表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

武勇伝

※微残酷表現あり

 たぶんへーきだと思うけど一応。

「のう、『白竜』殿。そこらでひとつ休戦してはいかがか? そやつ、今の『白竜』殿や守護……エーリーン殿よりも頑丈故、殺すことは叶わぬぞ? わらわの本気を一撃とはいえ受け切ったこともある。この場でいくら痛めつけようと無駄じゃな。」


 そんな絶望的なことおっしゃるヘルマさん。

 涙目で仕留めるように訴えかけても、

「あれはそなたの守護獣なのじゃから、自分で責任を持つのが筋であろう?」

 のひと言に玉砕。


 言外に、多分に「関わりたくない」という意図が見え隠れしていたが、そこはもう諦めた。 

 だって、僕もその気持ちがよくわかるから。


 僕はしぶしぶヘルマさんから離れると、エーリーンを盾にして、ヘルマさんの対面のソファーに身を沈めた。

 まったく、不意打ちでとんでもない事してくれたよこの『魔王』さま。


「どうしてあんな守護獣を先代は侍らせていたんだ……」

「なに、あやつは惚れ込んだ相手に仕えることが至福らしくてな。気持ち悪い奴だが、護るというただ一点においては、おそらく最強じゃぞ? 仮にこの場で(わらわ)が『白竜』殿に危害を加えようとすれば、死に物狂いで身を盾にしてでもそなたを逃がそうとするはずじゃ」


 そう言って「ふぉおおおぉぉっ!」とかいいながら怪しい目を向けてくる老執事(へんたい)をチラ見するヘルマさん。

 確かに異様な執着心は見受けられますが、それってストーカーとどう違うんですか?


 こんな女の子女の子した服を着ることすらはばかれるのに、まさかロリペドストーカーまでとは。

 それも執事でクーリングオフできないのか。

 隙を見て誰かになすりつけよう、そうしよう。


 はっ! まさかこれって最前のヘルマさんの思考かっ?!

 やられた……


 思わず嘆息したが、現実は変わらないね。


「それでヘルマさん、そちらの怪力――」


 ヘルマさんの隣に控えていたメイドさんの三角眼鏡がキラーンって光った。


「ぃえ、見目麗しくて有能そうな女性は何者ですか?」

「おお、そういえば互いにちゃんとした自己紹介がまだじゃったな。彼女は(わらわ)の侍女で、妖怪シルキーの(かなえ)。家事においては完全無欠で重宝しておる。そして――」


 ナメクジでも見るような眼を向けたのは、エーリーンに呻られているストーカー(へんたい)だ。


赤城(そやつ)が先代の白い大蛇の守護獣である。なんでも様々な無理難題や危険な場所に派遣されておきながらも、しぶとい生命力で帰還してくる奴じゃな。先代の『白竜』殿も、何度も危険な場所から帰還してくるそやつを見るたびに舌打ちしておったのが懐かしいのぅ……」

「先代にも嫌われていたんだ……分かる気がする」

「粗末に扱うのは結構じゃが、『白竜』殿自身に危害を加えたり、嫌な思いをさせた者は、どれだけ時間がかかろうとも必ず報復に走るから、取り扱いには気をつけるようにしてほしいものじゃな」

「……ぇ?」


 頬を引き攣らせてソレを見ると、顔を赤らめて照れてやがった。


「かつて(わらわ)の城に勤めていた者の中に不躾な者が居たらしくての。そやつが先代の『白竜』殿にいやがらせをしておったのよ。そのことに気付いたそやつが報復に走ろうとしていたんじゃが、一応は(わらわ)の城の使用人じゃったから口で注意する程度だったのじゃが、他にもこそこそといろいろやっていた挙句に城から追放された」


 ヘルマさんはそこで一口、鼎がさりげなく差し出した紅茶を口に含む。

 僕も受け取って一口飲むと、『午※の紅茶』よりおいしくてびっくりした。本職の淹れた紅茶って美味しいんだね。ストレートでも結構いける。

 

「追放された使用人は、翌朝、近くの川に浮いておったな。全身の骨が砕かれておったのは見るに堪えんかったわ」

「…………」

「まぁそんなことは良い。とりあえずは取り扱い注意ということじゃ。それで『白竜』殿の方を聞いてもよろしいかの?」


 そう言われて初めて戸惑った。

 僕は今日初めて気がついたらこの世界に居たわけだから、この身体が成長するまでの記憶らしいものは一切持っていないのだ。

 かといって元の世界(むこう)の知識を持ってくるのもいい加減どうかと思うし。

 さてどうしたものか。


「僕の記憶は、今日目が覚めた所からしかないから、自己紹介らしいことなんて何もないんです。ごめんなさい。血が透明で、みんなから化け物って呼ばれて殺されそうになった良くわからん生き物ってくらいですねぇ。『白竜』かどうかなんて僕にはわからんのですよ。あー、なんか口から火が吹けます」


 そう言ってちょろっと青い火を吹いてみせると、ヘルマさんが堪え切れなくなったように抱きしめてきた。

 ちょっと、紅茶がこぼれますって!


「そうか……そうか……ならば(わらわ)がそなたの新たな家族となろう。師となろう。友となろう。仲間となろう。我ら竜種は唯一無二の存在。竜種同士でしか分からぬ悩みもある。遠慮なく(わらわ)を頼ると良い」


 そう言って微笑むヘルマさんはとても綺麗で、『魔王』なんて呼ばれているのが不思議なほどに慈愛に溢れていました。

よかった。一日当たりのPV数が5桁から4桁に減ったよーw

精神衛生的には非常にありがたいです。

日間ランキングで「無職転生」の後ろに居た時は冷や汗しか湧きませんでしたよ。

なんですか、58位って。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ