろうか。

 

 スタンリーは、目覚めた後すぐさま少年とともに出発した。街の外れに辿りついた時には、次の日の午後になっていた。襲撃を受けた後は、通常の小競り合いにしか巻き込まれなかった。それで、その後は順調に進んだ。それまでが異常だったのだ。

 街外れは、建物が低層化していて、せいぜい高くても十階ほどしかない。砂漠を通ってきた者の為の宿や換金所、医療施設の他に、砂漠に必要な装備などを売る店が入っている。

 イフが向かったのは、プールだった。

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