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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー2
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小鬼達の悪戯4

 辭と時雨はソファーに並んで座る。

 お稲荷さんは辭の膝の上に静かに座って余程心地良いのか、毛づくろいをしているようだ。

 すると、時雨がいきなり立ち上がってカウンターの奥の部屋へと消えていった。


 「長話になりそうだから、お茶と蛍屋のお団子を持ってきたわ」


 奥からお茶とお団子をお盆に乗せて時雨が戻ってきた。


 「団子!!」


 蛍屋と聞いて、お稲荷さんがいち早く反応。シッポを嬉しそうにハタハタと振っている。時雨はお稲荷さんにお団子を手渡すと、お茶を湯呑みへ注いでくれた。

 ゆらゆらと上がる湯気と、お茶独特の芳ばしい香りが鼻を刺激する。


 いい匂い。緑茶も大好きだ。


 「さて、どこから話そうかしら」


 ズズッと一口お茶を啜った時雨は、瞳を閉じて考えていた。

 辭はその様子をチラチラと横目で見ながら、お茶を一口啜った。


 「そうねー……小鬼達がこの宿に入り込み始めたところからにしようかな」


 湯呑みを置くと、記憶を辿るように話してくれた。


 「あれは、もう8年も前になるわ。当時、私と幸さんはこの京都で宿を開いたばかりだった。最初はね、今みたいにたくさんのお客様が来ていたわけではなかったの。常連さんばかりで、決して客入りもいいとは言えなかったわ。それでも、また来ますって喜んで帰っていくお客様が私達の喜びだった。ある日のことだったわ。そうね、季節はちょうどこのくらいかしら」


***


 8年前ーー

 それはまだ二人が宿を開いてから一ヶ月しか経っていない、桜が満開に咲いていた春のある夜ーー


 時雨と幸は同じ部屋で眠りについていた。宿の周りには二人の施した結界が貼ってある。悪霊はもちろん悪意を持った妖すら寄せ付けないため、宿の平穏は保たれていたのだ。


 カタンーーと、どこかから物音が聞こえた。それは眠っていた時雨達の耳がはっきりと捉えていた。

 目を開けて、辺りに警戒をする。


 「時雨」


 ふと、幸の方を見るとやはり聞こえていたようで時雨と同じく辺りを警戒しているようだった。


 「幸さんも、気づいていたの?」

 「あぁ。どうやら妖が入り込んだようだね。悪意はないから、悪い奴じゃないんだろうけど」



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