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第1話 情報閲覧



 僕の将来の夢は、ヒーローになることだった。

 小学生の時にサッカー部だった僕は、みんなのヒーローだった。誰かに憧れられて、誰かに羨ましいと言われて。

 中学生になったら、僕は努力をしなくなっていった。だんだん、その時、その時が楽しければそれでよくなっていった。練習もせず、常に誰かと遊んで、時には一人でネットゲームをして。

 高校生になると、漫画とかラノベをよく読むようになった。その世界ではヒーローが溢れていた。いつもニヤニヤして読んでいると、気持ち悪いと罵られるようになって、時にはイジメのような気分の悪いこともされた。

 大学生にもなれば、僕は一人でゲームをして、一人で漫画を読んで、一人でラノベを読んで、一人でアニメを見て。ずっと一人の世界が続いた。ヒーローに憧れて、延々とヒーロー物を読んでいた。

 そして僕は、就職した。超優良ホワイト企業だ。残業はないし、完全週休二日制だし、福利厚生もバッチリだ。来年からは週休三日制を導入するか検討しているらしい。

 そんな会社で、僕はただの役立たず。ライン生産の工場勤務で、毎日同じことの繰り返し。でも、それでさえ僕は満足にできない。誰かに求められることもなく、誰かを助けることもできず、ただ僕が助けられて、無視されて。

 ほかのみんなは残業して、僕の穴を埋めている。

 僕はみんなの邪魔にならないよう、定時で帰るよう言われている。



 だけど、そんな僕でさえヒーローになれる世界があった。ずっと、ずっとやっているオンラインゲームだ。

 ゲームというのは、基本的につぎ込んだ時間の量だけ強くなれる。ほぼ確実に強くなれる。そのゲームの世界で、僕はカンスト勢の仲間入りをようやく果たそうとしている。




「あー! クソッ!」


 なんでだよ! レベル上がったのに!

 目の前のパソコンのモニターに映るゲーム画面を、僕は恨みのこもった目で見る。

 突然こいつが落ちたのだ。シャットダウンしたのだ。かと思えば部屋の電気も消えている。

 マイク付きヘッドフォンを外し、立ち上がった。


「……ただの停電じゃないのか?」


 今回のレベルアップで、僕のメインキャラの「おぼろ」はカンストになっていたのだ。

 なのに……。


 ステータスが見たい。朧のカンストステータスが見たい!


「ステータスが見たい!」


 思わず口に出る。それほどまでに、僕はカンストを心待ちにしていたのだ。

 そんなことを思っていると、ボゥンと突然、目の前に見覚えのある、けれど初めて見る画面が表示された。


「これは……まさか」


 *   *   *


 name:神楽坂・朧

 sex:男

 level:1

 job:no entry

 HP(体力):80/80

 MP(魔力):30/30

 STR(力強さ):5

 VIT(耐久力):8

 DEX(器用さ):9

 AGI(敏捷性):6

 INT(精神力):3

 LUK():6


 LPT:200


 skill:no entry


 SPT:20


 *   *   *


 もしかして、僕のステータスか?

 名前は一致している。性別も一致している。……というか、どうして全部英語なんだ。こんなのゲーム好きじゃないとわからないんじゃ……。

 それに、ゲームをこよなく愛する僕でも、わからないところがある。

 LPTとSPTの二つだ。……まぁ、なんとなくは想像がつくんだけど。だって、書いているところが、もうお察しだ。

 LPTはステータスに直接、与えることのできるポイントだろう。SPTはスキルに与えることのできるポイントだと思う。

 レベルポイントとか、スキルポイントとかそんな感じだ。たぶん。


「それにしても、低いなぁ」


 なんだこのけちょんけちょんに瞬殺されそうなステータスは!


 とりあえず僕の好きなAGI-STR型にしよう。というか、今のステータスがこれなんだったら、この二つに絞ってもいいかもしれない。

 とりあえず、すべてを均等に10の値に揃える。そのあとSTRに82ポイントつぎ込み、数値が92になった。次にAGIには95ポイントつぎ込んで、105にした。

 これで、僕はSTRとAGIがとてもとんでもないことになっている。……本当に、ゲームの通りになっていたら。


「あー……もう0時回ってんじゃん。いつのまに……」


 今日は土曜日。日付が変わって日曜日だけど、仕事は月曜から金曜のホワイト企業だから安心だ。


「クソッ、本当ならカンストステータスを自慢しまくってたのに……。こうなりゃこの意味不明な画面を完璧にしてやる!」


 ……とは意気込んだものの、あとはスキルくらいしかやることがない。

 僕はスキルというところをタップした。


 *   *   *


 skill board:気配感知・武器製造・防具製造・HP回復速度上昇・MP回復速度上昇・祝福・コンボ・急所突き・鑑定・インベントリ・必中


 *   *   *


 今取得できるスキルの一覧がこれらしい。

 それぞれの詳細を見ていき、有用そうなものから取っていく。どうやら取得するのに必要なSPTが変わってくるらしい。


「まず、武器がないとどうにもならない」


 武器製造は必須だ。防具はまぁ、余裕ができてからでいい。武器製造にかかったのは1ポイント。残り19ポイントだ。

 気配感知を4ポイント、祝福を10ポイント、コンボを5ポイントで取得した。

 全部で4つのスキルをゲットだ。何気に一番ポイントが高いのは祝福。これはレベルアップ時に、ステータスポイントとスキルポイントがそれぞれ10と1ずつ貰えるというもの。どうやらレベルが上がって行くと、10と1ずつ増えて行くらしい。

 祝福のレベルはステータスのレベルに依存するのだ。

 次に気配感知。これは、まぁ、なんとなくアパート内の隣の部屋の人の気配がわかる、みたいな感じだ。

 正直、役に立つかはわからない。説明では、敵や味方の位置を正確に把握することができる、とあっただけに残念だ。

 最後にコンボだけど、これは必中、急所突きとどれを取るか悩んだ末に取ったスキルだ。いずれはそれらのスキルも取って行く。

 コンボの説明は、攻撃を受けずに敵に攻撃を当て続けると、3回目の攻撃から補正がかかるとのことだった。3回目の攻撃には1回目と同じ攻撃が上乗せされ、4回目では1回目と2回目の攻撃が上乗せされる。そして、5回目は1回目と2回目、そして3回目の攻撃が上乗せされてしまう。


「バランスブレイカーだな……」


 永遠に攻撃力が上がり続けていくから、攻撃が当たりさえすれば、敵を必ず倒すことができる。そんなスキルだ。とはいえ、これはDEXに依存するらしく、僕の最高コンボ数は現時点では10回だ。

 ちなみに急所突きは、敵の認識範囲外からの初撃のみ、攻撃力を4倍するというものだった。こちらもハッキリ言ってチートのようなものだ。ただ、気付かれていない状態でなければならないのが、唯一のネックだろう。

 最後に必中だ。これは、攻撃を必ず当てられるというもの。ただし、LUKに依存すると書かれていた。LUKを上げていないし、上げる予定もないので、今回は見送ることにしたのだ。

 ちなみに、鑑定は10ポイント、インベントリに関してはそもそも初期値では足りず、30ポイントも必要らしい。


「ま、こんなもんだな」



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