EX1 魔王さま④
これでEX1終わりです
<僕がヘルマさんと対をなす『白竜』ですか。ないわー。むしろ虎さんの方が適役だと思うんだ。任せた!>
「!?」
硬直から意識を取り戻した『白竜』殿が、なにやら現実逃避をはじめてしまいおった。
文字通り白い虎に押しつけようとぐいぐい押しても、幼い体躯では勝てまいて。
虎よ、必死になって爪で踏ん張らずともよいぞ?
そもそも貴様の方が今の『白竜』殿よりは強いはずじゃし。
ここまでされても怒らぬとは、こやつまさか『白竜』殿の守護獣であるか?
とすれば、こやつも竜種の悲鳴を聞いて駆けつけた口か。
『白竜』殿との遭遇(合流)も偶然ではなかった、か。
それにしても、そんなに『白竜』であることがいやなのか、今代の『白竜』殿は。
妾は額を手で覆って嘆息した。
「これこれ、『白竜』殿。いくら足掻いたところで現実は変わらぬぞ?」
<現実とは努力次第で変えられるのです。そして、人違い! いえ、竜違いです! 僕はそんなに立派な『白竜』などという存在じゃないですよ~。ただのなんかよくわからんちびっこですよ~。こら、虎さんも、諦めて、僕の代わりに、あれの、相手を!>
『白竜』殿、竜種は世界に最大で六頭。黒白竜と四属竜のみじゃぞ?
あとは眷族としての亜竜どもにすぎん。
まったく、子供じみた屁理屈こねる――――子供か。
「立派なことを言いながら情けないことをする。『白竜』殿は存外に諦めの悪い性格らしい。どれ」
無造作に縮地。一息で距離を縮め、小さな身体をつまみあげる。
竜種ともあろうものが見苦しいことをしては、他種族の者どもから失望されるぞ?
どういうつもりなのかと、同じ目線になるように持ちあげて目を覗きこむ。
途端、地を水滴が打つささやかな音が足元からしてきた。
視線を落とせば、ちいさな水たまりが湯気をあげておる。
妾の気配に当てられたのか……?
これはしまった。
妾を含めた竜種は『白竜』殿を除いてみな無意識かつ日常的に威圧を放っておる。
まともに受ければそれこそ、件の猫獣人どものように震えあがるのが常じゃ。
この幼い『白竜』殿は、同格であるにもかかわらず、それに対する抵抗力がなかったのじゃろうなぁ……。
なるべくそっと、乾いた地面に下ろしてやる。
愚図りだした子供の世話をしたことなどないぞ、妾は!?
大半は鼎か手近に居るものに丸投げしておったし。
どうすればよいのじゃ、こういうときは!?
困り果てて虎に助けを求めて視線を向けるが、ジト目を返しよった。
なかなか良い性格をしておるの。
えーい、とりあえず頭でも撫でておけばよいのか?!
わしゃわしゃと黄金の髪を撫でてやる。
――――気まずいのぅ。
「その、すまなんだな。侘びも兼ねて『白竜』殿をもてなしたいので、城までご足労願えんか? なに、妾の背に乗せて運ぶ故、そう時間はかからぬて。着替えも用意するしの」
<ぼ、僕に――ひっく――拒否権、は?>
「妾としては、そなたを賓客として迎えたいのじゃ。どうか譲歩してはもらえぬだろうか」
なるべく優しく聞こえるように努めて語りかけた。
声を上げずにしゃくりあげて静かに泣くさまは、罪悪感をひしひしと与えて来る。
事前に命じておらぬが、城を出るときに鼎に連れ帰る可能性を示唆しておいたし、湯あみの準備くらいは想定しておるじゃろう。
なにかと優秀な鼎のことじゃし、どうにかするはずじゃ。
『白竜』殿はしばらく何かを考えた後、
<分かりました。いきます>
「あい、わかった! では大きくなる故、しばし待たれよ」
良い返事を聞かせてもらった。
では心変わりせぬうちに飛ぶとするかの。
善は急げじゃ。
身体に黒い燐光を纏い、元の巨体をさらした妾は、乗りやすいように地に伏せてやる。
ばさりと六翼をふるうことで、乗ることを促した。
“さぁ、乗るがよい。そちらの虎は『白竜』殿の守護獣であろう? 貴様も乗ることを許すぞ”
そう告げると、『白竜』殿はなにか不思議そうな顔で白い虎を見ておった。
妾は何かおかしなことでも言ったかの?
各々を乗せ終えると、妾は城へ向けて空に舞い上がった。
ただひとつ誤算があるとすれば、上空の空気の薄さに慣れておらぬ『白竜』殿が、城に着くまでに気絶してしまっておったことくらいか。
妾としたことが失敗じゃった……。
目を覚ました時に嫌われておらぬか心配じゃ――――。
16000PV突破しました~
ほんとにどうしたんですかね、この事態は。
日間ランキング105位まで上昇してしまってますよ!?
おかしい、現実がまちがってますねぇ……(遠い目
私の駄文がこんなに人気なわけがない!(錯乱気味