表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の家族事情
9/44

幼女の料理修行とウロウロ


少しずつ、足を運んでくれる方が増えてますぜ。ウェーイ!


「前後でこんなに雰囲気壊しているのにな」


それは言っちゃいかんやつですぜ……





フロイトに色々指摘され、自分なりに改善した結果、少しずつ頼られる事も増えていった。

が――


「……ご、ごめんなさい」


最近のアンナの家の朝食には、オムレツや卵スープが必ず並ぶようになった。

理由は単純で、私が卵を割る練習をして――ものの見事に惨敗を繰り返しているからである。


掃除に洗濯、裁縫は、得意とまではいかずとも、一通りこなせるのだが、料理に関してはほぼ壊滅状態だった。


卵を例に挙げると、殻にヒビを入れる段階で、十中八九黄身が潰れる。

仮に潰れずとも、左右に殻を開く際に指、もしくは殻に引っ掛かるらしく、ボウルには必ず崩れた黄身が現れる。

殻の破片が一緒に入り込んでいるのは、言うまでもない。

これでもマシになった方で、初めの内はヒビを入れる段階で、殻が粉々になり、手が卵まみれになっていた。


他にも、食材を焼けば焦がすか半生。

調味料はきちんと計っているハズなのに、味は毎回バラバラ。しかし、安定して不味い。

揚げ物は、さすがに挑戦していない。私がすると、油はねでは済まない自信がある。


これはアンナマリアの頃に、食事は教会や外食に頼りきっていた報いなのだろう。

父さまは勿論、母さまも美味しい食事を作る。

間違いなく、アンナマリア遺伝だ。


四歳になった今でもやはり、卵は上手く割れないが、得意分野は見つかった。


切ることである。


魚は三枚に下ろせるし、パイは音をたてる事なく六つに均等に切れる。

カボチャ等の固いものも切れるし、何なら肉の解体も可能だ。

……若干、思っていた料理とは違う気もするが、重宝されているので良しとする。


ちなみに、私の失敗した料理は、父さまが美味しく直してくれる。さすがに焦げた部分はどうしようもないが。

毎回困ったような顔だが、少し嬉しそうに手直ししてくれる。


そんな父さまに甘えきって、今日も料理の練習をするが、一向に上手くなる気配がない。

アンナマリアの時はともかく、今回は生涯独身で人生を終えるつもりはない。


いつか妻として、美味しい手料理を振る舞う事が、最近の私の野望である――。


◇◆◇


「……いい加減、すわれよ」


私は現在、フロイト宅のリビングを往復している。

いつも彼とは公園で遊んでいるのだが、今回、彼の家にお邪魔しているのには訳がある。


母さまの体調が思わしくないのだ。


我が家は、私を含め健康が取り柄である。

この四年強、誰一人として風邪も引いた事はなかった。


昼の営業が終わり、夜の営業準備を始める前に、母さまは、父さまに付き添ってもらい病院に向かった。

その間、私はフロイトと彼の母にご厄介になっているのである。


幸いなのは、ここが王都できちんとした施設が揃っている事だろう。

地方に行くと、診療所はおろか医者さえ居ない村なども珍しくない。


それに、母さまの顔色もそこまで酷い訳ではなく、父さまも冷静だった。

風邪は引きはじめが肝心だと聞いたことがある。つまりはそういう事なのだろう。


「……あー、もう!はい、すわるっ!んで、ジュース!!」


しかし、理解する事と無意識の行動は別の問題である。

この家のリビングは適度に広く、一階のため階下への物音を心配する必要もない。

何とも魅力的な往復スペースだったが、フロイトによって強制的に終了させられた。

折角なので、渡されたジュースをいただく。


「ロイ、風邪を引いた時って、何を食べる?」

「……おかゆ?」

「私に作れるだろうか……」

「おじさんに任せればいいじゃん。つかオマエは、リンゴのすりおろし以外はやめとけ」


フロイトは私の料理の腕前を理解している。

且つ、遠慮なく物を言う。

今回も、何とも有難いアドバイスをもらった。林檎のすりおろし、なるほど。


「――アンナちゃん、お迎えだよ」


暫くすると、フロイトの母が声をかけてくれた。

どうやら病院帰りにそのまま寄ったらしく、玄関には両親揃って待っていた。


「アンナちゃん!」


手の届く距離まで行くと、待ってましたとばかりに、母さまに抱き締められる。

何だかとても元気で上機嫌だ。父さまもどことなく嬉しそうである。

とにかく、大きな病気とかではなさそうなので、一安心だ。


「聞いて!アンナちゃん、お姉さんになるんだよ!!」

「……ん?」


それは一体、何を食べれば治る病気なんだ――。





アンナちゃんの得意料理は何ですか?


「刺身だな。ツマも用意できるぞ」


……渋いな(´-ω-`)

サラダとかの方が、可愛らしくないっすか?


「ドレッシングが作れん」


なるほど(´・ω・`)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ