小鬼達の悪戯14
辭は押入れへと近づく。
そして把手に手をかけお稲荷さんの方へと振り返る。
「お稲荷さん、これは100%ですか?」
「あぁ、100%だ!」
「その自信たっぷりさが私の癪に障ります」
「酷いっ……」
「外れていたら、きつねうどんにしますね」
「食べられる!」
後ろでお稲荷さんがあー! やめてー! と情けない声を上げている中、辭は把手を引いた。
押入れの中には何もなかった。でも、押入れの奥。
奥には辭の探し物を持った小鬼達が隠れていた。
「ありました」
「あったか、良かった。ってちょっと待て! 何で札を構える?!」
「いえ、ちょっと」
「?」
見事、辭達に見つかった小鬼達は今は押入れから出ていて、辭に手鏡を返し正座をしている。
「お前達の仕業だったのか」
「す、すみませんでした」
「こいつ等も反省しているみたいだし。辭、許してやれよ」
「そうですね。では許すかわりに」
懐から札を数枚取り出す。
「今すぐ滅しましょう」
小鬼達がきゃー! わー! と悲鳴をあげお互いに身を寄せあっている。
時雨達なら許すだろうが、辭は簡単には許さない。
「こら! 札を構えるな!!」
「チッ……」
「すぐに直しなさい!」
渋々お稲荷さんの言う通りに札を直すと、小鬼達から安堵の溜息が聞こえた。
それを見て、辭はまたイラッときたので札を構える。小鬼達の悲鳴が響く。
「だから! すぐに札を構えるな!」
怒られたので直そうとしたら、お稲荷さんから札を取り上げられてしまった。
「札を返してください、お稲荷さん」
「いいや、これは俺が没収しておく。お前、許す気全くないだろう」
「いいえ。何を言ってるんですか?とっくの昔に許してます」
「嘘つけ! どうせまた札を構えるんだろうが!!」
結局、札を没収された。許すまじお稲荷さん。
その成り行きを見守っていた小鬼達は何かに気づいたようで。
一斉に小鬼達が深々と土下座をしてきた。
「本当に申し訳ございませんでしたー!」
「まさか楿の次期当主様のものとは露知らず」
「勝手に持ち出してしまい、辭様にご迷惑を!」
「どうか、どうかお許しください!!」
「辭様!」
「お許しを! 我々ただ最後に、時雨殿と幸殿の驚く顔が見たくて」
むむ、さすがにここまでされると許すしかなくなってしまう。
それにさっきから横にいるお稲荷さんの目が痛い。
「許します」
辭がそういうと小鬼達は泣きながらお礼を言ってきた。
でも、先程のフレーズが妙に引っかかる。そこで聞いてみることにした。
「小鬼さん達」
「はい、何でございましょう」
「先程、最後と言いましたね。何故、最後なのですか?」
「それは……」
小鬼達は黙ってしまった。言いづらいことなのだろうか。




