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エーテルの光  作者: 鳳龍
第一章
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異世界への転生 ②

サクラの心の変化をすばやく察知したカインは、再び口を開いた。「まずは、君に魔法を使う基本を教えよう」。そう言って、彼は自分の手を広げ、空中に浮かび上がる小さな光の球を作り出した。まるで目の前に星屑が集まったかのような、淡い青い光の玉がその手のひらに現れる。


「これがエーテルの力だ。エーテルは、この世界の全てを構成している源のようなもの。君のように、外の世界から来た者は、このエーテルを使いこなすのが難しいことがある。でも、君にはその知識があるから、直ぐに理解できるようになるはずだよ」


サクラはその光景に圧倒されながらも、カインの言葉に納得した。確かに、現実の世界では魔法は存在しない。しかし、今彼女が目の前で見ているこの光景は、どう考えても科学的な説明を超えた、未知の力そのものだった。


「エーテルを感じ取るには、まず自分の内面と向き合うことが重要だ」。カインは続けた。「君がこの力を使うには、心を落ち着け、エーテルと一体になる必要がある」


サクラは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。無意識のうちに、彼女はその力を感じ取ろうとしていた。自分の体の中で、何かが蠢くような感覚があり、それはまるで空気の粒子一つ一つが生きているかのような、微細な感覚だった。


「君の中には、確かにその力が宿っている」。カインが頷いた。「では、次にこの力を使ってみよう。君の手のひらにエーテルを集めて、光の球を作り出してみてくれ」


サクラは一度目を開けて、カインの目を見つめた。その目は真剣で、彼女に期待を寄せているようだった。サクラは再び深呼吸をし、手を前に出してみる。少し不安がよぎったが、心の中で自分に言い聞かせるようにした。


「私は、やれる」


集中してみると、最初は何も起こらなかった。手のひらを見つめながら、サクラは少し焦った。しかし、すぐに気づいた。力を使おうとすればするほど、逆に心が乱れていることに。だからこそ、心を落ち着けることが大切だとカインが言っていたのだ。


サクラは再度、心を整えて静かに目を閉じ、手のひらに意識を集中させる。その瞬間、手のひらにほんのわずかな温かさを感じ取ることができた。そして、次の瞬間、薄い青白い光が彼女の手のひらから漏れ出し、ほんの小さな光の球が浮かび上がった。


サクラは驚きとともにその光を見つめた。「できた…!」


「よくやった」。カインは満足そうに微笑んだ。「君の力は、なかなかのものだよ。でも、これを扱うにはもっと練習が必要だね。エーテルを自在に使いこなすには、感覚を研ぎ澄ますことが重要なんだ」


サクラは頷きながらも、自分の手のひらに浮かぶ光をじっと見つめた。彼女は芽生え始めた力に感動し、そしてそれがどれほど大きな可能性を秘めているのかを感じ取っていた。


「これで、少しはこの世界に馴染めるかしら?」サクラは心の中で自問した。


その時、カインが軽く笑って言った。「君の知識がこの世界にとって、どれほど貴重なものか、君はまだ理解していないだろう。そのうち分かる時が来るよ」


サクラはその言葉に、少し心を躍らせた。この異世界で、自分が何を成し遂げることができるのか。きっと、今の自分にはまだ見えていない無限の可能性が広がっているに違いないと、彼女は確信し始めていた。


その夜、サクラは初めて異世界の街を歩いた。カインの案内で、街の中心にある大きな広場に出ると、そこには多くの人々が集まっていた。商人たちの店が並び、露店が賑やかに並ぶその光景は、どこか古代の都市のようでありながら、不思議と近代的な雰囲気を感じさせた。


「ここが…この世界の中心なのね」。サクラは感慨深げに言った。


カインは横で頷きながら言った。「この世界は魔法と科学が共存している。しかし、いまだに多くの人々は、魔法の力を重視しすぎて、科学の力を軽視している。君のような者がこの世界に現れたことは、歴史を変えるかもしれない」


サクラはその言葉に、何か大きな使命を背負うことになるような気がした。新たな世界で、自分の力をどう使うべきか。そして、この世界に革命をもたらすために何を成し遂げなければならないのか。


その答えが少しずつ、彼女の中に形作られていくのを感じていた。


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