アルブルナの視点: 魔術師と剣士。
私は下級貴族の家に生まれた。
貧しくはない。権力もない。ただ……それなりに体面を保てる家だった。こぢんまりとした屋敷を構え、数人の使用人を雇い、もっと格上の家々が開く集まりに時折招かれる。そんな家柄だ。
私たちは、重要人物の遠縁にすぎなかった。系図の片隅に記される程度の存在。認められるには十分だが、決して記憶に残るほどではない家だった。
私は幼い頃から、そのことを理解していた。母がそう教えたからだ。
「あなたは幸運なのよ」
格上の家を訪ねる前、母は私の襟を整えながら、よくそう言った。
「あなたには名前がある。身分もある。平民には決して得られない機会が、あなたにはあるのよ」
母は、決して口にはしなかった。
――けれど、あなたは重要な人間ではない。特別でもない。半分しか認めてもらえないのなら、二倍努力しなければならない。
そんなことは、誰に教わるまでもなく、自分で学んだ。
魔法は、私にとって簡単だった。
簡単すぎた、と言ってもいいかもしれない。
ほかの子供たちがろうそくに火を灯したり、小石を動かしたりするのに苦労している頃、私はすでに水を操り、初歩的な水の魔法まで使いこなしていた。
家庭教師たちは私を褒めた。両親は安堵の表情を浮かべ、互いに視線を交わした。その目には、安堵だけではない、希望のようなものも宿っていた。
我が家から魔術師を。本物の魔術師を。
いかさま師でも、まがい物でもない。もっと上を目指せる人間。家名を高めてくれる人間。
その期待は第二の皮膚のように私の肩にまとわりついた。私は毎日、それを身にまとっていた。
***
私たちが出会ったのは、六歳のときだった。
彼女の父親は剣士だった。貴族ではなかったが、確かな実力を持ち、周囲から尊敬されている人物だった。私の家よりも格上の家に長年仕え、技量と戦いで流した血によって、自らの地位を築き上げた男だ。
彼は剣術の演武を披露するために我が家へ招かれ、娘を連れてきていた。
初めて彼女を見たときのことは、今でも覚えている。
膝には擦り傷があり、髪は乱れていた。木剣を、まるで自分の腕の一部であるかのように握っていた。
彼女は鋭い目で私を見つめ、尋ねた。
「私と練習しない?」
私は剣を握ったことがなかった。握る必要もなかった。
それでも、彼女の表情に何かを感じ、私は「いいよ」と答えた。
彼女は私をこてんぱんに打ち負かした。それから笑い、地面に倒れた私に手を差し伸べてくれた。
「ひどいね」
彼女が言った。
「あなたは魔法がもっとひどいけどね」
私は言い返した。
彼女はにやりと笑った。
「じゃあ、おあいこね」
それ以来、私たちはいつも一緒だった。
私たちの違いが、二人の間に壁を作ることはなかった。
私は魔術師だった。彼女は剣士だった。
私は詠唱と、体内を流れるツァウフの扱いを学んだ。彼女は剣の構えや斬撃、そして相手の動きを読む技術を学んだ。
それでも、私たちは毎日一緒に訓練した。庭で、訓練場で、屋敷の向こうに広がる畑で。
私が呪文の練習をしていると、彼女はそばで見物していた。時には役に立つ助言をくれたが、わざと私を苛立たせるようなことを言うこともあった。
「あなたの水流、曲がってるよ」
「水流はまっすぐじゃなくてもいいの」
「でも、まっすぐなほうがかっこいいじゃない」
私は彼女に水の魔法を放った。彼女は笑いながら、それをかわした。
反対に、彼女が剣の稽古をしているときは、私がその様子を眺めた。彼女が私の魔法に口を出すのと同じ調子で、私は彼女の足運びにあれこれ口を出した。
「足を開きすぎじゃない?」
「こうすると力が出るの」
「カニみたい」
彼女は私に向かって剣を振った。私は盾を召喚した。
結局、二人とも息を切らし、笑いながら地面に倒れ込むことになった。
私たちは一緒に学んだ。
私は彼女に魔法の基礎を教えた。実際に使いこなすには足りなくても、仕組みを理解するには十分な程度に。
彼女は私に剣術の基礎を教えた。剣で戦うには足りなくても、魔法が使えなくなったときに自分の身を守れる程度には。
***
私たちが十二歳になったとき、一つの決断をした。
二人でアカデミーに進学する。そこで私は魔法を、彼女は剣術を学ぶのだ。
魔術師と剣士。
アルブルナとアデルグント。
アカデミーは、私が想像していたとおりの場所でありながら、予想とはまるで違う場所でもあった。
それは野望の記念碑のように、首都にそびえ立っていた。
淡い色の石造りの塔。光を捉えるアーチ型の窓。王国各地から集まった学生たちで賑わう中庭。
門だけでも、私の実家の屋敷全体より高かった。
私は荷物を肩に掛け、緊張で胸がいっぱいになりながら、その門の前に立っていた。人生で初めて、自分がひどく小さな存在に思えた。
隣に立つアデルグントは、少しも小さく見えなかった。
彼女は何かに飢えているようだった。
「準備はいい?」
彼女が尋ねた。
「いいえ」
私は正直に答えた。
「よし」
彼女はにっこり笑った。
「私も」
私たちは一緒に門をくぐった。
________________________________________
最初の数週間は、オリエンテーションやクラス分けの試験、そして自分がどれほど多くのことを知らないのか思い知らされる恐怖の連続だった。
私は自分に才能があると思っていた。長年の個人指導と生まれ持った適性があれば、優秀な学生たちの中でも上位に入れると考えていた。
けれど、私は間違っていた。
アカデミーには天才があふれていた。
金に糸目をつけず、最高の家庭教師から学んできた名門貴族の子供たち。並外れた決意で道を切り開いてきた平民たち。私が一度も見たことのない技術や、まったく異なる原理に基づく魔法の伝統を持つ外国の学生たち。
そして、その中に私がいた。
誰も名前を知らない下級貴族の娘。人生をかけてこの場所に備えてきた人々に追いつこうと、必死にもがいていた。
アデルグントは、すぐに頭角を現した。
戦士たちの中に自分の居場所を見つけ、二倍近い体格の学生とも手合わせをした。彼女の限界を押し広げようとする教官たちから学び、毎日、全力で訓練に取り組んだ。
彼女は傷だらけで疲れ果てながらも、満足そうな顔で私たちの部屋に戻ってきた。
一方、私は苛立ちと疲労を抱えて戻ってきた。
自分の知識に自信が持てなくなり、何もかもがわからなくなっていた。
「自分に厳しすぎるよ」
ある夜、上級詠唱の教科書と格闘している私を見て、アデルグントが言った。
「厳しすぎるわけじゃない」
私はつぶやいた。
「遅れているんだ。ここの人たちはみんな……」
「みんな、あなたにはなかったものを持っていたんだよ」
彼女は私の隣に座り、肩を軽く突いた。
「あなたはちゃんと追いついてる。ただ、それを認めるには頑固すぎるだけ」
言い返したかった。
けれど、彼女は正しかった。たいていの場合、彼女は正しかった。
***
魔法の歴史は、私が想像していたものとは違っていた。
私は物語を聞いて育った。おとぎ話と言ってもいい。
一言で嵐を呼び起こす魔術師。山を平らにする魔法使い。
伝説の中にしか存在しないような魔法。現実とはかけ離れた力。
アカデミーで受ける魔法史の授業は、私のお気に入りだった。
教授が好きだったわけではない。彼は、一言話すたびに金貨を一枚失うとでも思っているかのような、話し方のひどく遅い老人だった。
私が興味を持ったのは、彼の教える内容だった。
魔法の起源。詠唱の進化。そして、私たちが当たり前のように使っている術式が、なぜ現在の形になったのか。
私は講堂で羊皮紙に羽根ペンを走らせていた。その隣では、アデルグントが居眠りをしていた。
彼女は理論に興味がなかった。剣こそが彼女の言葉だった。
それでも、私が頼んだから、彼女は一緒に来てくれた。
「古代人は」
教授がゆっくりと語り始めた。
「現代の私たちとは異なる方法で魔法を使っていた」
私は少し背筋を伸ばした。魔法史は好きな科目だった。そして、まさにこの話を聞くのを待っていたのだ。
「人間が魔法を使い始めた最初期には、すべての呪文が神の名から始まっていた。ただの神ではない。魔法の神、エニンシガルの名だ」
教授は黒板にその名を書いた。
「我々の聖なる伝承によれば、ザハルスはエニンシガルに魔法の管理を委ねた。そしてエニンシガルは、魔法の母カッソニアに魔法を授けた。こうして、人間が使うすべての呪文は、彼の名を唱えることから始まるようになったのだ」
教授は少し間を置き、私たちが書き写す時間を与えた。
「神聖な詠唱は、敬意を示すためのものだ。術者は魔法を使う前に、その管理を委ねられた神の存在を認める。それに続いて、どのような魔法を起こすのかを示し、接続句を唱え、最後に魔法を発動させる命令を加える」
教授は神の名の下に、具体例を書き込んだ。
神聖な詠唱 → 意図する魔法の効果 → 接続句 → 発動命令
「これは、古代の儀式構造を簡略化したものだ」
教授は説明を続けた。
「元の言葉は、宗教儀式や古代の魔法伝統を通じて受け継がれてきた、神聖な文法形式に従っている」
私はノートにエニンシガルの名を記し、下線を引いた。
「では、すべての呪文がエニンシガルから始まるのですか?」
一人の学生が尋ねた。
「そうだ。火を呼び起こす場合も、水を操る場合も、障壁を張る場合も、傷を癒やす場合も、最初に彼の名を唱えなければならない。魔法の効果は変わっても、神聖な詠唱は変わらない」
私はその考えに魅了された。
どのような魔法であろうと、すべては同じ神への敬意から始まる。何世代にもわたって受け継がれてきた伝統が、アカデミーで学ぶ魔法と、人間文明の黎明期とをつないでいるのだ。
「しかし、この方法には弱点があった」
教授はそう続けた。
彼は黒板の例を消し、学生たちの方へ向き直った。
「古代の詠唱は、声に出して唱えられていた。大戦の時代には、これが致命的な弱点となった。敵の魔術師は詠唱を聞けば、どのような呪文が使われるのかを予測し、術者が詠唱を終える前に対抗手段を準備できたのだ」
周囲の学生たちが、少しずつ真剣な表情になっていった。
「攻撃する前に、自分の手の内を明かすようなものだ。火の呪文を唱えれば、相手は水の障壁を張る時間を得る。氷の呪文なら、寒さに備えることができる。どれほど強力な魔術師であろうと、敵に手の内を読まれれば敗れることがある」
アデルグントは眠気と戦いながら、ちらりと私を見た。
珍しく、彼女も話を聞いていた。
「当時の魔術師たちは、解決策を探した。十分な集中力と意志の力があれば、詠唱せずとも魔法を使えるのではないかと考え、完全な無詠唱に挑戦したのだ」
教授は首を横に振った。
「しかし、失敗した。言葉は、都合に合わせて捨てられる宗教的な慣習にすぎなかったわけではない。言葉は魔法に形と方向を与える錨だった。それを失えば、呪文は具現化する前に消散してしまう」
私は、自分が無詠唱に挑戦したときの惨めな失敗を思い出した。
鼻血。家庭教師からの説教。そして、才能だけでは越えられない限界があるという、恥ずかしい気づき。
教授は黒板に向き直り、大きく書いた。
妥協案。
「やがて彼らは、ほとんど聞き取れないほどのささやき声でも魔法を唱えられることを発見した。言葉を発する必要はあるが、術者本人にしか聞こえないほど小さな声でよい。これによって、魔法を用いた戦いのあり方は一変した」
私は羽根ペンを持つ手を止め、身を乗り出した。
「ささやき声なら、戦場の向こう側まで届くことはない。敵に詠唱を聞き取られることもない。魔術師は手の内を明かさずに魔法を使い、警告を与えることなく攻撃し、状況に応じて戦い方を変えられるようになったのだ」
教授はかすかに笑った。
「こうして、ささやき詠唱が標準となった。今ではすべてのアカデミーで教えられ、魔術師なら誰もが実践し、戦場では当然の技術として求められる。君たちも学ぶことになる。習得しなければならない。さもなくば、命を落とすことになるだろう」
私は、すぐに習得した。
もちろんだ。
魔法は私にとって自然なものだった。ささやき詠唱も、身につけるべき技術が一つ増えただけにすぎない。
数週間もすると、私は息に混じるほどの小さな声で初歩的な呪文を唱えられるようになった。唇はほとんど動かない。それでも、私の意図は魔法にはっきりと伝わっていた。
一方、アデルグントは苦戦していた。
彼女はもともと魔法が得意ではなかった。初歩的な呪文なら何とか使えたものの、ささやき詠唱には、彼女に足りない精密さが求められた。
声が大きすぎたり、小さすぎたり、強調する箇所を間違えたり。そのたびに呪文は不発に終わるか、爆発するか、あるいはまったく予想外の現象を引き起こした。
それは……苛立たしいことだった。
彼女にとってではない。
私にとってだ。
「もう一度」
私は、もう百回目かと思うほど繰り返していた。
アデルグントはため息をつき、顔にかかった髪を払いのけた。
「やってるってば」
「もっと集中して」
「私はあなたじゃないの、アルブルナ」
彼女の声が鋭くなった。
「誰もがあなたみたいな才能を持って生まれたわけじゃない」
その言葉は、平手打ちのように私の胸に響いた。
謝ろうと口を開いたが、その頃には彼女はもう笑っていた。顔から苛立ちが消えていた。
「気にしないで」
彼女は私の肩に自分の肩をぶつけた。
「自分がこれを苦手なのはわかってる。でも、別に必要ないでしょ? 私には剣があるんだから」
反論したかった。
魔法は大切だと言いたかった。諦めずに練習すれば、いつかできるようになると伝えたかった。
けれど、私は彼女を知っていた。
彼女が私と同じように魔法に頼ることは、きっとない。彼女には彼女の道があるのだ。
だから私は、ただ微笑んで言った。
「じゃあ、あなたが剣を振り回している間、私が守ってあげるしかないね」
「私を守る?」彼女は鼻で笑った。「手合わせのたびに、あなたを助けているのは私の方でしょ」
「あなたに勝たせてあげてるのよ」
「そう思いたいのね」
私は笑った。彼女も笑った。
そして、苛立ちは消えていった。
それが、私たちだった。
二人で一つ。魔術師と剣士。
大切なところでは何もかも違っていた。それでも、なぜか私たちは、これ以上ないほど相性がよかった。
勉強と訓練、そして未来について語り合う深夜の日々を重ね、四年が過ぎた。
そして、突然、それは終わった。
私たちはアカデミーの中庭に立ち、卒業証書を手にしていた。これから先の未来は、まだ決まっていなかった。
周囲では学生たちが家族や友人と卒業を祝っていた。すでに貴族の家に仕える地位を得た者もいれば、自分の領地へ戻る者もいた。軍に入ることを決めた者も数人いた。
アデルグントと私は少し離れた場所に立ち、賑やかな光景を静かに眺めていた。
「それで」
彼女が口を開いた。
「これから、どうする?」
私はその問いについて考えた。
宮廷魔術師の職を提示されていた。立派で、安定した、申し分のない仕事だった。家族も誇りに思うだろう。母もようやく、自慢できるものを手に入れることになる。
けれど、魔法を理解しようともせず、学ぼうともしない貴族たちのために、毎日魔法を使い続ける。
そう考えると、その仕事は檻のように感じられた。
「わからない」
私は正直に答えた。
「四年間、理論を学んできた。でも、実際に魔法を使ったことは一度もない。本当に何かの役に立てるような使い方はね」
アデルグントはうなずいた。
「私も同じ。一生訓練してきたのに、本当の戦いを経験したことがない。本物の魔獣と戦ったこともない。私は……」
彼女は言葉を探すように口を閉ざした。
「自分を試したことがない」
私は彼女の言葉を継いだ。
「そう」
私たちは黙って立ち、アカデミーの壁の向こうへ沈んでいく夕日を眺めた。
やがて、アデルグントが私に向き直った。
その目には、私がよく知っている考えが輝いていた。
「旅をしよう」
彼女は言った。
私は瞬きをした。
「旅?」
「一緒に国中を回るの。いろんな町を見て、いろんな魔獣と出会って、いろんな人に会う。実戦経験を積んで、もっと強くなる」
彼女はにっこり笑った。
「ここで教えられることは全部学んだ。でも、現実の世界は別のことを教えてくれるはずよ」
私は考えた。
宮廷での地位。家族の期待。選べば手に入る、安全で予測可能な未来。
そして、開かれた道を思い浮かべた。
見知らぬ地平線。まだ想像もできない冒険。
「私たちは名声を求めているわけじゃない」
私はゆっくりと言った。
「そうね」
「世界を救おうとしているわけでもない」
「そうね」
「ただ……世界を自分の目で見てみたい。それだけの、二人の若い女性よ」
アデルグントはうなずいた。
「そのとおり」
私は微笑んだ。
「それなら、行こう」
彼女は私の肩に腕を回し、ぐっと引き寄せた。
「そう言ってくれると思ってた」
「何もわかっていなかったくせに」
「わかってたよ」
彼女は私をさらに強く抱きしめた。
「あなたは檻の中で満足するような人じゃない。私と同じ。外の世界に何があるのか、見てみたいんでしょ」
私は否定しなかった。
彼女の言うとおりだったから。
***
私たちは、酒場でアヴェルヒルダと出会った。
それは劇的な出会いではなかった。予言も、劇的な救出も、運命がぶつかり合うような出来事もなかった。
ただ、混み合った宿屋で座る場所を探していた、三人の疲れた旅人がいただけだ。
酒場は満員だった。席はすべて埋まり、隅という隅まで人で占められていた。
アデルグントと私は戸口に立ち、どこか座れる場所がないかと室内を見回した。
「あそこ」
アデルグントが顎で示した先には、隅のテーブルに一人で座る女性がいた。壁には槍が立てかけられ、彼女の前にはシチューの入った器が置かれていた。中身は半分ほど残っていた。
「一人みたいだね」
私は言いかけた。
「でも……」
アデルグントは、すでに歩き出していた。
私はその後を追った。なぜだか私たちは、いつも必要な場所にたどり着いてしまうのだ。
「相席してもいい?」
アデルグントは、尋ねると同時に椅子を引いた。
女性が顔を上げた。
鋭い目だった。一目見ただけで、こちらのすべてを見抜こうとするような目。武器、服装、立ち方、動き方。
彼女は私たちより数歳年上に見えた。手には硬いまめができていて、その落ち着きは生まれつきのものというより、経験を重ねて身につけたもののように感じられた。
「どうぞ」
彼女は言った。
私たちは席につき、食事を注文した。しばらくは黙って食べていた。
やがて、女性が口を開いた。
「旅人?」
「冒険者よ」
アデルグントはそう答えた。まだ正式な冒険者ではなかったけれど。
女性は眉を上げた。
「冒険者? 登録はしていないみたいね」
私は目を瞬かせた。
「どうしてわかるの?」
「装備を見ればわかる。きれいすぎるし、新しすぎる。訓練は積んでいるけれど、実際の仕事はしていない」
彼女はシチューを一口食べた。
「私はアヴェルヒルダ」
「アデルグント。こっちはアルブルナ」
アヴェルヒルダは私に目を向けた。
「魔術師?」
「そうよ」
彼女は次にアデルグントを見た。
「剣士?」
「そう」
アデルグントが答えた。
アヴェルヒルダは背もたれに身を預け、私たち二人を観察した。
「妙な組み合わせね。どういう経緯で一緒になったの?」
私たちは彼女に話した。
すべてを打ち明けたわけではない。子供時代や家族のこと、胸に抱いている夢のすべてを話したわけでもない。
それでも、必要なことは伝えた。
アカデミーで訓練を積み、世界を見たいと願っている二人の女性。理論を学ぶだけの日々に飽き足らず、実際の経験を求めている二人の女性。
アヴェルヒルダは静かに耳を傾けた。
私たちが話し終えると、彼女はしばらく黙っていた。
やがて口を開いた。
「私は一人で旅をしている。もう一年くらいになるかな。時々……寂しくなることもある。それに、いつだって危険がつきまとう」
彼女は少し間を置いた。
「しばらく一緒に旅をしない? お互いにうんざりしないでいられるか、試してみようよ」
アデルグントはにっこり笑った。
「私、この人好き」
私はため息をついた。
「あなたは戦える人なら誰でも好きでしょ」
「一緒についてこられる人が好きなの」
アヴェルヒルダは私たちを見比べた。目元にかすかな笑みが浮かんでいた。
「私、こんなことに付き合うことになるの?」
「残念ながら」
私が答えた。
「幸運なことに、でしょ」
アデルグントが訂正した。
こうして、私たちは三人になった。
***
アヴェルヒルダは、私たちとは違っていた。
アデルグントは大胆で無鉄砲だった。いつも先頭を切って進み、自分の直感と剣を信じていた。
私は慎重で、計算高かった。三歩先を考え、準備と正確さを重視した。
私たちはそれなりに互いを補い合っていたが、二人とも……理想主義者だった。
訓練場や講義室で、物事がどうあるべきかを学んできた。そんな人生を送ってきたのだ。
一方、アヴェルヒルダは、物事が実際にはどうなっているのかを知っていた。
彼女は、私たちがこれまで必要としたことのない実用的な知恵を身につけていた。
物資の値段を交渉する方法。天気を読む方法。泊まる場所がないときに、雨風をしのげる寝場所を見つける方法。
どの魔獣なら戦う価値があり、どの魔獣なら避けるべきかも知っていた。
彼女は、生き延びる術を知っていた。
「考えすぎだよ」
あるとき、私が洞窟を攻略する手順を一時間もかけて考えていると、彼女はそう言った。
「とりあえず入って、何が起きるか見てみればいい」
「それで人は死ぬのよ」
私が言い返すと、彼女は肩をすくめた。
「それで人は学ぶんだよ」
彼女は私たちよりも口数が少なく、感情を表に出さない人でもあった。
自分の過去について語ることはなく、私たちも尋ねなかった。
けれど、夜が更け、焚き火の勢いが弱まり、アデルグントが眠りについたあと、彼女が星空を見つめていることがあった。
そんなとき、彼女の目には何か重いものが宿っていた。
私にも覚えのある、何かが。
私は決して尋ねなかった。
理解していたからだ。
語る準備ができるまで、胸の内にしまっておくべき物語もある。
***
冒険者になろうと提案したのは、アヴェルヒルダだった。
その頃、私たちは数週間にわたって一緒に旅をしていた。
町から町へと移動しながら、見つかる範囲で小さな仕事を引き受けていた。商人の護衛をしたり、地下室に出る害獣を駆除したり。食事と宿代をどうにか賄える程度の仕事ばかりだった。
ある晩、私たちは焚き火を囲んで座り、ほとんどジャガイモだけの食事をとっていた。
そのとき、アヴェルヒルダが口を開いた。
「冒険者にならない?」
アデルグントは食べる手を止めた。
「私たち、もう冒険者でしょ?」
「違うよ。私たちは、金をもらって時々何かを刺している旅人にすぎない」
アヴェルヒルダは棒で火をつついた。
「私が言っているのは、本物の冒険者。正式に登録して、ギルドに所属するの」
私は眉をひそめた。
「冒険者ギルド? あそこって……」
「人手不足で、組織もまとまっていなくて、いろいろ問題だらけ?」
アヴェルヒルダは肩をすくめた。
「そう。でも、仕事を探すには一番いい場所でもある。魔獣討伐、護衛任務、ダンジョン攻略。ちゃんと稼げるし、経験も積める仕事だよ」
私は考えた。
冒険者ギルドの評判は、決してよいものばかりではなかった。
ほかの誰もが引き受けたがらない仕事を扱う場所。危険で、先の読めない仕事ばかりが集まる場所。そして、報酬のために命を懸ける覚悟のある者たちが集う場所。
それでも、冒険者ギルドには利点があった。
旅を続けながら経験を積み、自分たちの能力を高められる。
そして、自分たちの進む道を見つけることもできるかもしれない。
「本気なの?」
私は尋ねた。
「いつだって本気だよ」
アヴェルヒルダはまっすぐに私を見た。
「二人とも世界を見たいんでしょ? でも、旅にはお金がかかるし、危険もある。ギルドに入れば、旅を続ける手段も、生き延びるための手段も手に入る」
アデルグントは、すでに笑顔になっていた。
「私は賛成!」
私は彼女を見た。それからアヴェルヒルダを見た。
そして、二人の間でぱちぱちと燃える焚き火に目を向けた。
「一緒に、よね?」
私が尋ねると、二人は同時に答えた。
「もちろん」
それで決まりだった。
***
ギルドホールは、私が想像していたものとは違っていた。
私はもっと壮大な建物を想像していた。大理石の柱に、高くそびえる天井。そこにいるだけで重要な場所だとわかるような、立派な建築物を。
ところが、実際に見つけたのは町の外れにある、ずんぐりとした建物だった。
壁は風雨にさらされ、扉は蝶番が歪んで少し傾いていた。
「すばらしい建物だね」
アデルグントは、失望を隠そうともせずに言った。
「見た目より実用性ってこと」
アヴェルヒルダが答え、私たちを中へ促した。
中は冒険者でごった返していた。
斧を持った髭面の男たち。弓を携えた細身の女性たち。そして、私たちと同じように、何をすればいいのかわからないといった顔の若い新入りたち。
壁の一面には掲示板があり、依頼書がびっしりと貼られていた。紙は黄ばみ、端がくるりと丸まっている。
私たちは受付へ向かった。
カウンターの向こうにいた女性は、希望に満ちた顔を数えきれないほど見てきた一方で、伝説となる者はほとんど見てこなかった――そんな疲れた目で私たちを見た。
「新入り?」
彼女が尋ねた。
「はい」
私は答えた。
受付の女性は、私たちの名前と出身地、それから「固有の言葉」を尋ねた。
私は首をかしげた。
「固有の言葉?」
「冒険者である理由。目標。何があなたを突き動かしているのか、ということよ」
彼女は肩をすくめた。
「昔からの伝統なの。自分がなぜ冒険者になったのか、忘れないようにね」
私は家族のことを考えた。
私に期待を寄せてきた、下級貴族の家族。父親と同じ道を歩んできたアデルグント。そして、誰にも語らない理由を抱えながら、一人で旅を続けてきたアヴェルヒルダ。
それから、自分が本当に望んでいるものについて考えた。
名声ではない。富でもない。力そのものを求めているわけでもない。
私は強くなりたかった。
大切な人たちを守れるほどに。そして、何かを変えられるほどに。
「私は、みんなを救えるように強くなりたい」
私はためらわずに答えた。
その瞬間、私は本気でそう信じていた。
力こそが答えなのだと。十分に強くなれば、誰でも救える。誰でも守れる。どんな悲劇も防げるのだと。
私はまだ若かった。
理想主義者だった。
世界は自分が信じるとおりに動くのだと、疑いもしなかった。
受付の女性は、私たちに登録カードを渡し、続いて青銅のバッジを三つ差し出した。
最下級のランク。
すべての始まりだった。
「ギルドへようこそ」
彼女は平坦な声で言った。興味などなさそうだった。
「死なないようにね」
私たちは服にバッジを留めた。
そして初めて、私は自分が冒険者になったのだと感じた。
私たちは初心者だった。
訓練を積んだ。学んだ。この人生のために、何年も準備してきた。
けれど、訓練することと、実際に行動することは違う。
理論と実践は、同じではない。




