【第1章】 未来人、ランドセルで会議に乱入
「では次の議題、“市立第二中学校の改築に関して──”」
バァン!!
会議室のドアが、教育長の言葉をぶった切って開いた。
そこに立っていたのは、ランドセルを背負った成人男性。
笑顔。異様な爽やかさ。異様な違和感。
「おはようございまーす! 今日も制度、ぶっ壊しに来ましたー!!」
「出禁じゃなかったのか!?」
「例の未来人……!まだ生きてたのか!」
「ってかなんでランドセル!?中身は何!?思想!?爆弾!?」
未来人(俺)はドカドカと会議室に入ってくると、
何の前置きもなくA3サイズの資料を叩きつけた。
表紙に書かれていたのは、こうだ。
『義務教育DAO構想──“問いのない学びは処理である”理論に基づく提案』
「まず確認したいんですが──偏差値って、なんでまだ使ってるんですか?」
「いやいやいや、ちょっと待て。会議議題と違うから」
「しかもなんでいきなり“義務教育DAO”とか言ってんの?」
「義務なんですよ、教育って。つまり“自由に学ぶ権利”は、制度的に最初から削除されてる。
それって、バグじゃないですか? ね?」
未来人は、笑顔で詰め寄ってくる。めっちゃ距離が近い。
「というわけで、今日ご提案したいのは──
**“成績の数値化をやめて、学びを“問いの量”で測る教育制度”**です!」
「……は?」
「ランドセルの中、問いでパンパンなんで! ご安心を!!」
教育委員長が眼鏡を押し上げて言った。
「仮にそれが可能だとして、どう評価するつもりなんですか?
“いい問い”と“悪い問い”の違いなんて、誰が決める?」
「いい問いとか悪い問いとかじゃないんですよ、委員長──」
未来人はクルッと回転し、黒板にチョークで一言書いた。
『問いがあるか、ないか。』
「評価は、その一点でOKです。ゼロかイチです。
問いを持ってる子には、生きてる価値がある。……ちょっと言いすぎました」
爆笑と静寂が同時に訪れた。
「いやもう何言ってんのマジで」
「でも、なんか妙に腑に落ちる……」
未来人は、次の資料を掲げた。
そこには、信じられないほど雑な字でこう書いてある。
“学校、DAOでよくない?”
「先生方!知識の伝達はAIに任せましょう!」
「先生の仕事は、“問いと一緒に歩くこと”だけです!」
「今日から“義務教育”じゃなく、“探究契約型DAO教育”にアップデートしましょう!」
「無理無理無理無理!!」
そして未来人はランドセルから──
「未来教育制度NFT(発行番号00000001)」
を取り出した。爆笑が巻き起こる。
「これを市に寄贈します。これが、新しい学びの証です」
その日、未来人は爆笑されながらも、なぜか誰も止めなかった。
そして、彼が書いた黒板の文字だけが、なぜか消されずに残された。
『問いがあるか、ないか。』
次章へ続く──
「テスト廃止!推し語りで単位ゲット制度」