夜道の訪問者3
あれが、夜道の訪問者なのか?
辭は怪異を見つめたまま、動かない。
何か向こうから先手を打ってきた場合のためにと、数珠を構えていつでも術を唱えられるようにしていたのだが。
向こうから先手を打ってくるような気配は今の所ない。
「あれは……!」
黒い霧の中からポォォッと赤い光が浮かび上がった。赤い光はこちらにフヨフヨと向かって浮かんでくる。
来る……!!
あの光が夜道の訪問者。そう思って再び構えたが、赤い光は橋の一番端へと来るとフッと消えた。
そしてまた橋の向こうからこちらに浮かんでやってくる。噂通り、まるで往来しているかのようだ。
お稲荷さんも警戒はしているものの、その赤い光をじっと見つめている。
「消えました」
しばらく同じことを繰り返していた赤い光は、やがて黒い霧とともに姿を消した。
雨はザーッと降り続いている。フラリと体が傾く。
(あれ? 一体どうしたというの? 体が、重い)
傘が宙を舞う。ドサリとぬかるんだ地面に辭の体が倒れこんだ。
「辭?! おい、どうした?!」
お稲荷さんが呼んでる。
辭は遠くなるお稲荷さんの声と雨の中、ゆっくりと意識を手放した。
「辭? 辭ーーーーーー!!」
***
深い深い闇。
何故ですかーー
お稲荷さん? この声は聞き覚えがない。誰の声だろう。
何故、私の方を向いてはくださらなかったのですかーー?! 巫様ーー
男の人の声。誰かに必死に何かを伝えている。
ハッと気がつくと、辭はセピア色の世界にいた。
(ここは?)
キョロキョロと辺りを見渡す。
足元には木造の橋ーー立てられていた看板を見て、辭は驚いた。




