城門の君主
「しかし、ここに再び訪れたと言うことは、また、闘う気があるということなのだな、エリアーノ=クルス」男は無造作に青年の名を呼ぶ
「・・・」
「沈黙は肯定と受け取ろうか、それでは、もう一度問おう、君は何のために生き、何の為にその剣をささげるのかと」
芝居がかった大仰なそぶりで、プロフェッサーは言う。
男は、一度も青年を見ない、終始背を向けたまま、この奇人こそ、何を見据え、何を目的とするのかわからぬまま、刻は刻まれる。
「それでは、再び君の騎士達を迎えに行き給え、いいや、彼女の方から訪れたか、まず、最初にかけるべき言葉を選び給え、その湖水の乙女に。」
「や、やぁ、久しぶりだねエメラルド、元気」その瞳を閉じた黄金の髪を持つ女性にかけられた言葉は不抜けたものだった。
すると彼女は、やおら、近づき、己が君主の前に一度跪くと、立ち上がり、容赦なく拳を入れた。一発、二発、三発と、その連撃はやまず。それは、もはや豪雨という名の暴力と化して襲う。
「フン、鈍っていたらどうしようかとおもったぞ、」
「あ、あのー、え、エメラルドさん?」
「あ!? 一度忠誠を誓った身だ。好きに使え、サファイアは知らん、が、貴様が戻ったのなら、飛んでくる、フン、言ったそばから、これだ、頭が痛い」
「マスター、マスター、マスター、ホンモノですよね。偽物じゃないですよね。マスターだ。マスターだ、もう離れないですぅ、って、この娘だれですか、マスターの浮気者ーって、位階が私より上です。でもでもマスターは譲れないです。再び、マスターに出会うために、声も気配も消してじっとしてたんですから」
「ええっと、マスター、これは、どういうことか、ご説明ねがえるんでしょうね?」原形を取り戻した白銀の乙女が問う。
「ええとキャスティさん、笑顔で青筋たてられると怖いんですけど」
「答えたくないのなら、私が、代わりにそれに答えようか、自分たちが生き延びるために妖精達を犠牲にするのが嫌だと逃げ出した。それこそ偽善、その為にダイアモンド、ルビー、トパーズはロストした。そうして、なぜ君は生きている。そうして、白銀の姫を連れているのかな。城門の君主」
「マスターを愚弄するな、狂人、それ以上は踏み込みすぎだぞ、魔術師。我らが妖精の女王を誑かした張本人が」
「はは、望んだのは彼女の方だよ、そうしないと、彼女の方がが壊れそうだったのだ。」
「それは、願い、そう純粋なる願いだったのだ。知っているはずだ」