【第3章】 教師報酬は“問い起動率”で支払え!
「じゃあ次は、教師の給料制度ですね!」
未来人が満面の笑みで言った。
誰も頼んでいない。誰も望んでいない。
だが本人は完全にやる気満々だった。
「……また勝手に議題変えた……」
「皆さん、教師の仕事ってなんですか?」
「そりゃ、生徒に知識を──」
「はい、ブッブー!!それAIでいいですねー!」
未来人がランドセルから“AIに全部任せリスト”なるものを取り出した。
一番上に書いてあるのは『三角関数の使い道』。
「今の時代、“知識を教える”はもう価値じゃないんです」
「教師に求められるのは、“問いを起動できるか”なんですよ!!」
「だから、教師報酬は“問い起動率”にします!!」
「待て、やめろ、落ち着け!!」
【未来人の制度案:教師評価編】
『問いベース報酬制度』
給与評価項目(旧):試験平均・進学実績・授業アンケート
給与評価項目(新):生徒が授業中に発した“問いの数と深度”
「しかも問いの質をブロックチェーンで記録します!」
「問いは個人ウォレットにNFT化され、後から参照・売却も可能!」
「いやNFTとかもうわけわかんねぇよ!!」
「問いを売るってなんだよ!」
「え?“問いを買った人が、自分の授業で使える”んですよ。
“問いの二次流通”が教育市場を活性化させるんです!」
「教育市場が活性化しちゃダメだろ!!」
「ちなみに、教師同士の“問い起動マッチ”も開催予定です」
「生徒が“どっちの授業で多くの問いが出たか”をリアルタイム投票!」
「もうエンタメじゃん!!」
【会議室、全体的に疲労がにじむ】
「……でもさ、問いが出る授業って、たしかにいい授業だよな」
「“何それ?”って思わせる教師と、ただ板書読むだけの教師……」
「俺、“答えを渡し続けてきただけ”だった気がする」
【未来人、急に真顔になる】
「問いが出なかった授業は、“死んだ時間”なんです。
でも、生徒はちゃんと“死んだふり”してくれる。
だから教師は、気づかないままでいられる」
静かになった。
未来人は最後にこう言った。
「問いが出る授業は、教師と生徒が“いっしょに生きてる”って証明なんですよ」
黒板に、またひとつ書き残された言葉が増えた。
『今日の授業、あなたは“問われた”か?』
【次章予告】
第4章:“答えのない授業”で静まり返る教室
問いを起点とした授業が、現場に実装される。
そこに生徒たちは何を見て、教師は何を見失っていくのか。
未来人、静かに“構造崩壊”フェーズへ突入──。