お稲荷さん2
(一体どんな方が私のパートナーなのか)
まだ見ぬパートナーに心なしか期待してしまう。
(もしかして神様とか? それならそれで、大変喜ばしいことだが……それでは扱いにくいですね)
うんうんと唸りながら、今回の任で数日だけお世話になる宿へと向かう。周りは人だらけだが、中には妖も混じっているようだ。
殺意や悪意を持った者ではなさそうなので、特に気にしない。
妖は昼夜問わずどこにでも存在する。それは霊も同じこと。何もしてないのに、むやみやたらに退治するのはよくない。
辭は人ごみが嫌になり、少し外れた細道へと入る。大通りと違ってこちらは静か。木々のざわめきが聞こえる。
細道は真っ直ぐ奥へと続いている。所々に脇道へと繋がる箇所もあるが、ここよりもっと入り組んでいそうだ。
すると前方に突っ立っている見知らぬ男の人が視界に入った。
(ゴロツキ? それとも、迷子?)
正直、人とはあまり深く関わりたくはない。妖や霊の根源は、人からだから。
「君、美人さんだね。いくつ?」
声をかけられた。このまま素通りした方がいいかもしれない。だが、後をつけられても困る。
「18ですが、何かご用ですか?」
辭がそう返すと、見知らぬ男は何やら変な動きをしている。周りを気にしたり、挙動不審だ。
「そっか。じゃあ、君一人で来たんだね」
気づかれないように半身を引いた。
(気持ち悪い人。喋り方だけではない、執拗に肩を抱いてこようとする)
これが俗にいうナンパか……そんなに構ってほしいのか。
「私、用事があるので失礼します」
そう言って抜けようとした。
「待ってよー。俺と付き合ってよー」
強く腕を掴まれた。ニヤニヤ笑っている男。
「付き合う? それは一体どのような?」
実質、このような男とのんびり過ごしている場合ではない。宿へ一刻も早く行かなければならないのだ。
「それはねーー」
近くの脇道に連れ込まれる。この辺りは昼間だというのに人気がない。夜になればもっとないことだろう。
背中を壁に押し付けられた。少し痛む。
「こういうことだよ!」
辭は武闘の構えを密かにとっていた。
手が服の中に入ろうとした、まさにその瞬間ーー
辭の周りを中心として突如風が吹いた。