魑魅魍魎8
薄暗い中だが、彼女の身体には所々小さな傷があった。
彼女が自分の帰りが遅くて心配して宿から飛び出してきたのは明確だ。
「……」
「心配かけて、悪かった。」
「……はい。」
また失うのかと思った。私の大事なものを。
お稲荷さんは私にとって大切なパートナーだから。
「……辭。」
「お稲荷さん、約束してください…
これからどんな時も、絶対に私の所に帰ってきてください…
パートナーを、一人にしないでください…」
「分かった。…約束する。」
林から出た私とお稲荷さん。
二人でボロボロになって宿へと戻り、女将さんを驚愕させてしまった。
「大丈夫ですか?!こんなに傷だらけで…
さあ、早くお風呂に入ってください。」
女将さんへ謝罪をする間もなく、あれよあれよと私は着ていた浴衣を剥ぎ取られて、お稲荷さんと一緒に温泉へと放り込まれる。
こうなってしまってはもう入るしか選択肢がない。
体を洗い、仕方なく湯に浸かる。
お稲荷さんはプカプカと浮かんでいた。
「少々傷に染みますね…」
「染みるな…
ていうかびっくりしたぞ。
いきなり現れたと思ったら、そのままぶつかってくるんだから。」
「ごめんなさい…
勢いが止まらなくて、体当たりしてしまいました…」
思わず苦笑いを零す。
上がったら女将さんに謝らないといけない…
騒がしくしてしまったのと、浴衣を一着ダメにしてしまった。
随分と迷惑をかけてしまったし。
それから傷の手当と…
ああ、やることがいっぱい。
やらずに後悔よりも、やって後悔する方がいいと言う。
もし飛び出さなかったら、きっと私は後悔していたことだろう。
あ、やることが終わったらお稲荷さんからの説教が残ってた。
床に就くのは日付が変わってからになりそうだ。
辭ははぁ…と溜め息をついた。




