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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第一章 竜の番 竜王編
10/108

10.探索と苦悩

 



 やってきた竜の騎士はユーリの幼少の頃から仕えているエーチとイフー、そしてユーリと年齢が近いユーキの三人。いずれもユーリ直属の騎士だ。国王に頼まれ、ユーリの後を追ってきたらしい。が何分、遠い国。しかも、<果ての地域>とは全く交流がない。ユーリの様に竜の姿になって飛んでいきたいが、世界を席巻できるであろう竜王とはわけが違う。三人は陸路をひたすら進んできたのだ。



「竜のお姿になって飛んで行かれるということはどういうことかお分かりですか?下手すりゃ勃発ですよ勃発、勿論戦が!ミミルファ国にたどり着くまでの間、我々は国交のない国に説明し、許可を得ながらやってきたのですよ。誠心誠意、低頭平身ね」


 エーチからはいつものごとくユーリに指導が入る。



「でも、ユーリ様の元気なお姿を拝見出来て、本当に本当に安心しました」



 それに引き換えイフーは、涙を流さんばかりに喜んでいる。

ユーキはというと、ユーリより精霊達が気になるようで、周りをキョロキョロ見て落ち着かない。



「すごいなぁ。本当に精霊の国なんだ。こんなにたくさんの精霊は見たことがない。ってか俺でもこんなにはっきりと精霊が見えるんだ!この国に入ったはいいけど、全然精霊は見えないし、森からは出られないし。まさか、俺達が捕獲されてたなんて」



 ユーキが笑いながら言うその言葉にユーリは気付かされる。というか、何故今まで気づかなかったのだろう。竜の国においてもユーリにはたくさんの精霊が見えていた。なぜなら、もやの周りにはいつも精霊達が嬉しそうに飛び回っていたからだ。いままで当たり前だと思っていた事柄が、当たり前ではないのだと気づき、そして靄のいない今を改めて感じる。



 三人が十分に休憩を取った後、ミミルファ国の城へ連れて行き騎士たちを紹介をすると、ユーリは三人と共に再びもやの探索に取り掛かった。






 *****






 日増しに靄の存在が大きくなっているのは感じる。きっとこの国のどこかにいるに違いない。靄の気配が大きくなっていることで、ユーリは少し安心を覚えた。このまま探し続けているうちに靄にきっと会える。そう信じていた。だって、靄の気配がこんなにも大きくなっている。近くにいるに違いない。そばまで来ているのだ。




 なのに見つからない。




 時間だけが過ぎていった。

 ここから自国への距離を考えると、もう、戻らなければならないギリギリの日数だ。成人の儀を遅らせることなど、できるはずもない。一旦、国に戻り成人の儀を済ませ、また靄を探しにミミルファに戻ってこようか。

 だが問題は、わたしの成人の儀には生涯の伴侶となるものが必要だということ。婚約し、国の安寧を願い誓う。それが王太子としての責務だ。


 だったら。

 このまま国に戻らないほうが良いのではないか。靄を見つけてからの方が問題なく済むのではないか。だが……、わたしはおよそ三百年に一度現れると言われる竜の愛し子。成人の儀を放りだすことは出来ない。しかも、竜の愛し子こそが儀を司り竜王となるのだ。





 ユーリは竜の姿になるとエーチとイフーを従え、天へと消えるように羽ばたいていった。





 *****






 竜の国では未だ帰らない王子に城中が、やきもきしていた。

ただ、ユーリがいつ戻られても良いように宴の準備だけは滞りなく進めてはいる。が、しかし。問題は、婚約者だ。王は、頭を抱えた。ユーリは、旅立つ時、なんというたか。ミミルファ国の魔導師を大切な人だとか、なんとか。


 大切な人とは?大切な人って大切な人だよな?

 それって……。ぐわあぁぁぁぁ。


 文字通り頭を抱える王。まさか、宴のギリギリまで戻らないとは思わなんだ。だから、婚約者の選定も戻ってからで大丈夫だろうと高を括っていた。

 ユーリが婚約者を連れて戻って来るのか?いや、大切な人が恋人とは限らないではないか。そもそも、ユーリの力を奪おうとした輩かもしれない。水面下で選定した婚約者候補数名を待機させたほうが良いのか?だが、ユーリは竜の愛し子。我々が選んだとて、意味はないのかもしれぬ。


 ぐわあぁぁぁぁ。


 と王は更に深く頭を抱えた。


「陛下、落ち着いてください。ユーリは宴までには、絶対戻ってきます。その時、大切に思うものも連れて参りますでしょう。心配する必要は無いのです。私たちは、あの子の帰りを信じて待つだけです」


「妃よ。そなたはなぜ、そうもゆったりと構えていられるのだ?」


「なぜって。そんなの決まってるじゃありませんか。あの子が、もやさんを悪ではないと言い切るように、私もただあの子を信じているだけですよ」


 そう言って妃は、優しく微笑んだ。











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