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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー2
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小鬼達の悪戯9

 懍は政府の愚痴から始まり、毎度のことながらよく話すなと思いつつ、約二時間近くも話し続ける。

 それで本人は全く疲れていないのだから、それはそれで辭にとってはある意味尊敬にも値するのかもしれない。


 対する辭も、彼女のマシンガントークが嫌いではなかった。幼い頃から変わらないから。時雨も嫌いではない。寧ろ、二人の話は好きな部類だ。


 辭からしたら政府の話など全く興味がない。でも彼女達に関わればいくら興味がなくとも、自然と頭に入ってくるのである。

 だから、気づけば他人より多く知っていることが多々ある。


 日常生活の中で新聞やテレビはかなり見る方なのだが、不思議なことに辭の頭には内容が入っていない。

 興味がなかったら、人間誰しも留めないのは当然のこと。


 そんな世間体にも興味を示さない辭だが、彼女にも興味のある話くらいはあるのだ。

 妖や霊、術について。これは術師であるため、当たり前のように興味を抱く。

 それから、美味しいお茶屋の話。辭だって女の子。甘いものには目がない。スイーツ関連のこととなると、周りを引かせるぐらい語るのだ。


 以前、時雨とそういう話になった時に、日が暮れるまで捕まえてしまい語りつくしたことがあった。あの時はかなり迷惑をかけてしまったのであれから自重している。


 『あ、もうそろそろあたしも仕事だ。毎回ごめんね、辭』

 「いえ、大丈夫です。慣れてます」

 『うん、そう返ってくると思った。じゃあ、また電話するね。お土産よろしくー!』


 ツーッツーッツーッ……

 こうして一方的に電話をかけてきて、切るのも懍だ。そして、辭がいつも仕事で京都にいる時はお土産を頼んでくる。

 切れた電話に寂しさを感じながら、辭は携帯をポケットへと仕舞った。


 ふと、やけに隣が静かだなと思っていたら、お稲荷さんはスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。

 道理で静かなはずだ。かなり長い時間電話をしていたので、気づかないのも無理はない。


 辭は何を思ったのか、お稲荷さんを観察してみることにした。どこからどうみても狐。昨日の変化が嘘のような可愛さ。


 辭は今だに信じられずにいた。


 (あんな変態になるなんて……悪夢だ)


 不覚にもあの時は、突然現れて瞬きする間もなく標的を片付けたその姿にカッコいいとさえ思ってしまった。カッコいいと思ったのは本当に一瞬。楿 辭、一生の不覚。


***


 時刻は午前一時。

 辭とお稲荷さんは、昼間時雨に聞いた通り小鬼達が現れる例の部屋の前に立っていた。


 定刻になるまでは見てやるぞと意気込んでいたのだが、実際にこうして部屋の前に立っていると意気込みよりも逆に変な緊張感が勝ってくる。

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