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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
桜色の絨毯が広がる日本庭園にて
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庭園の妖怪3

鎌鼬かまいたちは日本の甲信越地方に多く伝えられる妖怪、もしくはそれが起こすとされた怪異。


それはつむじ風に乗って現れ、鎌のような両手の爪で人に切りつける。

鋭い傷を受けるが、痛みはない。


その姿は、ハリネズミのような毛とイヌのような鳴き声を持つ獣とのこと。

また、翼で空を飛ぶともいわれている。


ちなみに甲信越(こうしんえつ)とは、山梨県、長野県、新潟県の3県の総称のこと。

甲斐、信濃、越後の頭文字を取って甲信越と名付けられた。


確かにあの竜巻には驚いたが…


結界は元より悪意のあるものを己が場所に侵入させないためのもの。

それが効かないということは、悪意がないことを示している。


白虎様は竜巻を追ってみるとのことで、すぐに姿を消した。


体中に出来た切り傷に、愛用の薬草のクリームを塗る。


特に痛みはないので塗る必要はないかとも思ったが、お稲荷さんが体に邪気が入っても良くないと言われ、渋々塗ることに。


「鎌鼬は、何故私達に襲いかかったのでしょうか…

悪意は全くないというのに。」

「そうだな…」


お稲荷さんは何事もなかったかのように、桜色の絨毯が広がる日本庭園を見ながら、こう呟く。


「しいて言えば、恐怖心から、だろうな…」


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