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お稲荷さん8
「狐じゃねぇ、お稲荷さんだ」
白い狐基、お稲荷さんはそう言ってハタハタと尻尾を振る。これで威張っているつもりなのだろう。
辭はそれを見て、クスリと笑った。それは彼女が見せた初めての笑顔ーー
「分かりました、お稲荷さんー」
何だか可愛らしくて自然と笑みが零れる。
片手で白の頭を撫でていた。
対する白の毛並みも嫌がることなく、大人しく撫でられている。
すると、そんなに遠くない所から妖の気配を感じた。
「おっと、客が来やがったな。辭、話はこれが片付いてからだ」
「分かっています……!」
と話している間に目の間に現れる黒。それはやがて猫の形をとっていく。
「あれは」
「こいつぁ、化け猫だ」
厄介なのが出てきた。払えるのだろうか。不安を覚えつつ、数珠を構え戦闘態勢に入る。
「来るぞ!!」
化け猫は一気に襲いかかってきた。
鋭く変化した爪から繰り出される攻撃に、術を唱える暇さえない。頬を爪が掠った。思わずよろける。




