朝ごはん仕切りなおし
なんと2000PV突破!
ありがとうございます、光栄です。
施行錯誤の結果、ただ息を吹きかけるのではなく、お腹の底から吐きだす必要があると判りました。
なんかお腹の奥でぐるぐるしたあと、思いっきり息を細く長く吐くことで火炎放射ができました。
だいたい三~五秒は吹けるけれど、なんとも規模の小さいこと。
最大でも幼女の掌くらいの火が出るだけ。
心配してた口の中や唇のやけどはしませんでした。
さすがファンタジー。自分の火じゃ火傷しないのかね。
白虎さんは初めの方こそびっくりしてたようですが、何度も試してるうちに慣れてしまったようで。
今は二人でたき火を囲みながら、適当な枝に刺したお肉を焼いてるところです。
もちろん、枝に毒がないかを慎重に見定めたよ、ほんと。
夾竹桃の枝なんて使ったら死ねるからね。
どうやって切り分けたかって?
なんと、虎さんが気を利かせて切ってくれたのですよ!
あの爪、剃刀みたいな恐ろしい切れ味ですね。
一撃貰ったら幼女なんて死ねますよ、うん。
そして人生初めての鹿肉。
実食!
<…………>
なんかやたら硬くて筋っぽくて、獣くさい。
なかなか飲み込めないし。途中で味無くなるし。
まぁ、血抜きとかしてないですもんね。
仕留めたの虎さんだし。
塩や胡椒で味を調えても厳しいなぁ。香辛料も欲しい。
幸いなことに、身体が小さい分食事量も少なく済んだので、あんまり食べなくても大丈夫でした。
鶏や豚や牛のような上質なお肉に慣れた現代日本人にとっては、鹿肉は食べにくいことが解りましたよ。
なんと贅沢なっ!? って思うでしょう?
でも、血抜きされてない鹿肉って、食べるの結構大変なんですよ、これ。
僕の知らないことではあったが、猟師さんの間では食えたもんじゃないと言われてるそうです。
イノシシ(別名ヤマクジラともいう)よりは臭みが少ないそうですが、あれは……。
<今後のことを考えたら、適度に小分けにして燻製にしたほうがいいのかなぁ>
なんてぼんやり考えてたら、なにかいやな予感とでも言うしかない、妙な感覚が。
本能なんだろうか。白虎と遭遇した時とは比べ物にならないくらいの威圧感が、遠くから向かってくるのが判った。
白虎の方を振り返れば、前足で捕獲された後、もふもふなお腹の下にかくまわれちゃいました。
もふもふ越しに、かなり緊張した心拍が伝わってくる。
虎さんほどの強者ですら怯えるなんてどんな相手なのか、これは実際に見ておかないと!
虎さんの体の下からちょっぴりだけ頭を出して、空を見上げると、遠くに黒い点が見えた。
鳥や飛行機じゃない。
ぐんぐん近づいてくるソレは、だんだん姿が判ってくる。
<あれは……ドラゴン!?>
三対六枚の黒翼を有した、文字どおりの竜。西洋の黒い竜だ。
大きさは目測で、白虎さん十頭分は堅いから、四十メートルはあろうか。
いかにもな凶悪そうな顔にとげとげした鱗。
翼竜とかいうのもいるのかもしれないが、あれはそれの上位番だろう。
確かにあれが相手なら、白虎さんが怯えるのも納得。
もし戯れにでも襲われたらひとたまりもありませんって!
幸いなことに、ドラゴンは頭上を通過しただけで、こちらにちょっかいを出すことなく、飛んで行きました。
黒い燐光の尾を引いて飛ぶ姿は、勇壮。
何事もなくてよかった、なんて落ち着いていたら、白虎さんが立ち上がった。
へばりついてた僕は無様に転げ落ちる。
火の後始末すらさせてもらえず、白虎さんはおもむろに僕の襟首を咥えて走り出した。
方角は、先ほどの竜の進行方向とは逆。
<ぐぇっ! 首が締まるって。しかも酔いそう……>
ぶらぶら揺れながら、白虎さんに連れられて全力離脱しましたとさ。
そしたら遠くの方で、ズンって地響きが……っ!?
さっきの黒竜か。
途中で何度か咥え直しをされながらも、僕はおとなしく白虎さんに運送してもらいました。
背中に乗せてくれた方が様になったのに、なんて考えたけど、たぶん落ちただろうな。
だって白虎さんの全力疾走って、友人のバイクの後部座席に乗った時より速いよ、これ。
魔法でもあるのかな。やたらめったら速い。
虎ってこんなに速く走れたんだ。
おまけに走ってるから上下運動も多少ある。
木立を飛び越え、斜面を駆け降り、岩棚を跳んで。
背中に乗ってたら力尽きて途中で落ちてますねー、これ。
白虎さんの判断力ぱないなー。
しばらくすると、山の陰、ほんとに言われなければわからないような隠れた場所にある、白虎さんが余裕で通れるほら穴に到着。
ここが白虎さんの寝床らしい。
<おじゃましまーす>
白虎さんに下ろしてもらってからお宅拝見。
何の変哲もないほら穴。
雨風をしのげる程度のよくある巣穴だね。
ところどころに、得体のしれない生き物の骨が転がってるけど、気にしないようにしよう。
僕がお宅拝見に執心している間中、白虎さんは遠くの方を警戒してひげをピクピクさせてた。
やっぱり強者っているんだね。上には上がいる、と。
追試は遠いなぁ……。
はーい、名前の意見が何もなかったのでテキトーに名づけることにしました。
作者のネーミングセンスが問われます(ヲイ
次話以降に出るかな~
魔王さまは? あれ?