人間辞め(させられ)ました
なんか思いついたので忘れないうちに。
なんだろう。この喪失感は。
身長百七十はあったはずなのに、どこからどう見ても五、六歳児。
ガリガリに痩せこけたうえ、全身暴行の痕だらけで、青あざだらけ。
鍛え抜いていないながらもそれなりにあった筋力はどこ吹く風。
別人の体ですね。わかります。
試しに手をにぎにぎしてみても、小さなもみじが思ったとおりに動きます。
<ほぅわぁあゎぁっ!?>
どういうこと!? 黒い組織の者たちにアポト何とかって薬でも飲まされたのか?
いやいやいや、ありえないし。
まぁいい。怪我の具合を見るのが先だよね。
そして体中をくまなく探っていて気付いた重大な事実に直面。
女体化してました。
<女になってる!?>
まったく理解が追い付かない。驚きすぎてもはや驚きゲージは品切れです。
何言ってるのか自分でもよくわからん。
あー、考えるのやめようかな。
驚きの連続で、ぬぼーっとした顔になったまま、僕は手近な水たまりで姿を確認した。
肩甲骨にかかるくらいに伸びたぼさぼさで汚れ放題な金髪、紫水晶を思わせる美しい瞳。
整った顔立ちではあるも、全体的に汚れ放題なせいで、どうも愛らしさが半減している。
これは――――将来かなりの美人さんになるのでは?
磨けば光るはず!
ほっぺに手を当ててほほ笑んでみた。
<かぁわいー!>
やばい、これお持ち帰りしたくなるくらいかわいい。
でも、それだけじゃなかった。
左の二の腕には、今までどこにも見たことのないものがあった。
真っ白な、やたら硬くて頑丈な鱗が生えていたのである。
もう驚くのはやめよう。そう思っていた時期がありました。
皮膚がゾウの肌見たいになったり、樹木のような腫瘍ができる病であればネットで見たことがある。
でもこれは完全に鱗だ。爬虫類とか魚類とかにある、アレ。
ショックで硬直していると、
<いてっ!?>
背中に何かが当たった。
転がったものを見れば、あちこちとんがった今の自分の拳くらいの石だ。
頭じゃなくてほんとによかった。
周囲を見回すと、自分より大きな赤毛の男の子。十歳くらいだろうか。
何の冗談か頭の上には立派なネコミミが生えている。
汚物でも見る視線は攻撃的で、石を投げたのは彼なのだろう。
まだ左手に同じような石をもう一つ握っている。
「まだこんな所に居やがったのかよ、失せろよ化け物!」
言うが早いか、投じられた石は僕の脛に命中。
少し切れてしまって、傷口から無色透明な血がにじみだす。
<どうやら人間型ではあっても人間ではないようですね、僕>
本日何度目か忘れたくなるほどの驚きと喪失感に、頬を涙が伝った。
まずい、書きたいこと書く前に手間がかかりすぎる!