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Depayzman  作者: 床縫
6/7

クリアリング

 屋敷の外、森の内部に神が二人。開かれていない道は、宙に浮く鎌が無理やり木を切り、道を開いていた。


「ラヴ、この方角なんだよな?」


「はい、間違いありません。私の「飛翔する監視液晶体/フライ・カメラ」で常時監視しております。また風の吹き方から見て正面からくるのはあきらかです」


「そうか…」


「(風の吹き方とかでわかるものなのか!?俺は全然わからんが…わかってるフリしとこ……)」


「…?あ、来ますよクラリ様」


 鎌が動きを止め、クラリの前に舞い戻り、ラヴが真紅の大剣を構える。赤い刀身は太陽の光を奪うかのように輝いていた。


「(え、まだ見えないんだけど!?ええっと、望遠鏡で見えるか?)」


 クラリは魔法「望遠鏡/ルック・ミラー」を発動すると、クラリの目の前に紫の半透明の魔法のレンズが現れた。効果は望遠鏡を使うのと同じだ。

 魔法を利用してやっと見えてきた。親熊は前に殺した熊の数倍の体格をもっており、頭から生えた角は巨大で虹のように輝いている。

 また、森に溶け込むには不向きな純白の毛皮をもっている。アルビノだ。


「どうしますクラリ様?」


 親熊は、よだれを垂らしながら、四足歩行で向かって来ている。


「どう…とは?」


「私の主観ですと、コートなどの羽織るものがよろしいかと」


 殺すのは確定かい。とクラリは突っ込もうとしたが、なんとか抑えた。

 だが、慢心はいけない。ゲーム内では、見た目や前例で対処してはいけない場面が多々見受けられた。氷のモンスターの弱点が氷だったり、明らか敵な見た目のやつが超重要な味方だったりする。これは終盤に限っての話だが、この破茶滅茶な耐性などで、攻略を諦め、MOD勢に移行する人が多くいた。

 今回の敵も例外ではないとクラリは考えた。

 これがゲームの終盤の敵ならば、「敵の攻撃、魔法を十回まで反射する」みたいなクソアビリティをつけるくらいはする。+アイテム全ロストくらいはつける。

 束の間に考えがまとまったクラリは行動に移す。


「ラヴ、待機だ」


 待機コマンド。

 NPCに命令できる一番簡単な命令。その名の通り、その場で待機させることができ、NPCは攻撃されない限り動かない。


「っ!…承知いたしましたクラリ様」


 ゲームの名残りか、機械からなのか、ラヴはいとも簡単に承認した。ただし、警戒はしており剣は構えたままだ。

 親熊はもうそこまで迫っている。クラリ達に接触するまで、五、四、三…


「ラヴ!飛ぶぞ!」


「はい!」


 ラヴは身体能力による跳躍、その後手の平と足の裏からジェットが噴出し、その機能により浮き上がり、留まる。

 クラリは魔法で空に飛び上がる。空中に留まる邪神の足である無数の手が宙ぶらりんになり、奇妙さを湧き立てている。

 親熊は木にぶつかり、多少痛がったものの数秒後には宙に浮くクラリ達を見つけ、降りてこいと言わんばかりに当たらない爪を振り続けている。


「ラヴ。初めての敵を見た時どうする?」


「とりあえず殴りマス!!!!!!」


「なんでや…いや、なんでもない。その回答は不正解だ。」


「なぜデス?殴って体液を取れサエすれば、私の機能デ基本ステータスはわかりマスし、私の攻撃が効かナイ時点で防御力を強化してイルか、無効化しているかわかるはずデス」


「ふむ、お前の機能では測れないところがあると思ってな。サーチ魔法をあの熊にかけてみろ」


「了解デス!「敵兵探知/サーチ・エネミー」…?」


 ラヴの目の周りに魔法のレンズが出現し、その魔法により親熊の隅から隅まで調べ上げられた。

 親熊の名前は「虹の防人」。大層な名前の割にはステータスはだいぶ低めなことがわかった。戦闘特化でもないNPCの攻撃を受けてもワンパンされるだろう。

 状態異常は「敵勢」「憤慨」ともう一つ「宿主」。


「クラリ様、あの熊の状態異常に「宿主」がありました。何か別の存在に洗脳されているものと推察されます」


 「宿主」。対象が何者かに寄生、および洗脳されている状態を示す状態異常。本人が解除できない場合この「宿主」状態として判定され、自己解除、自己回復できる場合は「寄生」あるいは「洗脳」状態として判定される。

 つまりこの親熊は、完全に自己を失い、何者かに操られていることになる。


「よくやったラヴ。敵のステータスはどうだった?」


「低いですね、私のデコピンでも九割以上のお釣りが帰ってきます」


 なるほど、さっきの熊とステータスはあまり変わらないようだな。寄生されてステータスが大幅減少している可能性もあるが。

 …とクラリは手の一つを顎に添えるような動作をしながら頷いた。


「どうしますクラリ様?森ごと燃やします?その場合二分くらいお時間いただきますが」


「なぜそうなる…」


「いや、寄生虫だったら燃やした方がいいかなっテ!」


 お前本当にAIか…?と、クラリは言いかけたが、なんとか引っ込めれた。


「とりあえずこのユニコーンベア…こいつに寄生している生物が我々の知らない生物の可能性がある」


 クラリはラヴの方を向き、目を合わせながら言い放つ。無論、仮面をつけているので、仮面の模様の目だ。


「ラヴ、熊とその中にいる寄生虫を生捕りにしたい。できるか?」


「…!親子を再会させてあげるんですね!?流石はクラリ様!懐が電子海溝以上に深いです!」


「あ、ありがとう…?」


「じゃあいきますね!【這い出る雷槍/ショック】」


 親熊の地面から、ビリビリと電流が川のように流れ始めた。

 その後、帯電する親熊に槍のように直線的な強力な電流が胸を突き刺し、巨体がズドンと倒れた。

 起動した魔法陣をよく見ると、「魔法最小化/スモール・マジック」を付与し、ダメージを半減させている。

 一応麻痺程度には魔法を収めたみたいだ。

 2人の神が降り立ち、土をふむ。


「デハ、早速運んでいきまショウ!スキル、発動!、「機神兵団九九九/ジャッチメンター」!!」


 ラヴのスキルで機械の兵が一体出現する。

 先ほど出現させた、機械の兵とは一味ちがい、親熊にも負けない巨体と巨腕を兼ね備えている。


「じゃあ、それ運んでくだサイ。落とさないでくだサイね?」


兵は、肯定の代わりに一つ眼を軽く光らせた。


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