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裏側を覗く:キャラクター視点ストーリーズ  作者: アンドリュー・チェン


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17/18

アルブルナ視点: 魔法を描く少女。

私たちが初めて引き受けた仕事は、狼の討伐だった。


ある村が狼の群れに襲われ、家畜を次々と殺されていた。私たちは、その群れを退治するために雇われたのだ。


簡単な仕事のはずだった。


狼は魔物ではない。ただの動物だ。危険ではあるが、行動にはある程度の予測がつく。


――そう思っていた。


私たちは狼の群れを追跡し、巣穴を突き止めた。作戦を立て、攻撃の準備を整えた。これなら大丈夫だと、私たちは信じていた。


だが、狼たちは背後から襲いかかってきた。


私はパニックに陥った。


これまでの訓練は、すべて管理された環境で行われていた。呪文を何度も練習し、失敗すればやり直し、納得がいくまで完成度を高めることができた。


けれど、命を懸けた戦いは初めてだった。


最初に放った火球は外れた。二発目は、形を成すことさえできずに消えてしまった。


アデルグントが私を救ってくれた。


彼女は私とアルファの狼の間に飛び込み、跳びかかってきた狼を剣で迎え撃った。その際、腕に浅い傷を負った。大した怪我ではなかったが、傷は傷だ。


二頭目の狼が襲いかかる前に、アヴェルヒルダの槍がその身を貫いた。


戦いが終わる頃には、私は全身を震わせていた。


手の震えが、どうしても止まらなかった。


私は死ぬところだったのだ。


訓練でも、授業でもない。


現実の戦いで、本当に命を落としかけた。


アデルグントが私の肩をつかんだ。


「おい、大丈夫?」


「私のせいで、あなたを殺してしまうところだった」


「自分が殺されかけたんでしょ。私は平気よ」


彼女はそう言って、傷ついた腕を見せた。


「ほら、かすり傷」


私は、彼女の言葉を信じられなかった。


それでも、黙ってうなずいた。


アヴェルヒルダが、槍についた血を拭いながら近づいてきた。


「ためらったわね」


彼女は私を見て言った。


「わかってる」


「どうして?」


「怖かったから」


彼女はゆっくりとうなずいた。


「いいことよ」


私は目を瞬かせた。


「……いいこと?」


「恐怖は命を守ってくれる。何も恐れない人間から、先に死んでいくものよ」


そう言って、彼女は槍を鞘に収めた。


「大切なのは、恐怖を押し殺すことじゃない。恐怖の使い方を覚えること。恐怖に足をすくませるんじゃなくて、恐怖によって判断を研ぎ澄ませるの」


彼女の言っていることが、私にはよくわからなかった。


それでも、理解したふりをしてうなずいた。


その夜、私は寝袋の中で横になり、星空を眺めていた。


学ばなければならないことが、まだたくさんある。


私だけではない。


私たち全員が、そうだった。


それでも、私たちは一緒にいた。


今は、それだけで十分だった。


少なくとも、今は。


最初の数か月は、ささやかな仕事ばかりだった。


それが、あの頃を表すのにぴったりの言葉だった。


ささやかで、地味で、目立たない。


盗賊の出没する地域を通る商人を護衛し、時折現れる狼を追い払った。地下室に巣食う鼠を駆除し、畑を荒らすカラスを追い払った。農家の柵を修理するのを手伝い、村人たちと一緒に迷子になった子供を捜したこともある。


どれも華々しい仕事ではなかった。


伝説になるような功績もなかった。


けれど、それは私たちの仕事だった。


そして、冒険者として登録を済ませた私たちは、次の依頼を引き受けた。


家畜の失踪に関する調査だった。


一見すると、簡単な依頼に思えた。


森のはずれにある村で、ここ数週間のうちに牛が三頭も姿を消したという。村人たちは狼の仕業だと考えていた。私たちに群れを見つけ、退治してほしいということだった。


「簡単じゃない」


依頼内容を聞いたアデルグントが言った。


「簡単すぎるわね」


アヴェルヒルダはそう返したものの、依頼を断ることはなかった。


私たちは足跡を追い、丘陵地帯にある洞窟へとたどり着いた。


だが、地面に残されていたのは狼の足跡ではなかった。


大きすぎた。


深すぎた。


そして、何よりも――何かが決定的におかしかった。


「いったい、何がいるの?」


アデルグントが尋ねた。


「わからない」


私は正直に答えた。


私たちは慎重に洞窟へ足を踏み入れた。


手にした松明が、湿った岩壁に揺らめく影を映し出す。空気には血の臭いが充満し、それに混じって、嗅いだことのない異様な臭気が漂っていた。


奥へ進むほど、胸の奥に不安が広がっていく。


そして、私たちはそれを目にした。


その生き物は、熊に匹敵するほど巨大だった。


体は毛皮ではなく鱗に覆われ、口の中には鋭い牙が何列にも並んでいた。松明の光を受けた目には、獣とは思えない知性が宿っている。


その目を見た瞬間、背筋にぞっとするものが走った。


仲間に警告する間もなかった。


魔物が突進してきた。


私は手を掲げ、水の魔法を放った。


水流が魔物の肩に直撃する。


だが、動きをわずかに鈍らせることすらできなかった。


魔物は咆哮を上げ、そのまま突き進んでくる。


アデルグントが迎え撃った。


暗闇の中で剣が閃き、刃が魔物の体を切りつける。しかし、傷は浅かった。


反撃として振るわれた爪が、後退しようとした彼女の腕を捉えた。


血が石壁に飛び散った。


「アデルグント!」


アヴェルヒルダが前に出た。


魔物の目を狙い、槍を鋭く突き出す。


だが、魔物は頭をひねった。槍先は頭蓋をかすめただけで、致命傷を与えることはできなかった。


次の瞬間、魔物がアヴェルヒルダへと向き直った。


「下がって! いったん態勢を――」


私は叫んだ。


しかし、最後まで言い終えることはできなかった。


魔物がアヴェルヒルダに体当たりした。


彼女の体が宙を舞い、洞窟の壁に叩きつけられる。


後頭部が岩にぶつかった。


彼女は声も上げず、その場に崩れ落ちた。


背筋が凍った。


負傷した腕をかばいながらも、アデルグントは必死に戦い続けていた。だが、魔物の一撃は彼女を軽々と弾き飛ばした。


まるで、彼女が羽のように軽いかのように。


そして、魔物が私に狙いを定めた。


私は思いつく限りの呪文を放った。


水流を顔に、胸に、脚に叩きつける。


それでも、魔物の進撃を止めることはできなかった。


私は後ずさった。


背中が洞窟の壁にぶつかった。


もう、逃げ場はなかった。


魔物が私に覆いかぶさるように迫ってきた。


熱く、悪臭を放つ息が顔にかかる。牙は、もう目と鼻の先だった。


生まれて初めて、私は自分に言い聞かせることができなかった。


――きっと大丈夫だ、と。


ここで死ぬんだ。


そのとき、アデルグントの声が思考を切り裂いた。


「アルブルナ! 逃げて!」


彼女は石を拾い、魔物の目に向かって投げつけた。


石が命中する。


魔物は咆哮を上げ、私からアデルグントへと注意を向けた。


その一瞬の隙に、私は動いた。


壁際から転がるように離れ、仲間たちのもとへ駆け寄る。


アデルグントはひどい出血を起こしていた。アヴェルヒルダも、まだ意識を取り戻していない。


それでも、ここに留まるわけにはいかなかった。


「洞窟から出るわよ!」


私は叫んだ。


アデルグントと二人で、どうにかアヴェルヒルダを引きずりながら出口へ向かった。


一歩進むだけでも、ひどく苦しかった。


背後からは魔物の咆哮が響き続けている。


ようやく洞窟の外へ転がり出たとき、私は安堵のあまり、その場に崩れ落ちそうになった。


目の前には森が広がっていた。


木々の枝葉の間から、傾き始めた日の光が差し込んでいる。


ほんの一瞬だけ、私たちは逃げ切れたのだと思った。


だが、次の瞬間。


魔物が洞窟から姿を現した。


安堵は、一瞬で消え去った。


魔物は頭を低くし、私たちを見据えた。


自分の縄張りから逃げ出した獲物を、わざわざ追う必要などないとでも言いたげに、悠然とこちらへ近づいてくる。


その爪が地面をえぐった。


アデルグントは、立っているのもやっとだった。


アヴェルヒルダは、まだ意識を失っている。


そして、私のツァウフも、すでに大半を使い果たしていた。


私はもう一度、呪文を唱えた。


水流が魔物の鱗にぶつかる。


しかし、何の効果もなかった。


私たちに、あの魔物は倒せない。


逃げ切ることもできない。


それでも、仲間を見捨てることだけはできなかった。


魔物が跳びかかってきた。


私は横へ飛び、爪をかろうじてかわした。


爪が地面を砕く。


砕けた土や石が飛び散り、後ずさる私の腕に激痛が走った。


必死に逃げ道を探す。


けれど、どこにもなかった。


魔物が再び私に向き直る。


私は震える指を動かし、なんとか魔法を呼び起こそうとした。


何も起こらなかった。


ツァウフは尽きていた。


そして、私の体も限界に達していた。


私は何年も、誰かを守れるほど強くなるために訓練を続けてきた。


努力を重ねれば、いつかは強くなれる。


いつかは、目の前で誰かが苦しんでいるのに、何もできずに立ち尽くすようなことのない人間になれる。


そう信じていた。


なのに、今の私はどうだ。


アデルグントも、アヴェルヒルダも救えない。


自分自身の命さえ、守れない。


魔物が爪を振り上げた。


私は目を閉じた。


そのとき、声が聞こえた。


「狼よりも強い何かが、ここを通ったようだな」


声は、開けた場所の向こうから聞こえてきた。


もう一人が答える。


落ち着いた、何でもないことのような声だった。


「なら、追いましょう」


木々の向こうから、足音が近づいてくる。


私がそちらを振り向くより早く、誰かが叫んだ。


「行け!」


目を開けた瞬間、小さな影が開けた場所を駆け抜けた。


――陶器の人形だった。


あり得ないほどの速さで、私に向かって走ってくる。


魔物が爪を振り下ろした。


何が起きているのか理解する間もなく、人形は私と魔物の間に飛び込んだ。


衝撃は来なかった。


代わりに、鋭い金属音が森に響いた。


黒いインクが人形の小さな体を包み込み、鎧の形を成していた。


魔物の爪が、その硬化した表面を激しくこする。


しかし、人形は微動だにしなかった。


私は、ただ呆然と見つめていた。


魔物は、今まさに私を殺そうとしていた。


その攻撃を、この小さな生き物が止めたのだ。


一瞬、すべての音が消えたように感じた。


そこで初めて、私は開けた場所の端に立つ少女に気づいた。


見慣れない衣装をまとい、手には絵を描くためのペンを持っている。


その隣には、もう一人の若い女性が立っていた。魔物の動きを鋭く見据え、逃がすつもりなどないというような目をしている。


少女は人形を見た。


それから、その体を覆う黒い鎧へと視線を移した。


彼女自身も、私と同じくらい驚いているようだった。


ほんの少し前まで、同じインクが彼女の肩や腕を包み、鎧を形作っていた。


ところが今、それは彼女から離れ、人形を守るために動いていた。


まるで、自分の意思でそう決めたかのように。


目の前で起きていることが、どんな魔法なのか、私にはまったくわからなかった。


ただ一つ、確かなことがあった。


この少女と人形が、私の命を救ってくれたのだ。


少女が一歩前へ出て、ペンを構えた。


魔物が咆哮を上げ、彼女に向き直る。


それでも、少女はひるまなかった。


彼女は空中に、素早く線を描いた。


すると、刃が現れた。


私は目を見張った。


インクが鋼のような物質へと変わり、驚くほどの速さで魔物へ飛んでいく。


魔物は身をひねって攻撃をかわした。


しかし、少女はすでに次の絵を描き始めていた。


盾が現れる。


続いて、風が渦を巻き、炎が弾けた。


彼女の魔法は、私がこれまで見てきたどんな魔法とも違っていた。


私は何年も魔法の詠唱を学んできた。


呪文の重要性も、ツァウフの流れを慎重に制御する必要性も知っている。


それなのに、この少女はただ描くだけだった。


そして、彼女が描いたものは現実になった。


もう一人の女性も動き出した。


正確な攻撃を繰り出して魔物の注意を引きつけ、少女が攻撃する隙を作っている。


人形も、その創造主の隣で戦っていた。


魔物の攻撃を受け止め、反撃の機会を作り出す。


まるで、一言も交わさずとも互いの考えがわかっているかのようだった。


その戦いを見て、私はようやく理解した。


私たちは、あまりにも力の差がありすぎる相手と戦っていたのだ。


私たち三人を死の寸前まで追い詰めた魔物が、二人の女性と一体の人形を相手に、追いつくことさえできずにいた。


アデルグントが、どうにか剣を持ち上げた。


私は彼女の方を向いた。


私たちは一瞬だけ視線を交わした。


何も言わなかった。


けれど、互いに同じことを考えているのがわかった。


――私たちは救われたのだ。


魔物の脇腹に攻撃が命中し、その巨体がよろめいた。


その間に、槍を持った女性――アヴェルヒルダが、わずかに身じろぎした。彼女はゆっくりと上体を起こそうとしている。


私も、残された力をかき集めた。


彼女たちだけに戦わせるわけにはいかない。


ほとんど力が残っていなくても、まだできることはあるはずだ。


私は手を掲げ、最後の水の魔法を放った。


水流が魔物にぶつかる。


魔物が少女へと向き直ろうとした、その一瞬。


攻撃が、わずかに注意をそらした。


人形が前へ飛び出した。


小さな体が魔物の脚に激突する。


続いて少女が素早くペンを走らせた。


黒い刃が空中に形作られ、体勢を立て直す間もない魔物へと叩きつけられた。


魔物は咆哮を上げ、よろめいた。


そして、ついに地面へと倒れ込んだ。


数秒間、誰も動かなかった。


やがて、少女がペンを下ろした。


開けた場所に静寂が戻る。


聞こえるのは、私たちの荒い息遣いと、頭上で葉がこすれ合う音だけだった。


私は膝から崩れ落ちた。


疲労で体が震えていた。


アデルグントも、負傷した腕を押さえながら、私の隣に座り込む。


アヴェルヒルダは地面に横たわったまま、少しずつ意識を取り戻しつつあった。


私たちは、生きていた。


それが、まだ信じられなかった。


少女が近づいてきた。


つい先ほどまで激しい戦いを繰り広げていたとは思えないほど、彼女の表情は落ち着いていた。


人形も彼女のそばへ戻ってくる。


午後の日差しが、そのボタンのような目に反射していた。


私は、いつの間にか人形を見つめていた。


こんなに小さい。


こんなにも無害そうなのに。


それでも、この人形は、ためらうことなく私と死の間に立ちはだかってくれた。


お礼を言いたかった。


どこから来たのか、どうやって私たちが倒せなかった魔物の攻撃を止めたのか、知りたかった。


そして何より――抱きしめてみたかった。


少女が私に目を向けた。


私が何を考えているのか、気づかれているのだろうか。


そう思った次の瞬間、私は思いついたことをそのまま口にしていた。


「ねえ、私もその子と友達になっていい?」


少女は目を瞬かせた。


私は人形を見て、それから少女へと視線を戻した。


「だって……その子が私の命を救ってくれたから」


少女は小さな相棒を見下ろした。


人形は首を傾け、ボタンの目を私に向けている。


短い沈黙のあと、少女はかすかに微笑んだ。


「本人に聞いてみるね」


そう言って、彼女は答えを待った。


人形が、小さな腕を一本持ち上げた。


私は、それを「いいよ」という返事だと受け取ることにした。


そして、洞窟に入ってから初めて、恐怖以外の感情を覚えた。

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