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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー3
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夜道の訪問者10

 長くない坂道を登りきると、霊園の入り口が見えた。


 入り口の前で立ち止まり上を見上げる。アーチの所に五条霊園と書かれていた。


 しばらくその文字を見つめた後、ゆっくりと中へ足を踏み入れる。

 お稲荷さんは、辭の横にいる。


 「なぁ、辭」

 「何ですか?」

 「こんな数えきれない程ある墓石の軍団の中から、どうやって巫様の墓石を探し出すんだよ」

 「……片っ端から探します」

 「今の間はなんだよ! 絶対今適当に考えついただけだろう!?」

 「何を言いますか。ちゃんと考えていました。こんなの想定内ですよ」


 お稲荷さんのこりゃあかなり骨が折れるぞ、という言葉を聞きながら、辭は辺りを見渡していた。


 何でしょう。さっきから妙な視線を感じる。それが一体どこからなのか、分からない。


 とりあえず、適当に歩いてみよう。

 近くに行けばどこからなのか分かるかもしれない。


 辭は宣言通り、霊園の片っ端から探し始める。お稲荷さんも、文句は言いながらも何だかんだで手伝ってくれる。


 一つ一つ、墓石の名前を確認しては視線の出処を探すのも忘れずに。


 「これで何個目だ」

 「250個目です」

 「まだ半分もあるのかよ」


 疲れてクタクタのお稲荷さんが恨めしそうに辭を見上げてきた。ジト目が何とも言えないくらい可愛さをアピールしている。


 お稲荷さん、ごめんなさい。全く怖くありません。


 少し休憩をした後、再び捜索を開始する。278個目の墓石を確認した時だった。

 最初に感じた視線がすごく強くなっていたからだ。


 「辭?」


 不思議そうなお稲荷さんを無視して、視線を追う。墓石を一個、二個、三個……通り過ぎた。

 四個目で足を止める。


 「ここです」


 辭が足を止めた墓石には、高坂 巫と書かれていた。お稲荷さんがトテトテと後を追ってきた。そして辭の隣で墓石を見上げる。


 「やっとお探しのブツがあったか。にしても、こりゃひでぇな。ほとんど手入れがされてない。放置だ」


 確かに巫様の墓石は周りの墓石と比べて綺麗とは言いがたかった。

 雑草は伸び放題だし、お供え物すらされてない。墓石も長年の雨風に曝されて所々欠けてしまっている所も見られる。


 この家の人達は祟られるだろう、きっと。

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