お稲荷さん11
ショボンとしている空気が何とも言えない。辭はその白い毛並みに手を伸ばし、優しく撫でた。お稲荷さんは一瞬ビクリとしたが、されるがまま。
「仕方ないじゃないですか。だって、狐はイヌ科なんですから」
狐/イヌ科ーー確かにそうだが。
ガラスのハートのお稲荷さんにトドメを刺すように辭の言葉が突き刺さる。
結果:辭流の慰めの言葉は、お稲荷さんをますます落ち込ませた。
ズズッ……
二人の間に、辭が抹茶を啜る音だけが流れる。
「折角天気がいいのに、楽しまなくては勿体無いじゃないですか」
この土地で会えたのも何かの縁。楽しみたいのだ。
するとお稲荷さんはわー!と声を上げた。
「あー、もう! 落ち込んでても仕方ねぇ! 狐は狐なんだ! やけ食いだー!」
お稲荷さん、やけ食い。
モシャモシャと、両頬をパンパンに膨らませて三色団子を頬張る姿に、笑みが溢れる。
「なんだよ?」
「いえ、お稲荷さんでもやけ食いするんですね」
「しちゃいけないのかよ」
「違います。ただ」
「ただ?」
「喉にだけは詰まらせないでくださいね? でないと、可愛らしいそのお口に手を突っ込まなければならないので」
「ちょっと待て! それは俺が詰まらせる前提じゃねぇか!!」
「それ以外何があるんですか?」
「辭の馬鹿野郎!!」
「馬鹿? 馬鹿とは言う方が馬鹿なのでは?」
「ひでぇ!!」
気のせいだろうか。先程までの雰囲気がすっかり無くなっている。聞くなら今しかない。




