【第2章】 テスト廃止!推し語りで単位ゲット制度
「まず、テストを廃止します」
未来人は、会議室の中央でそう宣言した。
全員、固まる。
「いやそれ、さすがに無理でしょ……」
「え?“学び”って、そんな“共感ポイント制”でいいの?」
「いいんです! なぜなら──
“好き”から始まった学びは、途中でバグっても自己責任じゃないからです!!」
「その理屈どうなってんの!?」
【未来人の制度案:概要】
『共感探究型試験制度』
中間試験:推し語りプレゼンテーション(3分)
→ 内容:なんでもOK(アニメ・昆虫・祖母・信仰・理論物理など)
期末試験:“問い”を提出し、それについて授業をつくる
→ 成績評価:問いの深度、共感性、想像力、着眼点のバグ度
「いやいやいやいや。高校入試どうすんの!?大学入試どうすんの!?」
「だから全部やめるって言ってるんですよ。入試って“通過できる人間の型”を決める装置でしょ?
それ、個性じゃなくて“工業規格”です。 もういらないです」
「工業規格って言うな!!」
「そのかわり、“問い履歴”が進学資料になります」
「え、何それ怖い」
「“小3のときに“なんで空って青いの?”って問えた”ってだけで、
学びのスタート地点が見えるんですよ。スゴくないですか?」
「それで入試突破できるの!?逆に怖い!!」
未来人は満面の笑みで言った。
「いいですか?
“問いを持つ”って、実は社会参加の最低条件なんです。
なぜなら、“問えない人間”は、与えられるものしか受け取れないからです」
「だから、これからの子どもたちは──
“推し語りから始まり、問いを紡ぎ、誰かの問いと出会う”ことで評価されるべきなんです」
「じゃあ……“正解”って、どうなるの?」
「なくします」
「え、え、え、え……」
未来人はランドセルから資料の束を取り出し、最後にこう言った。
「正解が“ある”ことに慣れすぎた社会が、
“ないことに耐えられない人間”を育ててきたんです」
「だったら今度は、“問い続けられる人間”を育てませんか?」
会議室に、また沈黙が落ちた。
誰も笑ってなかった。
でも、誰も否定しなかった。
【次章予告】
第3章:教師報酬は“問い起動率”で支払え!
次回、未来人が教師の給料にまで制度爆破をしかける。
“教える”とは何か、“導く”とは何か──問いが職業に染み込んでいく回へ。