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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー2
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小鬼達の悪戯11

 しばらくその様子を見ていた辭とお稲荷さん。一時間も宴会は続いた後、お開きとなった。


 小鬼達は皆で協力して、座布団や使ったものを元の位置に直していた。

 なるほど、この季節だけの例の音は小鬼達が物を直したりしていたために起こったものだったのだ。


 やがて小鬼達は一匹ずつ霧のように掻き消えていき、そこには誰もいなくなった。


 「そろそろ戻りましょうか」


 くるりと踵を返し、睡眠をとるため自分の部屋へと歩み始めた。

 足元には頭にタンコブを作ったお稲荷さんがトテトテと歩いている。


 「そうだな……って、何でさっきゲンコツ落としたんだよ!! めちゃくちゃ痛かったんだぞ!」

 「ごめんなさい。何だかムカついたので、つい手が出てしまいました」

 「ついって」


 呆れて言い返せないお稲荷さん。

 頭の上にあるタンコブを恨めしそうに前足で軽く撫でる。

 心の中で動物虐待だと思ったものの、それを口にはしない。


 そんなことよりもお稲荷さんは毎年春だけに行われる宴会は恐らく今年で最後だろうと、人知れず考えていたのだった。


 部屋へ戻ると同時に辭はすぐに布団に潜る。お稲荷さんも辭の隣に潜り、暖を逃がさないように丸まる。


 「おやすみなさい、お稲荷さん」

 「あぁ、辭、おやすみ」


 そうして二人は深い眠りに着く。

 二人が眠りに着いた後、一匹の小鬼がジッとその様子を見ていたことに気がつかなかった。


***


 翌日、辭は部屋で探し物をしていた。いつも離さずに持ち歩いている大切なもの。

 それが朝起きた時から無くなっていたのだ。


 「ふわぁぁぁぁ……あ? 辭、おはよう。何してんだ?」


 モゾモゾと布団からひょっこりと顔を出すお稲荷さん。黒い瞳に欠伸から出てきた涙が両端に残っていた。


 布団から出てきたお稲荷さんは、一体どこから出したのか小鉢に入った水で前足を器用に使い、顔を洗っている。

 そして櫛を取り出して、シッポを綺麗にしている。


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