表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「取り敢えずコミットしとく」その一言が、世界を止めた

作者:
掲載日:2026/03/03

 「『まあ、大丈夫だろう』……お前のその軽い気持ちが、何人の時間を奪ったか分かっているのか?」


 怒号が飛び交う開発現場のオフィス。

 ひっきりなしに鳴る電話。

 冷や汗が止まらない。


 「反省は後だ。慌てなくていいからログを確認していこう」

 先輩の声は、努めて明るかった。

 だが、その顔からは幾筋もの脂汗が浮かび上がっていた。


 「やばいっすよ……うちの会社の障害で『120万台のPCをシャットダウン』って、トレンド入りしちゃってます」

 SNS好きの愛ちゃんが、指を震わせながらスマホの画面を俺達に向けた。


 スマホを忌々しそうに一瞥した先輩の額に、青筋が浮かぶ。

 「お前は何がしたいんだ。早くそれをしまえ」

 「……はあい」


 愛ちゃんはしゅんとした表情で、スマホをだらりと下げる。


 俺は頭を抱えた。


 ……おかしい。

 本番相当の環境で実データを使ったテストを3回もやった。


 ……ありえない。

 こんな結果にはならないはずだ。


 俺はコミットログを追った。ん?


 「先輩」

 「なんだ」

 「これ見て下さい。マスターブランチに、TEST_TANAKAってブランチがマージされています。先輩のアカウントで、『取り敢えずコミットしとく』ってコメント付きで」


 「……俺? ああ、そうか。昨日の俺か。今の俺には、そんな記憶はないんだけどな」


 そう言って先輩は、ひどく遠い目で窓の外を眺めた。

 電話のベルは、まだ鳴り止まない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ