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楿家分家
「はぁ……」
辭はその日溜息をついていた。西の都でのことを思い出していたのだ。
ここは楿家分家ーー。広くて大きな屋敷、庭には日本庭園がある。
日当たりのいい縁側で、辭は人知れず落ち込んでいた。
日本庭園の四隅には桜の木が植えられており、今の季節は桜が満開になっている。
(とても綺麗だ)
桜の花弁がヒラヒラ舞っていて、まるで花吹雪。花弁は宙を舞っては、庭園に積もる。
ハッとした時には、見渡す限り桜の絨毯が辭の目に広がっていた。
思わず見惚れる美しさ。辭の色素の薄い茶色のロングと焦げ茶色の瞳が揺れる。
風がザアァ……と音を立ててはその茶色の髪を掬って遊ぶ。
辭は口を開いた。
「なんですか? お稲荷さん」




