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魔王と勇者による愛玩生活  作者: 槙村由紀
プロローグ
5/17

ボディーガード

 拝啓、鬼畜なお母様。

 どうやら僕は異世界での初めてお友達ができたようです。

 人型のネコミミーズからは殺されそうになりましたが、森の中で出会った怖いはずの虎さんがとても優しいです。

 

 爪を立てないように気遣いながらじゃれてくるし、食べようとはしてこないし。

 時々体の下敷きになって窒息しかけるけど、それくらい安いもの。

 この虎さん、このあたりの主様っぽいですねー。

 ネコミミーズの一人が僕の姿を捕捉した時も、虎さんのひと睨みで全力ダッシュしてたし。

 

 生きたチートゲットだぜ! とか舐めたこと考えてました、調子に乗ってすみません。

 反省してます。

 

 肉球で頭をべしべししないでください。

 猫パンチならぬ虎パンチは爪が無くても結構重いです。


 髪に砂が付くって。せっかく河に潜ったとき洗ったのに。

 まぁいいけど。


<やばい、この虎モフり放題だわぁ~。これなら火を熾さなくても布団が無くても平気そう>


 野宿する気満々だし、集落を見つける気は皆無です。

 ええ、皆無ですとも。

 二度と人里に近づくもんかっ!

 殺されたくないしね。


 お友達兼、布団兼、ボディーガードな白虎さんですが、お食事はするようで。

 僕に入念に顔をこすりつけたかと思うと、のそりと木立の中に消えて行きました。

 そして三十分もしないうちに、五百キロは下らない大きな鹿(幼女視点です)の首を咥えて帰還なさいました。


 前言撤回。やっぱり火は起こさないとダメだわ。

 あのですね。

 その、獲物を分けていただけるのは大変にありがたいのですが、生肉をそのまま齧るのは遠慮させていただきたいな、と。

 そんな期待を込めた目で見ないでください。

 あと、口の周り血だらけなんですから、こすりつけないでください。

 僕はナプキンじゃないっての!(敵じゃないと分かった途端にこの対応。ヘタレの証明です。)

 

 それからは薪を集めたまでは良かったものの、どうやって火を起こすか。

 その一点で大いに悩んだ。

 棒と板を用いた摩擦法は使えない。

 摩擦の速度が全然足りないからだ。


 かといって紐を通すための穴を棒に空けることもできず、紐もない。

 

 次案、レンズと太陽光で着火作戦。

 レンズなんてありませんですよ。

 ビニール袋でもあれば、なんとかレンズの代用はできただろうに。水を入れればいいんだしね。

 氷どっかにないかなぁ。レンズ状に加工すれば氷で火が熾せるのに。

 ま、今日は曇りだからどの道、太陽光を利用する方策は手詰まりなんですがね。


 となると困った。

 白虎さんが臓物類を咀嚼する音をBGMに、ない頭をひねって考える。

 プロメテウスがいてくれれば、どこからか火を盗んできてくれそうなのに。

 どこまでも他力本願です。ごめんなさい。


 火打ち石って、どんな石なんだろ?

 普通の石とは違うんだっけ?

 なんか柔らかめで乾いた鉛みたいな感じだったような……

 落ちてないよねー。

 ってか、落ちてたとしても気づかないし。

 ほんとどうしたものか。


 腕組みしてうんうん悩んでる僕を肴に、首をひねりながらお食事タイムな白虎さん。

 何か代案ありませんかねぇ?


 ぼんやりしてても火は熾きないので、あきらめて生肉を齧ることを覚悟しました。

 寄生虫にだけ気を付けていれば、大丈夫だよね?

 エキノコックスって鹿もかかるんだったよねー、寄生虫由来だったから。

 でも異世界だから大丈夫なのかな?

 ……やだなー寄生虫。


 やりきれなくて溜息をつくと、息と一緒に青い炎が口から漏れました。

 何事かと目を白黒してみたものの、結局は、


<そういえば今の僕は人間じゃなくなってたんですよねー>


 のひと言で落ち着いてしまう自分が情けない。

 とりあえず薪に着火しようと、組んだ小枝に息を吹きかけてみるのであった。

 次回予告。

 

 近々やっと魔王さまと遭遇できそうです。

 長かった。タイトル詐欺にならないようにしなくては。

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