ツリーハウスに住む男【インスタントフィクション#1】
ある日、男は近所の大きな木の上に家を建て始めた。
なぜ木の上に住むのかと問うと、男は
「なんだか気分がいいじゃないか」
と答えた。
しばらくすると男の家が完成した。
枝の上の限られた空間は4畳半にも満たず、
お世辞にも穴仕舞ができているとは言えない床や壁は、ほとんど野ざらしであった。
男は
「星空を眺めながら寝るのもステキじゃないか」
と答えた。
別の日、大きな音がして、男の家に駆け付けると、
床板がひしゃげて真っ二つに割れ、男は落っこちて骨折していた。
男は
「枝がクッションになって助かった」
と答えた。
男は歩くこともできそうにないので、しばらく家において看病してやった。
歩くことができるまで回復すると、
今度は遠くに見える山のてっぺんに住むと言い出した。
男は
「なんだか気分がよさそうじゃないか」
と答えた。
男が山に旅立った後、私は男が住んでいた木の上に家を建てた。
やはり、住み心地は良くない。