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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー2
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小鬼達の悪戯12

 これは一緒に過ごして分かったことだが、お稲荷さんは凄く綺麗好きだ。


 頭には×印に貼られた絆創膏が悪目立ちしている。ちょっと、可哀想なことをしてしまった。


 辭は一旦探し物を中止すると、お稲荷さんの頭に手を伸ばし……


 「辭?」


 ビリッ……と心地よいばかりの音を立て、絆創膏を剥ぎ取った。


 「いっってぇぇぇぇぇぇぇぇー!!」


 かなり痛そうにタンコブに手を当てて、コロコロと畳の上に転がっている。

 そ、そんなに痛がるなんて。


 「いきなり何すんだよ!」

 「ごめんなさい」

 「俺に恨みでもあるのか?! もうそろそろ俺泣くぞ! 泣くからなっ!!」


 頭に怒りマークをつけて、まるで火山のように湯気が出ている。いつも以上にコーンと泣いて、メソメソしている。


 辭は装束のポケットに手を入れると、小さなコンパクトを取り出した。それを片手にお稲荷さんの元へ。

 コンパクトの蓋を開けると、緑色のクリームを人差し指で掬う。


 「お稲荷さん。こっち向いてください」

 「もう、何だよ」


 こちらを向いたお稲荷さんの頭にそのクリームを塗る。染みるのか、体をプルプルさせている。


 「辭。おい、何塗ってるんだ」

 「お薬です。よく効く薬草をクリーム状にしたものなので安心してください」

 「……それ、いつも持ち歩いてるのか?」

 「はい、もしもの時のためにいつも。妖の傷に効くかどうかは分かりませんが、少しは痛みもマシになるかと」


 塗り終わると包帯で保護して完了だ。

 その間、お稲荷さんはされるがままになっていた。


 「出来ました」


 お稲荷さんは前足を頭へ持っていき、ペタペタと触っている。


 (何かおかしかったのか? 私なりに考えて包帯にしたのだが)


 包帯であれば、絆創膏みたいに剥がれることもなく傷を保護できる。


 「辭」

 「はい」

 「ありがとうな」

 「はい、喜んでもらえると嬉しいです」


 二人は仲直りした。お稲荷さんは辭の膝の上に乗ってハタハタとシッポを振っている。

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