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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
西の都ー花の京都にてー
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お稲荷さん10

 翌日、お稲荷さんを連れて辭は行きつけのお茶屋へと足を運んでいた。

 蛍屋と呼ばれる古いお茶屋さんだ。古いといっても外見ではない。

 開店してからの年数がかなり経っている、という意味だ。

 そのお店独特の味が、辭は堪らなく好きなのである。


 「お稲荷さん、お団子食べますか?」


 辭は三色団子を一つ手に取り、白い子狐へと渡す。


 「おう……」

 「元気出してください。時雨さんはただお稲荷さんが可愛らしくて」


 “決して、悪気があったわけではないのですーー”


 そう言って励ます辭も、元気のないお稲荷さんを見ていると、その焦げ茶色の瞳は悲しく垂れ下がった。

 お稲荷さんは、今、辭とともにお茶屋にある赤い衣を敷いた椅子の上にチョコンと座っている。


 耳は元気がないのか、ダランと垂れ下がったまま。シッポも下へと下がりっぱなし。

 お稲荷さんがここまで落ち込んでいるその理由ーー


***


 それは今朝に遡る。

 妖払いを終えた辭とお稲荷さんが宿へと戻ると、時雨が出迎えてくれた。

 そこまでは良かった。良かったのだがーー


 「ただいま戻りま……「きゃあぁぁぁぁぁ!」


 辭の言葉も聞かず、時雨はその場でお稲荷さんを確保。

 いつものマシンガントークが始まった。


 「何? なになにー?! この可愛らしい子狐ちゃんはー! いやーん、 モフモフしてて気持ちいいわぁ!!  毛並みも綺麗ねー!  え、え?  この子が辭のパートナー?! いいじゃない!! 美女と愛玩動物!! GOODよー!! ほらほら、そこに立って!! 子狐ちゃんも並んで!  はい、ピース!」


 お稲荷さんを抱っこし、写真を撮り、愛でていた。まだここまではよしとしよう。

 しかしーー


 「じゃあ、お洋服着せなくちゃね!」

 「え'"!!!?」


 何故かファッションショーが開始。

 時刻は午前七時……立派に朝である。その後、お稲荷さんは幸が来るまでずっとファッションショーの餌食になっていたとのこと。


 それで冒頭に戻るのだ。はぁ……と溜息が出てしまう。

 お稲荷さんから黒い不機嫌オーラがビンビン出ているのもあるが、結局何故術が失敗したのか聞けずにいた。


 辭としては是非とも知りたいこと。




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