表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の再出発
42/44

乙女は馬車に揺られる


今更ながら、転生してかつての友と恋仲になる作品はいくつかありますが、元々女性でしかも赤子の内から記憶があるのって珍しいよねー。


「しかも再会してもその後全く会わずに、ヒーロー空気のまま、これほどダラダラしてるのは、ここくらいだぞ」


だ、大丈夫。その内出てくるさ……!





ガタゴトと揺れる馬車に乗りつつ、流れる景色に目を向ける。

現在、私達はクラノートフロッシュ討伐の依頼元である、東の村に移動中である。


依頼に関するやり取りを本部長ゼルドナと終えた後、夕方の営業開始前の我が家に戻り、泊まりがけの依頼を受けた事を家族に報告した。

少々母さまの説得が大変であったが、結果的に三つの条件の下に了承してもらえた。


一、無事に帰ってくる事。

二、弟エルヴィンの誕生日までには戻る事。

三、信頼できる人に同行してもらう事。


最初の二つに関しては言わずもがな。

私自身もちゃんと、エルヴィンの誕生日に間に合うように帰ってくるつもりだったし、怪我をする気も更々無い。


問題は三つ目である。


依頼を受けた時に誘ったゼルドナだが、ものの見事に断られてしまった。

クリーナから伝授してもらった「涙目上目使いおねだり」なる戦法にて、周りを味方に付ける事には成功したのだが、肝心のゼルドナの了承は得られなかった。

私もまだまだ修行が足りないらしい。


仲間に加わりたそうに、こちらを見つめていたフランメは、逆にこちらから丁重にお断りした。

将来的にはAランクに達するであろうフランメだが、現状はまだまだ炎の扱いが雑な所がある。

今回は魔水晶の鉱山という特殊な地形のため、その粗雑さが命取りとなりかねない。

本人にも自覚があるらしく、指摘をすれば素直に引いてくれたのだが、これは後日フォローすべき案件である。

第二の人生が始まってからまだ十年。これから先、鈍器のポンポンに怯えながら過ごすのは御免である。


当然と言うべきか、「ねぇねが いかないなら、シェスもいきません」と、シェスターにも断られてしまった。


現状Dランクの私がソロで挑むと、依頼元にも要らぬ心配をかけてしまいそうであるし、さてどうしたものか――。


同行者の決まらぬ私に手を差し伸べてくれたのは、久々に家族全員で我が家に食事に来ていたフロイト――の母である。

曰く、「フロイトは明日からの予定が特に決まってないらしいから、連れていけば良い」と。

本人は初め渋っていたが、彼以外の家族が私の味方に回った事と、彼ならば母さまも安心だという事で、今回同行してくれる運びとなった。


ちなみに、フロイトにも「涙目上目使いおねだり」を行使してみたのだが、「気持ちが悪いから止めろ」と言われてしまった。

「涙目上目使いおねだり」とは、かなりの上級戦法らしい。精進するとしよう。


◇◆◇


「フロイトさん、アンナさん。この辺りで一旦休憩にしましょう」

「あぁ」


御者を勤めてくれている【ツンフト】職員に返事を返す。

同じく遠征依頼に赴く傭兵達に【ツンフト】が貸し出してくれる馬車から降りて、伸びをする。


休憩地点は小川の流れる長閑な草原地帯で、時刻はお昼時である。

ここまで私達を運んでくれた馬は、一足先に草を食んでいる。

私達も、今の内に昼食を取ってしまうのが良いだろう。


私は今朝、家族に持たされた包みを広げた。


中にはサンドイッチが入っており、朝食の後、両親に加えてエルヴィンが用意してくれた物だ。

その量は、フロイトや御者を勤めてくれている職員と分けても有り余る。

しかしこれは、父さま達が作りすぎたという訳ではない。


「フロイトもどうだ?」

「……」

「心配しなくとも、私は調理に関与していない」

「いただきます」


自分用に卵サンドを一つ取ってから、フロイトに回す。

他に比べて少し形の悪いこれは、恐らくエルヴィンの作品である。

私の関与を否定しなければ手に取ってもらえないのは悲しい事実だが、昔からの付き合いであるフロイトは、私の料理の腕前を把握しているので致し方ない。


フロイトも手に取り、御者もサンドイッチを選んだ所で、再び私の元に弁当箱が戻ってくる――訳ではない。


「じゃ、アタシはハムとレタスのー」

「僕はフルーツサンドね!」


馬車の乗り心地が不評で先程まで不在だったのだが、現在は当然の如く昼食に加わっているのは、戦の女神クリーナと最高神レギリオである。

というよりも、【恩寵】を授かってから後、彼らが食事時に顔を出さなかった事はない。

クリーナに関しては、アンナマリアの頃からの付き合いではあるのだが、あの頃は食事を抜いたり、あまり味が良くない保存食を食べる機会も多々あったので、私としてもこれは新しい習慣である。


だから、神と食事を共にする事に関しては、慣れてくれと言う他ない。

クリーナやレギリオが接客する【ワンコの垂れ耳亭】に来店した事のあるフロイトはともかく、御者の職員は非常に緊張した面持ちである。

別に、神より先に自分の取り分を選んだ事に腹を立てるような性格ではないから、気楽にすれば良いと思うのだが。

そもそも私の知る限り、愛し子の【恩寵】を与える神というのは、積極的に人と関わりたがる友好的な者達ばかりである。


御者はともかく各々が十分に休息を取ってから、再び村へと進む。


道中は何事もなく順調に進み、そして日が沈みきるより少し前に、私達は依頼元の村に到着したのだった――。





「『涙目上目使いおねだり』とは、中々難しい戦法だな……」

「それでダメだった時はねぇー、相手の首鷲掴みにしてからガッツリ睨んでやるのよ!名付けて『ギャップ萌え』戦法っ!!」

「ふむふむ……」


クリーナさん、その順番だと普通は萌えないでっせ……(´-ω-`)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ