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小鬼達の悪戯19
小鬼達が消えた後、時雨と幸は寂しそうにその場所を見つめていた。
光の球体はまだそこにあり、フワフワと漂っていて、まるで蛍の様だった。
「綺麗ね」
「あぁ。本当に、綺麗だよ」
六つの光の球体は二人の周りをグルリと浮かぶと、いつの間に開いていたのだろうか。
窓から日の出が輝く空へと、飛び去っていった。
「あ……」
辭は二人に声をかけようとした。でも、声はかけられなかった。二人が涙を流していたから。
お稲荷さんと辭は目を合わせると、静かにその部屋を後にした。
(時雨さんも幸さんも強い人だから。私には弱い所を見られたくないと思うだろうから)
襖を閉める際、二人はいつまでも小鬼達の飛び去っていった方向を見つめていた。
自分の部屋の襖を閉めた途端、堪えていたものが一気に溢れてきた。
涙が足元にいたお稲荷さんの頭にかかる。辭は静かにお稲荷さんを胸に抱いた。
お稲荷さんは辭に大人しく抱かれていて、その優しさが胸に染みた。
辭は朝日が真上に昇るまで、泣き疲れてお稲荷さんと一緒に眠っていたのだった。




