白い竜
予約投稿失敗しました。これは夜の投稿予定だったんです。
<僕がヘルマさんと対をなす『白竜』ですか。ないわー。むしろ虎さんの方が適役だと思うんだ。任せた!>
「!?」
ぐいぐい虎さんを押す僕に対し、地面に爪を立てて徹底抗戦の構えをとる白虎さん。
醜い争いを始めた僕らに、『魔王』ことヘルマさんが額に手をやって嘆息する。
「これこれ、『白竜』殿。いくら足掻いたところで現実は変わらぬぞ?」
<現実とは努力次第で変えられるのです。そして、人違い! いえ、竜違いです! 僕はそんなに立派な『白竜』などという存在じゃないですよ~。ただのなんかよくわからんちびっこですよ~。こら、虎さんも、諦めて、僕の代わりに、あれの、相手を!>
ぐいぐい押すも全く動かない虎さん。
幼女の膂力では四メートル級の巨体を持つ虎さんの筋力には敵わない。
でも、ここで諦めてはあのやばそうな魔王様の餌食に!
逃げるが勝ちですよ白虎さん、さあここで争ってるふりをしながら一目散に逃げるのですよ!
「立派なことを言いながら情けないことをする。『白竜』殿は存外に諦めの悪い性格らしい。どれ」
いつの間に間合いがゼロになっていたのか、ひょい、と片手で襟首をつまみあげられた。
いくら五歳児程度とはいえ、体重は十キロあると思うんですが、猫をつまむように片手で持ち上げるとは……
どう見ても細腕なのに。
「落ち着いたかな、『白竜』殿。そろそろ妾の言葉にも耳を傾けてもらいたいものであるが……?」
遠く離れた場所からでも察知できるほどの威圧感を間近で受けるとどうなるか。
ちびりました。
洩らしましたよこん畜生めっ!?
これにはさすがのヘルマさんも予想外だったようで、そっと足元に下ろしてくれました。
十六になってまで洩らすとは……次に洩らすのは年取ってからのはずだったのに……恥ずかしいやら悔しいやら。
な、泣いてなんかいないぞ! ほんとだぞ!?
これは目から塩水が出てるだけなんだ!
申し訳なさそうに頭を撫でてくれる『魔王』さま。
ごめんなさい。怖かったんです。
抱き上げるならまだしも、首根っこ掴まれて目の高さを合わせるように持ち上げられると、怖かったんです。
「その、すまなんだな。侘びも兼ねて『白竜』殿をもてなしたいので、城までご足労願えんか? なに、妾の背に乗せて運ぶ故、そう時間はかからぬて。着替えも用意するしの」
<ぼ、僕に――ひっく――拒否権、は?>
「妾としては、そなたを賓客として迎えたいのじゃ。どうか譲歩してはもらえぬだろうか」
このままここにいても、虎さんのヒモみたいな生活するしかない現状。
その場合食生活は原始人なみ。
いつ現れるとも知れない獣人共に殺されるくらいなら、自称『魔王』さまに保護してもらうのが無難だろうか。
着替えも用意してくれるらしいし。
<分かりました。いきます>
「あい、わかった! では大きくなる故、しばし待たれよ」
先ほどの逆回しな光景が広がり、果たして黒い竜が視界いっぱいに広がった。
ちょっとしたビルくらいの大きさがある。
テラテラした鱗は黒光りしていて硬そう。
真っ黒な鬣は、あのつややかな黒髪なんだろうか。
ばさりと三対六翼を広げ、地面に伏せて背中に誘導する。
“さぁ、乗るがよい。そちらの虎は『白竜』殿の守護獣であろう? 貴様も乗ることを許すぞ”」
知らないうちに白虎さんが『白竜』の守護獣にジョブチェンジしていたようです。
なんか知らないうちに4000PVありがとうございます!
これから勇者さまも登場予定。ただ、もう少し先になりそうです。
まずはお城です!