第2話 状況把握
ステータスの確認も終わったので、次に僕は武器製造の詳細を見た。
武器製造はスキルレベルに依存して、製造できる武器のレベルが決まるようだ。今の武器製造はレベル1だから、最弱の武器しか作れないということだな。
「武器製造!」
どうやるかわからないから、とりあえず声に出してみる。すると、目の前にステータスとは違った別の画面が表示された。
「えっと……」
製造できる武器は棍棒、剣、弓、槍、刀だった。たったの5種類しかない。
ここは無難に、そう、無難に……刀だ!
ロマン溢れる刀を選択した僕は、密かに内心でガッツポーズを取る。
刀は剣の上位互換とされていて、高レベルにならないとできないと思っていたのだ。
刀を選択すると、製造に必要なスキルポイントが不足しています、と表示が出てきた。
……待って。武器を作るのにスキルポイントを消費するのか?
スキルポイントめちゃくちゃ重要じゃん……。
「今は作れないのか」
スキルポイントはすべて使い切ってしまっている。しかも、武器製造に必要なスキルポイントはそれぞれ3ポイント。少なくとも現時点では作ることができない。
「これ、防具も絶対同じ仕様だよなぁ」
真っ暗な部屋の中、手を後ろにつき、ぼけーっと天井を眺める。
どうしよう。せっかくの刀が手に入らない。というか、今更だけど銃刀法違反とかならないよね?
不安になった僕は、パソコンで調べようとしていまだに停電していることに気付く。
「早く復旧してくれ東電〜!」
仕方なくスマホを付けて検索しようとするも……。
「電波飛んでない? いやいや、え?」
左上の電波表示がなくなり、圏外となっていた。
もしかして、電力完全シャットダウン? しかも電波も飛んでいないって。電波塔もダウンしたってことか?
僕はあらゆる手段を講じた。
電気が本当に通っていないのか電子レンジを付けようとして失敗に終わったり、ブレーカーのスイッチを入れ直してみても失敗に終わり、仕方なく手動発電式のラジオを起動させてみるも、不発に終わったり。
「これ、まさかEMP爆弾でも落とされた?」
……いや、それはないか。
それがもし落とされていたなら、スマホは使えないはずだ。もう、まったく起動さえしないはずなのだ。
僕のスマホはEMP対策をしているわけがないから。
この現象が、僕だけだとは思えない。
夢の中というなら納得だけど、さっきから頬をつねりすぎて赤く腫れ始めている。
つまり、今の日本は危機的状況下にあり、防衛出動レベルの未曾有の大災害が起きている。
「やっば……」
とにかく水の確保が急務だ。
僕は水道の蛇口を捻る。
「そんなバカな……水が止められてる? 水道代はちゃんと払った……よな?」
不安に駆られ、思わずスマホで決済画面を出そうとして、ネットに繋がらないことに苛立ちを覚える。
「ま、まじか。全部ネットだ。確認のしようがない。ガスの領収書も、水道も、電気も、全部ネット決済……」
待て待て待て。あと、ネットでしているのはなんだ?
「……毎月の米と毎週の卵と牛乳、それからケータイ代もそうだな。それから……」
ネットに頼りすぎた。
僕の生活は基本的に、日曜日にその週に必要な食料やお菓子、ジュースが届けられるようにネット通販で定期購買している。
生活必需品もそうだ。トイレットペーパーやティッシュなど、消耗品の数々も。
「早く、早くスーパーに行かないと。買い溜めだ。てか待てよ。今スーパー閉まってるんじゃないか……?」
それならコンビニしかない。
「現金、現金だ。現金は……」
……ない。
現金はない。
一人暮らしを始めてから、ずっとネット決済だ。ネット決済のできるコンビニに行き、ネット決済のできる店で購入しているし、交通系電子マネーもクレジットカードでチャージだ。
「詰んでる……?」
コンビニのATMも、ネットに繋いで口座から引き落としている。ネットに繋がなきゃ、何もできない。定期購買の通販だって、この状況で機能するとは思えない。
「いま、いまあるものの確認が最優先だ」
いや、本当にそうか?
無線が死んでいるだけかもしれない。有線なら――電話ボックスなら通報できるかもしれない!
「……そこまで甘くないよな」
そんなに中途半端に甘いはずがない。これほど徹底的にライフラインを遮断しにきているのだ。これが自然災害であれ、どこかの国の攻撃であれ、今は非常事態宣言どころか国家総動員レベルだろう。
まずは身の安全の確保だ。
差し当たり食料と水の確保を。
「地震災害対策バッグが確か押入れに……」
押入れから自分でカスタマイズしたバッグの中身を取り出して行き、内容物を確認した。
水が6L、フルーツの缶詰が6つ、あとは12食分の食料。水を切り詰めれば、4日持つ。
でも、それで安心はできない。
こうなったら、サバイバル漫画だ。あれには確か、水の集め方が……!
「なるほど」
水の集め方は理解した。でも、今すぐには作れない。そもそも水がない。一級河川が徒歩30分ほどのところにあるから、まずはそこを目指すべきか。
「落ち着け。落ち着け。まだゲームオーバーじゃない」
冷蔵庫にある牛乳をコップに注いで飲み、気持ちを落ち着かせる。
その瞬間、玄関で金属と何かがぶつかる音が聞こえた。
体がぶるりと震えた。
EMP爆弾
電磁パルス攻撃とも言われる、投下されると電子機器類がまったく使えなくなってしまう兵器です。
これの対策がされているのは政府の主要なところ、あとは大企業の一部でしょうか。