お稲荷さん7
眩いまでの光は一際出た後、ゆっくりと消え去った。今の今まで使ったことがなかった降霊術。成功したのかどうかも怪しい。
恐る恐る視界を庇っていた腕を退けて、目を開き陣の中心を見た。
「え……?」
思わず声が漏れる。陣の中心には白い何かがいた。しかも、モゾモゾと動いている。
一目で分かった。術が失敗したと。
「どうして、失敗したのですか?! 陣は完璧だったのです!」
そう、完璧だったのに。
「馬鹿だな、辭ー」
「? !」
モゾモゾと動いていた白い何かが、むくりと起き上がる。それは綺麗に輝く白い狐だった。狐、と一言で言っても子狐程の大きさ。白い狐は私を見て、迷わず辭と呼んだ。
「どうして失敗したか、教えてやろうか」
トテトテと可愛らしい足音で辭の足元まで近づいてくる。
「知っているのですか?」
「ああ、知ってる」
辭の焦げ茶色の瞳と白い狐の黒い瞳が交わった。お互い少しばかりの無言で見つめ合う。
チャリっと簪が揺れ、茶色の髪が白い狐の瞳に映る。
辭は白と視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。その瞳は茶色に隠されていてどんな顔をしているのか分からない。
「教えてください。どうして、術が失敗したのか」
(狐さんは知っているのでしょう?)




