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Depayzman  作者: 床縫
1/7

異世界

初めての投稿作品なので、感想、評価、添削大歓迎です。おかしな点があったら微笑んでください。約束ですよ。

 VR Open World Action RPG、【Death Island】。

 2192年に発表されたこのタイトルは24時間で100,000ダウンロードを突破し世界を熱狂させた。

 人気の理由はその自由さ。

 大元の「全ての魂が集まるdeath islandを目指す」という目的はあるものの、どこに行くのも何をするのも自由。

 村で静かに農民としてスローライフをすることも、世界を救う勇者となることも、世界を支配する魔王として降臨することさえできた。

 キャラメイクも豊富で、20の職業と100種類の種族からキャラを選べ、ピクセル単位でパーツの調整ができた。職業ごとに違う技や魔法が使用でき、その種類は10,000を超える。

 自分に付き添うNPCも作成することができ、自分のキャラメイクの10倍時間をかける人も少なくなく、NPCと結婚する人まで現れた。

 アイテムの数も以上だ。ゲーム販売から2年後に追加販売したDLCを含めて30,000個。

 ここにスキルや特殊効果がある武器を加えるともっとあるだろう。

 これが、最速移動でも1時間かかるマップに散りばめられているのだから異常とも言える。


そのゲームで生計を立てている者も少なくない。その中でも長く攻略している人がいた。


「ふーっ…つっっかれた!!!」


 配信者「嫌星クラリ」はdeath islandで全アイテム、全魔法収集を目標に5年間配信を続けている男性配信者だ。

 今回の配信でついにその苦行ともいえるプレイは終わりを迎えようとしていた。

 場所は「終焉の洞窟」。最高レベルでも攻略が難しい難所だ。最高位の持続回復を付与してもダメージ量が勝つ防御不能の闇ダメージ。針山のような黒曜石がビッシリと詰め込まれている床と天井、そこに出現する、「宇宙の赤ん坊」という名の浮遊する害悪モンスター。宇宙の肌の赤ん坊が寝ながら丸まり指をしゃぶっている外見のモンスターで浮遊しながら、即死魔法を含む数種類のデバフを広範囲に付与してくる厄介なモンスターだ。そのくせ攻撃しよう者なら泣いて仲間を追加で召喚する。一撃で倒そうとしても、高い防御で防がれる。

 一応攻略法はある。闇ダメージを回復に変えるアンデット系のモンスターに転職し、専用のアイテムを使えば少し簡単に突破できる。

 だが、クラリはそれをしていなかった。


「最後のアイテムだとはいえ……なんでここを特定の種族で攻略しなきゃあかんのよ!!!この情報ってどこからだっけ?!え、ピロピロの助さん!?マジ!ガチの攻略者じゃん!確定ですやんモウヤダー!」


 コメントが高速で流れる。

 これはまだ序の口で、一部のアイテムは入手難易度がずば抜けて高く、VRなのも合間って、一時期、全アイテムを回収するための筋トレを行う配信までやった過去がある。


 クラリが今回使っている種族は「領域外の邪神」。外見は大きく黄色のローブを羽織っている不定形の存在。身長はおよそ2m。ローブからは6本の黒い腕が伸び、それぞれの腕に魔法のアイテムを装備している。杖やポーションなどだ。

 本来顔があるであろうローブの底からは2つの目が赤く怪しく光っており、足は数本の黒い腕に差し代わって体を支えている。

 この種族は全てステータスが高い代わりに全ての種族として扱われ、その分、敵の技や魔法の特効を受けやすいという弱点がある。だが、弱点が弱点になっておらず、運営のバランス調整がなってないとよく言われている種族だ。

 職業は「創世の大魔術師/ギャラクシー・クリエイター」。魔法使いの最高到達点であり、種族限定の魔法も含めた魔法1214種類全て取得済みだ。


 今は赤ん坊から逃げ延びて、洞窟のへこみでNPCと回復しあっている所だった。

 NPCの名前は好々愛ラヴ。

 身長は146cmで赤髪大きなツインテールが特徴。機械の体にそぐわない金の刺繍が施された赤色のローブを羽織り、隙間からはバニースーツが見える。

 種族は「人造機神」。機械種の最高到達点であり、職業は魔法剣士の最高到達点である「二重到達点/デュアル・ファイナル」。

 表情パーツは無表情で眉毛は青色。設定では熱血少女となっている。

 これだけヘンテコな見た目なのは、視聴者1人1人の発言をまとめて抽選で決めたからだ。

ラヴに回復魔法をかけてもらい、動き出す。


 今回のアイテム獲得条件は、「アンデット以外の種族で100,000,000以上のダメージを受けた後に最下層に辿り着く」であり、今2人がいるのは最下層の1個手前の10階層だった。

 「領域外の邪神」で挑んでいる理由はこれまた、抽選で決まったからである。

 ただこれは結構当たりで体力が低く持続回復もない人間種などになった場合、攻略は不可能だっただろう。


 「後何回だったっけ?えーと…あ、もういける?!本当に?!!いや、視聴者を信じることの危険性は3年前から学んだ。後2回はダメージをくらっておこう!よし!!」


 クラリの視界の右には薄いウィンドウが浮いており、コメントが流れていた。

 左上には、HPやMPのゲージ。左下には、種族特有のスキルの待機時間のウィンドウが半透明で視界に張り付いている。

 すでに配信開始から8時間が経過していた。

 右のウィンドウから絶え間なく、コメントが流れてくる。

 中には現金が投げられており、暇を見つけては、軽く感謝しながら洞窟を少しずつ進んでいった。


 そうしているうちに、ダメージを3周受け、もう大丈夫だろと、魔法で一気に加速し、3分程度で最下層の階段の前まで来た。


「みんな、いいか?いくぞ?」


 コメントはいつもより早く流れる。普通より目立つはずの現金チャットも早すぎて雪崩のようだ。

 せーのっ!と声をあげ、邪神と機神は階段を降り、画面が白く染まる。

 画面からウィンドウが消えローディングに入ったかのように思えた。

 が、まだ操作はできるようで、邪神の足音-手のひらで歩くペタペタという音-と機神のカシャンカシャンという音だけがこだまする。

 コメントも自身についた状態異常なども確認できない。


「なんだ?特殊なボス?でも、外部ツールのコメント欄が見れないのはなんでだ?」


 配信者は頭を傾ける。

 その数秒後、視界に大きな「Congrats!」の文字が浮かび上がり、パッパラパーという陳腐な効果音がなる。

 どうやら祝福してくれているようだ。


「あれっ?アイテムはまだ…って装備してる!?強制装備は呪いの装備だけだったはず…ランダムエンチャントで勝手に呪われたのか?」


 クラリはそういい、装備品を眺める。

 操作可能な-上から数えてニ番目の-右手にキラリと輝く涙の様な球体。

 水晶玉だ。

 大きさは手にギリギリ持っているような大きさ。普通の水晶玉の1.5倍はあるだろう球体はその中に小さな惑星が見える。地球にも似ているその世界は妙なリアリティを感じた。

 早速鑑定を行う。ローディング中かと思っていたが、ここは真っ白な空間らしい。

 魔法は正しく発動しウィンドウが出現する。

 アイテムの名前は「跳躍者」。

 アイテムの種別は消耗品であり、一度利用したら消滅することが明記されていた。


「…え?説明おわり?」


 通常であれば、おかしいほど詳細に書かれているのがこのゲームの特徴である。

 「木の棒」ですら、産地やら特徴やらで3行は書かれている。

 何が起こるか書いていないアイテム、ウィンドウが開かない、謎の白い部屋。

 もしかしてデバック部屋?そう思い、クラリは「|地図作成/オートマッピング」を発動する。

 名前の通り、自身のいるダンジョンの地図を自動的に作成する魔法だ。一応警戒し、補助魔法、

「魔法完全化/パーフェクトマジック」を付与して発動する。

 結果から言うと、不発だった。

 通常なら、いかにも中世といった感じの地図が目の前に出現する。

 だが、地図が出現する兆候は一切ない。

 魔法が妨害された通知もない。

 一応、「全体捜索/サーチエネミー」を補助魔法で範囲を広げて発動する。

 結果は同じだった。

 他にもスキル、アイテム、装備などの特殊効果も試してみたが、全て不発だった。

 NPCにも試したが同じだ。


「んー?これ、使うしかないのか…やだなぁ」


 結局最後に余ったのが、この空間で手に入れたアイテム。「跳躍者」である。

 水晶玉の外見をしているそれは何か形容し難い魅力を感じた。やるしかない。「跳躍者」を軽く宙に投げる。

 すると、水晶は強い光を放った。光が強すぎて白い部屋がより強い極彩色の白で埋め尽くされていく。


 「うわっ!?なんだこれ!!?これ、俺の目が潰れたらどうすんだよ運営!?」


 その言葉を最後に白い部屋からは誰もいなくなった。

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