乙女の仕事復帰
更新遅くなって、すみません(≡人≡;)
お詫び代わりに、いつ使うか分からないネタバレトークを……
【とある定食屋にて、女神と中隊長の一コマ】
「ねーねー、ララっち。この十年で、何か面白い恋愛しなかったのー?」
「お前人を何だと思ってんだよ!?そんなの無ぇよ!」
「ホントにぃ?『せめてお名前だけでもー』って言われて格好つけて名乗らなかったら、数日後バッタリ再開した時すっかり忘れられてたり――」
「うっ……」
「『妹欲しかったら、この俺を倒してからにしろ!』ってお兄さんに言われたから真剣に戦ってる間に、ふらーっと現れた彼女の幼馴染みに、その子かっさらわれたりしてない?」
「いや、何で知ってんだよ!?」
「え、マジで?ちょっと詳しく!特に、何で『せめてお名前だけでもー』って言われる件になったか!!」
面白恋愛はクライン中隊長にお任せ(*´ω`*)
それでは本文をどうぞ(*・ω・)つ
「お、アンナ。傭兵復帰かー?」
「あぁ」
「本部長なんかに負けるなよ!」
「……ん?」
本日より、私は再び傭兵として活動する事となった。
リープリヒが【ワンコの垂れ耳亭】に来てから三日が過ぎ、案の定と言うべきか、お客から好評である。
小さな村で伸び伸びと育った彼女は接客の経験が無く、お世辞にも手際が良いとは言えないが、慣れないなりに頑張っているのは伝わる。
騎士の中には彼女の事情を知っている者もおり、応援してくれているし、それを抜きにしても【美の女神の愛し子】である彼女の笑顔は、男女問わず多くの人を惹き付ける。
目下のところ、どこぞの恋多き中隊長殿にはライバルが多そうな状況だが、是非とも健闘してもらいたい。
恋模様の行方を、クリーナが非常に楽しみにしている。
そして、頑張っているのはリープリヒ一人ではない。
「あ、そばかすが気になるなら、アロエもお勧めよ。こっちのサラダも一緒にいかがかしら?」
残り僅かとなった、期間限定ビーネン蟻の蜜デザートを求めて来店したお客に、他のメニューも勧めているのは、美の女神シェーンだ。
シミや肌の調子、ダイエット等の女性のお悩みに応じたメニューの提案をしてくれると大人気である。
美の女神が直接、美容に関するお悩み相談に応じてくれる店など、他にあるはずがない。
「ぐぬぬ…さすがは姐さんが拾てきた人材やね。でも、わっちかて負けてませんよー!」
ヴァイスはよく分からない闘争心を燃やしている。
しかしながら、リープリヒの配膳のサポートをしつつも、これまで通り接客からテーブルの片付けまでこなしている姿は、流石【ワンコの垂れ耳亭】の看板犬である。
「犬ちゃいますよ、狼です。更に言えば――」
――看板狼である。
そんな彼女達の頑張りのお陰で、私の傭兵活動の再開が実現したのだが――本部長に負けるなとは、どういう意味だ。
私が休んでいる間に、私とゼルドナの決闘の噂でも出ていたのだろうか。
依頼の貼り出されている掲示板を眺めている最中にも、「頑張れ」やら「負けるな」といった声がかけられる。
それらに適当な相槌を返しながら依頼を見繕っていると、その内の一つに目が止まる。
「――おい、ルドー先輩」
「な、何だ!?俺はパワハラなんざ知らんぞ!!」
「……は?」
依頼について聞こうと思ったら、よく分からない返答が返ってきた。
詳しく聞くと、私が休んでいる間に流れていたのは決闘の噂ではなく、私が本部長殿から厳しく当たられたせいで休業したといった内容の噂だったらしい。
何だ、その噂は。
「私がそんな柔な精神な訳無かろう。」
「だから!俺のパワハラの方を否定してくれ!!」
恐らくだが、見た目が幼い私にそんな大声で話しかけるから、そんな奇妙な噂が流れたのではないだろうか。
まぁ、そんな事はどうでも良い。
「それよりもだな――」
「それより!?」
「うるさいぞ。――この依頼、報酬の数字が間違ってないか?」
私が気になったのは、一つの討伐依頼だ。
場所は王都から一日程馬車で東に移動した村にある魔水晶の鉱山。
その中に住み着いた、クラノートフロッシュという蛙の魔獣が討伐対象である。
イエローダイヤのような外殻に覆われている姿は、幸福――主に金運の象徴として置物のデザインとしても人気の魔獣だが、討伐となると中々に厄介な輩である。
先に述べた外殻は、斬撃に耐性のある構造をしている。
その分、打撃には滅法弱いのだが、それこそダイヤの如く、その外殻は宝飾品の素材として人気のため、なるべく良い状態のまま仕留めたいと思うのが、傭兵心である。
そして攻撃方面で特筆すべきは、奴らは水の魔法を行使してくる点だろう。
十八番の攻撃である口から放たれる水の球は、鉄の鎧をも変形させ使い物にならなくさせる。
何より、今回は魔水晶鉱山での討伐依頼だ。
鉱山故に戦闘できるスペースも十分ではない上、魔水晶には魔法の威力を増幅させる効果がある。
【ツンフト】のタグはこの効果のお陰で、僅かな魔力でパーティーを組むことが出来るのだが、そんな魔水晶がそこかしこに埋まっている鉱山で魔法を使用すれば、物によっては大惨事である。
恐らく、クラノートフロッシュ十八番の水鉄砲は鎧を貫通するであろうし、先程からこちらを窺っている様子の某Bランクの炎天家などは、討伐証明の部位云々以前に、敵も味方も灰と化してしまわないか心配である。
そんな厄介な場所で難儀な魔獣の討伐依頼だが、提示されている金銭的な報酬は、Dランク向けの一般的な魔獣討伐程度の報酬でしかない。
クラノートフロッシュ討伐はCランク二、三人のパーティー、特殊な地理の今回は、Bランク以上が単独で依頼に当たるのが最適だろう。
「あー、それな。何でも、採掘中に魔獣と出くわして、それなりの数の死傷者が出たらしい。そっちの手当てなんかを踏まえると、その額が村で出せるギリギリだとさ」
まぁ、街ではなく村という時点で、資金面で余裕が無いことは察せられる。
騎士団も各街には在駐しているが、村や集落等には居ない場合が殆どだ。
「この依頼、報酬内容変更しても良いか?」
「何だ?魔水晶での現物支給か?」
「まぁ、そんなところだ」
「分かってると思うが、良識の範囲内でな。破れば当然、沈めさせてもらうぞ」
「大丈夫だ。最近、水と自分の間に空気の層を纏う魔法に成功した」
「そこは欲張らない保証をしろよっ!」
今日はゼルドナの大声をよく聞く一日である。休業中の溜まった分を一気に聞かされているのだろうか。
ともあれ、依頼は是非とも受けてもらいたいらしい。
このままでは最終的に、本部長とAランク傭兵を兼任するゼルドナの元に回されそうな案件の一つだという。
さて、パーティーだが――
「よし、一緒に行こうか。ルドー先輩。」
「いや何で俺が!?」
「何で本部長となのよっ!?」
思わぬ方向からも異議が届いた。
何やらずっと声をかけたそうな雰囲気を醸していたフランメである。
別におかしな提案をしたつもりはないのだが。
いずれ回ってくる案件ならば、いつ行こうが同じだろう。
それに、昔から言うではないか。「目には目を」と。
水魔法が十八番の魔獣には、同じく水魔法が十八番の【水神の申し子】が適任だろう。
間違っても【炎天家】ではない。
鉱山内の魔水晶で強化された水と炎で蒸し風呂ならまだしも、水蒸気爆発を引き起こされた日には、私も依頼した村も堪ったものではないのだから――。
【噂が出来上がるまで】
「本部長ー。そういや最近、アンナ見ないんっすけど」
「あー、詳しくは聞いてないが、暫く活動休止らしい」
「本部長が苛めるからじゃないっすかー?」
「んな訳あるか」
「最近、アンナさん依頼受けに来ませんね」
「暫く休むそうだぞ」
「本部長が大きい依頼受けろなんてプレッシャーかけたせいじゃないですか?駄目ですよ。将来有望株とはいえ、まだ十歳の女の子なんですから!」
「いや多分、色々違うぞ!?」
「本部長がアンナを潰したというのは、本当なのっ!?」
「誰だ、フランメにそんな事吹き込んだ奴はぁぁぁぁぁ!!??」
その後見つかった吹き込んだ奴は、沈められたとかいないとか――。




