そのいちー
こんなことがありえるのだろうか・・・
僕は高校入学2ヶ月をすぎようとしている今このとき、クラスの中でも可愛いなと思っていた子、若松ゆずりに誘われ放課後でも人通りの少ない校舎裏の銀杏の木の下にいて、
「お願い!人手が足りないの、入部してぇぇっ。」
その子に必死の形相で部活の勧誘を受けていた。
ちょっとでも告白!?と甘いことを考えたのがそもそも間違いだった。
「駄目?」
そんな困ったような見上げる視線を向けられたため、僕はあからさまに目を逸らした。
「入部どうこうより・・・その部はどんな部なわけ?」
「おおうっ、そうだった忘れてた。部の名前はね、きたん部っていうんだよ。」
「きたん・・・?」
「そう、漢字では奇譚部。でもそれじゃ、なかなか入部してくれる人少ないかなって思って、書くときはひらがなできたん部って書いてね。可愛いでしょ?」
そういって若松さんは笑った。いや、可愛いとかそういう問題はおいといて、
「活動内容とかは?」
「えへへ、驚く無かれ。この学校中の奇人変人を集める部なの。最終目標は宇宙人と会話する人を見つけること。」
目をきらきらさせて言ってはいるが何を言っているのか分かっているのだろうかこの人は。そんな人現実世界の普通の公立高校にいるかっ。
「なかなか突拍子も無い部だから学校側に認めてもらうの大変だったんだぁ。ホントはね入学したらすぐに活動始めようと思ってたの。でも昨日やっと非公認だけど部をつくれて部室も確保できたの。」
「よ、よく認められたね。」
「毎日しつこく職員室通って、校長先生とも仲良くなっちゃった。努力賞って感じかな。」
なんかとんでもないことに巻き込まれかけているきがする。高校は実家から離れ一人暮らしをはじめ、クラスにもそこそこ溶け込みようやく馴染んできたところだというのに。なんなんだ、これ。
「北条くん、帰宅部でしょ?」
「うん。」
「もう部活はいる気ないんだよね。」
「ま、まあ。」
「じゃあ明日から放課後第二理科準備室に集合ね。はい、鍵。」
僕の手には銀色の硬い小さな鍵が手渡された。
え、ええ、ちょっと待って!
その声は発せられることは無く、若松さんはすでに手を振って走り去っていった。
きたん部かぁ。奇人変人を集める・・・・・?あれ、ってことは僕もその奇人変人の一人ってことか?