表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー2
32/133

小鬼達の悪戯16

 (三年……)


 辭達人間にとっては長く感じるものでも、妖にとってはあっという間でしかない。

 それこそ、綺麗に咲いていた花が二、三日経てば萎れてしまうような。


 「そんな」

 「だから、今日で最後なのです。今日で我々が力を無くして三年になりますから。何故最後なのかは分かっていただけたでしょうか」

 「はい……小鬼さん達」

 「何でしょう?」

 「……時雨さん達は、このことを知っているんですか?」

 「いえ。伝えておりません」

 「どうして、ですか?」


 沈黙が訪れる。返事は返ってこない。

 時雨さんの小鬼さん達の話をする時の顔が浮かぶ。


 「時雨さん達は、小鬼さん達のことを本当に大切に思っているんですよ……!」


 ポタポタと涙が溢れる。拭っても拭っても出てくる涙。切なすぎて、寂しくて、でも暖かくて。


 「辭」

 「伝えて、あげてください。時雨さん達に、このことを……!」


 (お願い。お願いだから)


 「辭様。申し訳ございません。その願いだけは、聞くことは出来ません」

 「そう、ですか」


 お稲荷さんは辭の背後で、辛そうに瞳を閉じていた。


 「……では、午前一時にお会いいたしましょう、辭様」


 顔を俯かせている私を気にしながら、小鬼達は姿を消した。部屋には、辭とお稲荷さんだけ。


 (私なら、すごく辛い)


 それは時雨達も同じだ。もし、辭が時雨さんだったら、どうするだろうか。


 辛くても、きっと笑顔で見送ると思う。ここまで考えて、辭は気がついた。

 小鬼達はいつまでも笑顔でいてほしいから、時雨達に。

 だから、伝えないと言っていたのだろう。辭は小鬼達の優しい心遣いを無駄にしてしまう所だった。


 「お稲荷さん」

 「大丈夫か? 辭」

 「大丈夫です」


 涙を拭って立ち上がる。心に決めた。小鬼達の最後を、時雨達の代わりに見届けると。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ