表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
桜色の絨毯が広がる日本庭園にて
81/133

庭園の妖怪13

***


翌朝ー

春の暖かい日差しを浴びながら、辭は布団から体を起こした。

その隣には丸まって眠っているお稲荷さんが目に入る。


今日の午後一時。

来て、くれるのだろうか。鎌鼬は。

何だかんだと言いながら、ソワソワして落ち着かない。


お稲荷さんに少しは落ち着けと言われたが、気が休まることはなく。

来てくれるのかがすごく不安で。

時計をチラチラと見ては、立ったり座ったり部屋の中を往来していた。


こんなに落ち着かないのは、久しぶりだ。

時計は私の不安や焦燥など知るはずもなく、ただ一つ一つ時間を刻んでいく。


振り子時計の針が揃って、やっと頂点を向いた。

後、一時間……

どうしようか。

今からでも庭園に行って待っていてもいいのだが。


焦っても仕方ないのは分かっている。

だが、ジッとただ時間になるのを待つのは落ち着かない。


「何やってんだよ、辭。」

「お稲荷さんには私の焦りや不安は分からないのです。」

「分かるから言ってんだよ。」


ヒョイッと辭の膝の上に乗ってくる。

膝の上にちょこんと座ったり白い子狐は、真っ直ぐに私を見ている。


そのフワフワの頭を辭は撫でた。

白は気持ち良さそうに、身を委ねて。

何だか少し落ち着いてきた。


「どうだ?少しは落ち着いたか?」

「はい……

お稲荷さん、ありがとうございます。」

「そうか。」


ハタハタとシッポを振っている。

あ、久しぶりに見た、その仕草。

お稲荷さんが嬉しい時にする仕草。


とんと最近見ていなかったのだ。

穏やかで、優しい時間。

その時間を壊すように、ボーン……ボーン……と振り子時計が鳴り響いた。


時刻は午後一時。

チラリと視界に時計を映すと、辭はお稲荷さんと共に庭園へと向かった。


鎌鼬がいることを願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ