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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第三章 高慢に偏見
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07.島での交流




 シアと出会った日から、毎日あの島で会っている。

島の中を私がぐるぐる案内しながら、他愛もないおしゃべりをした。四年もの間留守にしていたシアより私の方が島に詳しい。


 そばにいると温かい空気が流れてきて居心地が良い。


 以前にもこんな空気感じたことがあったよなぁと思ったけれども思い出せない。男性に対してこんな風に魔力を感じたことはないのではないか。そもそも男性にこんな風に魔力を感じるのだろうか。エノシガル国では男性の魔力は少ないはずだ。だとしたら、シアから感じる心地良さは一体何なのだろう。



 シアに会う毎日は楽しかった。いつの間にか会うのを楽しみにしている自分がいる。シアの話は多岐に渡り、面白かった。この国を離れていた四年間に様々な国に行っていたらしい。





(それにしてもたった一人で様々な国に行くってどういう身分の人なんだろう。高貴な方だったらそもそも一人で他国に行くなんて事はありえないし。でも平民だったら他国でそうやって遊学するなんて事は難しいわよね。私のようにどこかの商家のご子息なのかな?)



 シアの正体は話を聞けば聞くほど謎が深まるばかりだったが、とにかく話が面白い。イーリヤの興味を引く内容ばかりだ。

 ミミルファ国の話は面白かった。精霊たちの多さがやはり群を抜いていて大抵の人は精霊たちに興味が行くけれど、精霊に負けないくらい妖精たちもいて、それがほんのたまに悪さをするらしい。だけど魔導師様のお力は偉大であっさりと問題を解決してしまうそうだ。いろんな事件について様々な角度からの捉え方を話すシアは、視野が広く公正な判断を下せる人物なんだと知ったイーリヤだが、魔導師様の人格も素晴らしいと言うシアに疑問が湧く。



(ん?て待てよ魔導師様に謁見できる立場の人間てこと???)



 頭の中で思い巡らす。

私の家と肩を並べられるリゾートホテルは数少ない。もしそういった家の子息がいたなら学院時代に出会っているはず、しかも家格を考えれば魔力もしくは学業の成績がいいはずで、なら第一貴族院に入学している可能性が高い。編入だってあり得る。


 シアの顔をじっと眺める。



(うーん、どこかで見たような気もするのだけれどな。思い出せない。これだけ精悍な顔つきで、体も引き締まってこんな容姿の人がいたら忘れるはずもないし、そもそも目立つよね)


 首をひねってさらにシアの顔を見つめる。



「どうしたの。そんなに見つめられると好きになっちゃいそう」


「!!!いやいやいやいや、ごめんなさい。ちょっと、考え事してて」


「……そんなに全否定しなくてもいいんじゃないかな。ちょっぴり傷つく」


「ごめんごめん。シアもそんな冗談言うんだなってびっくりしちゃって」



 イーリヤはシアの何気ない言葉に心がざざっと鳥肌が立ったような衝撃が体中を駆け抜けた。

だけど、動揺を悟られないようにさりげなく話をそらす。




「シアはいろんな国を旅したからきっと素敵な女性たちともたくさん出会ったのでしょうね!それこそミミルファ国の魔導師様はとても美しく聡明な方ですし、女性として心惹かれたりしませんでしたか?」


「……そうだね。とても素敵な方だったよ。素敵な魔力だったし。婚約者の竜王が、ああ、今は旦那だな、それはそれは魔導師様のことを大切になさっていて。私の理想の夫婦像だ。まぁ竜王のほうはいけすかない奴なんだけど」



 一瞬躊躇われたようだったがすぐにいつものシアに戻って、思い出したように話をする。



「竜王様のことをいけすかない奴ってそんな不敬なことをおっしゃるなんて、シアは、どれだけ竜王様のお近くで過ごされたことがあるのかしら。もや……魔導師様のこともそうだし、竜王様のことを楽しそうに話して、とても不思議に思うわ」



「今の私があるのはお二人のお蔭なんだだ。とても感謝している」



 そう言ってシアは微笑んだ。






 会う度にシアはたくさんの国の話をしてくれた。あまりこの国を出たことのないイーリアにとってとても興味深くシアの話は心をワクワクさせた。

(いつかいろいろな国に行きたいな)と今まで何気なく思っていたイーリアは聞いてるうちに(いつか必ず行く!)と固く心に決めた。



(そのためには残されている学校生活、さらに頑張らなきゃな)









「シア、私、長期休みも終わるの。学校に戻らなきゃいけないから、今までのようにもう毎日は会えないわ」


「えっ」と驚いたようにしてシアは見つめてきた。シアの手が伸びてきて、指先が私の髪に触れる。


「そうなの?じゃあ次はいつ会えるかな」


「が、学校がお休みの日なら会えるかもしれないけれど、いつとは約束できないわ」



 髪にそっと触れていた指先が、艶やかな長い髪の毛をすくい取り絡める。



「僕は君と会いたいんだ。どうしたらいい」




「せ、精霊のお導きがあればまた会えるでしょう?」



 恥ずかしさに俯いて誤魔化すように返す。



「精霊って。精霊の導きじゃなく、私は自分の意思でイーリヤと会いたいんだ」






 精霊達がいつも以上にキラキラと輝いた。










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