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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
桜色の絨毯が広がる日本庭園にて
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庭園の妖怪14

約束の午後一時。

庭園へと着いた辭が見たのは、縁側にいる鎌鼬だった。


キョロキョロと辺りを見渡しては鼻をヒクヒクさせている。

その様子は、誰かを嗅覚で探しているようにも見えた。


近づくと気配で気づいたのか、鎌鼬は辭の方へと振り返った。


「くぅーん!」


元気良く鳴く鎌鼬に、思わず微笑んだ。

来てくれたことが嬉しくて、鎌鼬の頭を撫でる。


「来てくれたのですね。」

「くぅーん!きゅーん!」

「ついてくって言ってる。良かったな、辭。」

「はい。」


これも辭にとってはいい経験だな。

お稲荷さんの脳裏に彼女の言葉が浮かんだ。


もっと知りたいんのだ。妖のことも霊のことも。


しばらくお稲荷さんは何も言わずに己の主である彼女と、鎌鼬の馴れ合いを見ていた。


「鎌鼬、無理はするなよ?

まだ小さいんだから、キツくなったら言うこと。いいな?」

「きゅーん。」


私に抱きしめられている鎌鼬に向かって、お稲荷さんがそう呟いた。

対して鎌鼬は、どことなくだが不機嫌のような気が。


ぴょんっと私の腕から飛び降りた鎌鼬は、毛並みを逆立ててお稲荷さんに威嚇。


「え?!何で威嚇されるんだよ!」

「ヴゥゥゥ……」

「お稲荷さんが小さいとか言ったからじゃないですか?」

「小さいのを、小さいって言って何が悪いんだよ。」

「ヴゥゥゥ……」

「あ。」


二言目に何か言おうとした彼女の目に映ったのは、白に薄い黄色が飛びかかった所だった。


狐とハリネズミ。

異色のコンビ誕生の瞬間。

その後、お稲荷さんと鎌鼬とも相談して、ハリネズミの名前は決まった。


鎌鼬は毎日お稲荷さんと仲良く(じゃ)れ合っている。

とは言っても、鎌鼬が一方的にお稲荷さんに飛びついているだけだが。


でも、すごく(にぎ)やかなので楽しい。

こうして、庭園の妖怪は疾風と名付けられ、辭と共に過ごすことになったのだった。

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