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魔王と勇者による愛玩生活  作者: 槙村由紀
プロローグ
1/17

目が覚めたら

 槙村由紀です。初のネット投稿です。

 普段シリアスしか描かないのですが気分転換に短編連作などかこうかしらと始めてみました。

 更新不定期。過度な期待はご遠慮ください。

 人は誰しも、頑張らなければならない時がある。

 それは、大切なものがかかっていたり。

 それは、義務であったり。

 それは、罪であったり。


 そして僕は、特濃コーヒー(もちろんブラック無糖をジョッキで!)を片手に、某唐辛子の王様的なお菓子をつまみつつ、徹夜を敢行していた。

 なぜかというと、僕は一つの伝説を打ち立ててしまったからだ。


 高校の定期テスト全二十七科目のうち半分が、軒並み赤点で再試験、という素敵イベントの結果である。


 そして、この結果が判った瞬間、


「――――臨終(おわ)った…………うおわおあぁあぁあぁぁあぁぁっ!」


 そう、発狂しかけてしまった。

 助けてくださいと担当教諭陣に頭を下げまくり、恥もプライドも捨てて泣いてすがり、なんとか難易度を下げてもらったり、出題問題の類題を指示してもらったりして徹夜からの一夜漬け。

 

 睡魔なんぞに負けてたまるかと、コーヒーを一気飲み(ジョッキ三杯目)をした直後、急に意識が遠のいたところで、身体から力が抜けていくのを、どこか他人事のように感じていた。


「――――まだ眠るわけには……まだ……追試終わってないのに……っ!」



 僕は知らないことであったが、どうやら全ての物質には致死量というものがあり、カフェインの致死量は中毒症状が出るのとほぼ同じであるということだった。ただ、分量には個人差があり、気軽に試すわけにもいかないのだが。

 そして特濃コーヒージョッキ三杯というのは、致死量というには充分すぎたのであった。




 ここはどこだろう。

 視界に飛び込んできたのは、見知らぬ天井――いや、場所(かべ)だった。

 それが見覚えのない、レンガ作りの朽ちかけた粗末な家の外壁だと認識できたのは、寝起きのぼんやりとした頭を起こした時だった。

 地面(・・)に手をついて身体を起こすと、体をくるんでいた朽ちかけのぼろ布(麻かな?)が胸から滑り落ちる。

 頭上には見慣れた天井はなく、どんよりした曇り空が広がっているだけだ。

 古い家屋の陰で、丸まって眠っていたらしい。

 野宿万歳!


<ここは――――どこだよっ!?>


 試験が! 追試が! 勉強が! 留年がっ!!


 瞬間パニックに陥った僕は、誘拐されたかもしれないことよりも、追試をブッチしていることの方に意識が向いていた。

 太陽の位置は真上。

 つまりは正午だ。追試は朝九時からみっちり夕方まであったはず。最低でも三科目は受けられていないことになる。

 しかも、学校にたどりつくまでにどれだけ時間がかかるかもわからない。

 いや、一晩で移動できるだけの距離なのだから大丈夫、と妙な冷静さが頭をよぎるが、飛び起きるように立ち上がろうとしたところで、踏ん張りが利かずによろけ、顔から地面に倒れ込んだ。


「~~~~~~~~っ!」


 あまりの痛みに、声にならない苦鳴をあげて、痛みの波が落ち着くまで耐える。

 痛みから涙を漏らすなんて、おそらく小学生のとき親をからかった挙句おなかを蹴られて肝臓が破裂したとき以来じゃあないだろうか。


 なんだかひどく痛覚が鋭敏になった気がする。

 ヒ―トアップしていた頭が痛みで冷えたのか、顔以外にも痛みが走ることに気付いた。

 体中の間接や、おなかから鈍痛が絶え間なく襲ってくる。

 これはいまコケたからではなく、それ以前に何かけがをしていた可能性が高い。

 でも、徹夜続きの僕はまったくけがなんてしていなかったはず。


 攫われた上に暴行ですか、そうですか。

 こんなひどい目にあうようなことにはまったく心当たりがない。

 不良に襲われている女の子を助けたり、○9○金融に手を染めたり、鞄を運ぶだけで一万円とかいうぼろいバイトも全くやっていない。

 基本、ことなかれ主義の日和見ビビリな僕としては、毎日をのんべんだらりとまったり平穏に生きていただけなのに。


<はっ!? まさか半分赤点伝説が親にバレて捨てられた!?>


 一番ありそうである。

 適度にぼこられているところなど、まさに納得できる仕様。

 あの鬼畜な親ならやりかねないというのが、誰にも誇れない素敵な親です。

 

 そうとわかれば、まずは方針をば。

 現在の所持金と、現在地と学校の方角を把握。

 身体の損傷具合と残存体力の把握。

 よし。


 ポケットを探ろうと身体に視線を落とし――


<なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!?>


 はたして、襤褸をまとっただけの傷だらけな幼児の身体が視界におさめられた。

 次回の更新は未定です。

 

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